映画におけるタイトルドロップ現象
(titledrops.net)- 映画タイトルをセリフで口にする タイトルドロップ を、1940〜2023年の映画73,921本の字幕とIMDbメタデータで分析し、いつどの程度の頻度で現れるのかを調べた
- 全映画の 36.5% が上映中に少なくとも一度はタイトルを口にしており、タイトルドロップのある26,965本では合計277,668件が見つかって、1作品あたり平均10.3回の水準だった
- 登場人物名をタイトルにした映画では平均 24.7回 タイトルが発話され、主人公の名前が作中で繰り返し呼ばれる構造が頻度を大きく押し上げている
- タイトルを正確に一度だけ口にする映画は全体の 11.3% で、こうした場面はタイトルの意味を重要な瞬間に示すために使われる場合がある
- IMDb評価とタイトルドロップ確率の間に強い関連はなく、ジャンル・タイトルの長さ・登場人物名を含むかどうか が頻度差をよりよく説明する
タイトルドロップの定義と分析範囲
- タイトルドロップ とは、映画の登場人物が自分の出演している映画のタイトルをセリフで口にする現象である
- 分析対象は1940〜2023年に公開された映画 73,921本
- OpenSubtitles.comの英語映画字幕89,242件とIMDbの映画メタデータ121,797件を結合
- 壊れた字幕ファイルを除外した後、最終的に73,921本が残った
- これはIMDbでユーザー投票が100件以上ある映画のおよそ 61% に相当する
- これまでもタイトルドロップの分析やリスト記事はあったが、この分析ははるかに大きなデータセットを用いている
セリフからタイトルを見つける方法
- 字幕内で映画タイトルの文字列をそのまま探す方法は、Back to the Futureのような固有性の高いタイトルには有効だが、
EやIのような短いタイトルでは誤検出が大幅に増える - 続編番号やコロンを含むタイトルも、実際のセリフとは食い違いやすい
Rocky III、Hot Tub Time Machine 2のようなタイトルでは、登場人物は通常、続編番号まで口にしないStar Wars Episode Four: A New Hopeのようにコロンと副題が付いたタイトルは、全体がセリフに出ることは難しい
- 分析ではいくつかの マッチング規則 を適用
- タイトル先頭の
The、An、Aは無視 - ダッシュのような特殊記号は無視
- アラビア数字とローマ数字の続編番号を削除
Episode、Partのような表現も削除- コロンを含むタイトルは前半と後半に分け、どちらかが出現すればタイトルドロップとして数える
- タイトル先頭の
- 例えば The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring は、
Lord of the RingsまたはFellowship of the Ringがセリフに出ればタイトルドロップと見なされる
全体頻度と最多事例
- 全映画の 36.5% が上映中に少なくとも一度はタイトルドロップを行う
- タイトルドロップのある映画は26,965本で、合計 277,668件 のタイトルドロップが見つかった
- タイトルドロップのある映画に限ると、1作品あたり平均 10.3回 タイトルを口にしている
- 劇映画で最多だったのはGreta Gerwigの Barbie
- 1時間54分の間に 267回
Barbieが登場 - 1分あたり2.34回、つまり 2.34 BPM と計算される
- 1時間54分の間に 267回
- ドキュメンタリーまで含めると Mickey: The Story of a Mouse が最多
- 90分の間に 309回 タイトルが登場
- 1分あたり3.43回と計算される
- 劇映画の上位10本は複数の国に分布している
- ハリウッド映画は2本
- インド映画は6本
- インドネシア映画とトルコ映画がそれぞれ1本
登場人物名をタイトルにした映画
- 登場人物名をタイトルにした映画では、タイトルドロップがはるかに多い
- 平均 24.7回 で、タイトルドロップのある全映画平均10.3回の2倍を超える
- 主人公の名前は映画の中で繰り返し呼ばれやすい
- この種の映画の タイトルドロップ発生率 は88.5%
- それ以外の映画の発生率は34.2%
- この分類はIMDbの Principals Dataset にある主要俳優とキャラクター名を映画タイトルと照合して判定した
- データにはいくつかの限界が残る
- 映画タイトルの人物が主要俳優リストにいなければ見落とす可能性がある
- 特殊記号や表記の違いが検出を難しくする
- Tosun Pasa、WALL·E は表記上の問題のため手動で修正された
- 名前や姓が省略された場合は、定義上タイトルドロップとして数えない
- 登場人物名をタイトルにしていても、タイトルドロップが出てこない例もある
