24 ポイント 投稿者 GN⁺ 2025-04-21 | 7件のコメント | WhatsAppで共有
  • AIツールが開発者の中核業務の一部を代替しつつあり、人間は「問題解決者」から「つなぎ役」へと押しやられている
  • 「バイブコーディング」のように、AIが実装を担い、人間はアイデアだけを提示する未来が語られているが、現実はまだ複雑だ
  • 開発者はAIの目や手となって、不具合を見つけたり設定をいじったりする「配管工」的役割に落ち込む可能性がある
  • 時間がたてば、それすらAIに奪われ、人間は物理世界とAIをつなぐ「糊の役割」へと縮小する可能性がある
  • 創造性と自律性を失った人間の労働が、「glue(糊)」のような存在に成り下がる未来への不安と懐疑をつづった文章

たぶん、そういう形にはならない

AGIを恐れずに愛する方法を学ぼうとしているけれど、正直かなり暗い気分だ。

私はソフトウェアを作る仕事をしていて、今この時点で、私の知るほとんどすべての人たちと同じようにLLMを活用して作業速度を上げている。
昨日o3が公開され、さっそく複雑なバグを解決するのに大いに役立った。
以前なら何度も試行錯誤していたはずの問題だったのに、ずっと少ない迷いで解決できた。
見た目には良いことだ。では何が問題なのか。

問題は、私はそういう複雑なバグを解くのが好きだということだ。
それはパズルのようで、掘り下げていくと普段は見えにくいコンピュータの部分を学べる。
リファクタリングも同じだ。うまくできているときは、自分のシステムの形をより深く理解し、それを構造として磨き上げていく過程だからだ。
そうした問題を解くことは、脳がむずむずするような楽しい刺激だ。
仕事の中でいちばんやりがいのある部分かどうかは分からないが、いちばん好きな部分であることは確かだ。

まだその段階に達したわけではないが、流れはすでに決まっている。
かなり控えめに見積もっても、10年以内には、ほとんどの「具体的な問題について深く考える」仕事は、コンピュータのほうが私よりうまくこなすようになるだろう。

この仕事からある役割を切り取ると、残るのは互いにほとんど接していない二つの塊だ。
船を操る人と、配管をつなぐ人だ(比喩が混ざっているのはご容赦を)。
AIに期待を寄せる人たちの話を聞くと、例外なく前者になることに胸を躍らせている。
「バイブコーディング」[1]という概念が約束するのはこうだ。仕事の最上位レイヤー、つまり感覚、アイデア、デザイン、哲学のようなものだけを気にしていればよく、あとのことはマシンが勝手にやってくれるというわけだ。
そうなれば人間は、人間にしかできないことに集中できるという理屈である。

私にもいくつかアイデアはあるし、正直に言えば、そういう世界も悪くないかもしれないと思うことはある。[2]
だが私の経験では、それは複雑な現実の半分ほどしか語っていない。
たとえばこうだ。私が何らかのエージェントをツールと組み合わせて使っていても、システムに見えない問題は結局人間が見ることになる。
Webアプリケーションを作っているとしよう。Claude Codeが私の指示どおりにスタイルを書いてくれた。
だが、それが実際のブラウザでどう見えるかを確認するのは結局私だ。
そして案の定、何かがおかしい。CSSとはそういうものだからだ。
しかもそのスタイルを自分で書いたわけではないので見慣れておらず、いちばん簡単な解決策は、またClaudeに持ち帰って回してみることだけになる。
再度依頼し、再度修正する。バグレポートを書くのは、バグを直すよりずっと面白くない。
結局私は、Claudeが私のコンピュータを見回るために必要な**「目」**の役割をするだけになる。

もちろん、こう反論する人もいるだろう。「そんなサイバー配管工の役割は、じきに消える」と。
その通りだ。最前線の研究所は今もコンピュータ全体を操作できるエージェントを開発中なのだから。
そうなれば、ブラウザタブを開いて画面を確認するくらい、彼らは私と同じくらいうまくできるようになるだろう。
ただ、今のところAIの空間推論能力はひどいものなので、正直に言えば、今はまだ少しだけ安全圏の堀(moat)[3]があるように感じる。
それでも、配管作業はしばらく残るだろう。
たとえば、ログをあるプラットフォームから別の側へ流すパイプラインを構成したり、
ストレージバケットのアクセス方針を設定して、エージェントが正しくファイルを書き込めるようにしたりする仕事だ。
こうした作業は雇用の安定には役立つが、正直言ってあまり好きではない。
むしろプロジェクトの核となるアイデアについて考えていたいのであって、n番目のクラウドサービスの2FAコードを探し回りたいわけではない。
だが今後は、この時間でさえも「糊のような仕事」と比べられ、正当化しにくくなっていくだろう。

良い(……そうだろうか?)知らせは、こうした役割すら、ほどなくAIに渡るだろうということだ。
その時が来れば、私はAIと現実世界[4]のあいだをつなぐ連結部のような存在になる気がする。
しばらくのあいだは、ハードウェアプロジェクトをやるなら、ジャンパーワイヤをブレッドボードにつないだり、アンテナをいじったりするのはまだ私の仕事だろう。
私はこうした手作業が好きだ。 だが、コンピュータがゲーム全体の設計図を把握している状況なら……それは少し面白みが薄れる。
運が良ければ、**私は船の「アイデア船長」**の役を担えるかもしれない。
だが船がどこへ向かうべきかをAIに尋ねなければならない船長なら、その役割も長くは続かないだろう。
そして正直に言えば、誰もがそれぞれ自分の船の船長になって生計を立てられるとは思わない。

その先に何が起こるのか、私にはまったく分からない。
存在論的リスクはひとまず脇に置くとしても、多くの仕事が消えるのは確かに見える。
楽観的なシナリオでは、私たちは今は想像もできない新しい仕事を生み出し、
それを通じて人々はこれまで以上に自己実現できるようになる、ということになる。
だが超知能がコモディティとして普及した世界で、
その新しい仕事が結局**「糊のようにただつなぐだけの仕事」**に見えてしまうのではないかと、私はそれが心配だ。


  1. 余談だが、「バイブコーディング(vibe coding)」という表現にはどこか引っかかるものがある。
    だが、すでにWikipediaの記事まであるのを見ると、もう業界用語として定着しているらしい。

  2. このやり方の利点は、