一度だけ登場するタイトルドロップ
- 全映画の 11.3% は、タイトルドロップが正確に一度だけである
- タイトルを何度も口にする映画は、一度しか口にしない映画より約2倍多い
- 単発のタイトルドロップは、制作者が意識的に入れた可能性が高いと考えられる
- 一度だけ出てくる場合は、重要な場面でタイトルの意味を明らかにする使い方が多い
- 最初のLord of the Ringsで
fellowshipが何を意味するかが明らかになる場面 - 観客が
dark knightを待ちながら、最終的にBatmanそのものを受け入れる例が挙げられる
- 最初のLord of the Ringsで
時代ごとの変化
- 過去数十年で、タイトルドロップのある映画の平均比率は 上昇傾向 を示している
- 1960年代と1970年代は、映画の中でタイトルを口にする傾向が最も低かった
- 近年になるほどタイトルドロップは一般的になっている
- タイトルを正確に一度だけ口にする映画の比率は概ね安定している
- 増加傾向は主に 何度もタイトルを口にする映画 の増加として現れている
- 増加理由は確定していない
- より多くの映画が主人公名をタイトルに使うようになったからかもしれない
- 映画の製品化が進み、ブランド認知が重要になったためかもしれない
評価、ジャンル、タイトル長との関係
- IMDb評価で見た映画の質とタイトルドロップ確率の間には 強い関連性 がない
- ジャンルはタイトルドロップ確率に明確な影響を与える
- Biography、Sport、History のようなノンフィクション寄りのジャンルは、タイトルと本編の両方で主題を繰り返し口にしやすい
- Crime、Romance、War のようなフィクション中心ジャンルはタイトルドロップ傾向が低い
- 映画タイトルは、製品説明、マーケティングツール、芸術作品の題名という役割を同時に担っている
- タイトルの種類を完全に分類するのは難しいが、TVTropesのTitle Tropes一覧 は180を超えるタイトル・トロープを挙げている
- Deceptively Silly Title: 無邪気に見えるが恐ろしい内容を隠しているタイトル
- MacGuffin Title: 誰もが追い求める重要な物をタイトルにする場合
- Never Trust A Title: タイトルが誤解を招く、または映画とほとんど関係がない場合
- タイトルの長さとタイトルドロップ回数の間には弱い 負の相関 がある
- タイトルが長いほど、セリフに登場する可能性は低くなる傾向がある
- ただし非常に長いタイトルでも、一部または全体がタイトルドロップされる例はある
データ公開
- 全データはGitHubリポジトリで公開されている
- データ: https://github.com/dominikus/titledrops.net
1件のコメント
Hacker Newsの意見
1995年の日本アニメーション Neon Genesis Evangelion は「Evangelion」という人型兵器を中心にしているが、タイトルの "Neon Genesis" はもともとの日本語タイトルにもなく、直訳でもない。
日本語タイトルは 新世紀エヴァンゲリオン / Shin-seiki evangerion で、つまり「新しい時代/新しい世紀の Evangelion」に近い。
この作品にはほかにも非直訳のタイトルがあり、原作者たちもこうしたやり方を承認していたようだが、この解釈の隔たりが意図されたものだったのかは、いつも少し謎だった。
ところが20年以上たって、リブート映画シリーズ Rebuild of Evangelion の最終作のラストシーンで、主人公が適切な文脈で "neon genesis" を直接口にする。
映画館であんなに大笑いしたことはなかった。
Genesis は新時代の始まりという意味で合っていて、語源的にもギリシャ語で「起源、創造、発生」を意味し、一種の「時代」ともつながる。
しかも、より緩やかな翻訳のおかげで、聖書の最初の書である Genesis と Angels が結び付いて、言葉遊びと主題的な重みが加わっている。
翻訳者ではないが詩をたくさん書く立場からすると、直訳と英語タイトルの選択の違いを見ると、こんなふうに考える気がする。
最初の翻訳者はこの「隔たり」を100%意図していたはずで、実際には隔たりというより 層を加えた翻訳 に近いと思う。
意図性が重要だ。"It" はタイトル言及として数えるべきではないし、Barbie のようにタイトルが登場人物名である映画も同様だと思う。
もちろん、そういう制約を入れると数値の計算がずっと難しくなるのは理解できる。
でもこういうケースでは結果がひどく汚染されて見えて、読むのをやめるしかなかった。
開発者が難しい問題にぶつかったとき、ユーザーにとって有用なものを作るより、チケットの文言を意味論的にねじ曲げて回避する姿に似ているように感じる。
あるいは "it" が代名詞なのだから、タイトルが指しているまさにその対象を指すときだけ数えるべきだ、とも考えられる。
"Barbie" という単語が少しうんざりするほど繰り返されるのがテーマに合っている。
それに、読むのをやめるのが早すぎた気もするが、タイトルがキャラクター名である場合は別に扱われている。
"It" は特殊なケースかもしれない。それ自体はとてもありふれた単語だが、映画タイトルがそう付けられているという事実は、含めるに足るほど目立っている。
タイトルがキャラクター名の映画を含めると、データセットはあまり面白くなくなる。
「Barbie がタイトルをものすごくたくさん言う!」みたいな話なら、まあそうだろうと思う。
それでも Barbie は面白い事例ではある。登場人物の半分くらいの名前でもあるのだから :P
It は分析で単語 it が拾われてしまうので、含めるのが気まずい。
Pennywise を直接指している場合を除く、すべてのヒットを取り除くべきだ。
また、いくつかのケースでは、同名のキャラクターが音を出す場面がタイトル言及として拾われていた。たとえば ALIENS: hisses のようなケースで、こういうのも除去すべきだ。
映画タイトルが主演キャラクター名である場合も、リストから外すか、少なくともフィルタリングできるようにすべきだ。
こうした点のせいで、サイトは少し面白みに欠ける。
良い映画のタイトル言及は面白い小さなイースターエッグであり、特に The Phantom Menace のようにタイトルがもう少し概念的なときほど良い。
今のサイト構成では、そういう本当に良いタイトル言及を見つけるのが少し難しい。
短いタイトルのほうがより頻繁に言及されるという結果も、実際にはキャラクター名が短いタイトルになりやすいからかもしれない。
いわゆるタイトル言及というものが、記事で言うような現象なのか、それとも映画タイトルがそもそも作品内容やセリフから取られたものなのか、どうやって確信できるのか?
たとえて言えば、誰かが曲を書いてタイトルを付けるとき、歌詞に出てくる単語やフレーズを選ぶのはよくあること
Leonard Cohenが同名の曲で「hallelujah」と歌ったからといって、それは「タイトル言及」なのか? そうは思わない
間奏のあとMorrisseyが「You say it's gonna happen now? What exactly do you mean...」と歌う
次の行が「How soon is now」になるかのようにほとんど聞こえるが、少し間を置いて「See I've already waited too long...」と続く
タイトルは曲の雰囲気を捉えているが、実際には一度も口にされない。意図的に抜かれている感じが残る
映画では No Country for Old Men が似たことをしている
タイトルが脚本の中にはあるが、実際には誰かのセリフではない場合もある
Aliens (1986)
(Aliens hissing)
https://www.titledrops.net/explorer?movies=tt0090605&title=
少なくとも "The Scarlet Bond That Time I Got Reincarnated as a Slime" [sic] がセリフだった可能性はかなり低いと思う
文脈的には単に画面に表示されたタイトルで、日本語なので字幕として処理されたものに近く見える
数年前、Kermode and Mayo のラジオ番組に送られたお便りのせいで完全にゾッとしたことがある
あるリスナーの家族は映画館に行き、席に座って映画を見ていて、映画タイトルが最初に発話された瞬間に拍手して立ち上がり、そのまま出て行くのだという
冗談だったのだろうと思う
オンラインで実際にそうする人や、その番組のこのお便りについて議論した痕跡も見つけられなかった
それでも本当にゾッとする話ではある
運が良かったのか悪かったのかわからないが、確認した唯一の映画が Inception だった
19分24秒で発話されるのに、エクスプローラーではタイトル言及がまったくないと出ていた
一瞬、自分の記憶を疑って実際に調べなければならなかった
かなり特徴的な単語なので最初に確認してみた
実際には映画の中で8回言われている。.srtファイルをctrl+fで検索した
ページには方法論としてopensubtitles.comを使ったと書かれているが、そのサイトでどの特定バージョンを選んだのかは説明していない
opensubtitles.comは各言語ごとに、トレント版などに対応した候補ファイルを大量に並べている
ダウンロードスクリプトがいくつかの映画で誤って英語ではない .srt ファイルを選んだ可能性もある
https://youtu.be/OiqPmsBYieA?feature=shared Star Warsのタイトルセリフを思い出した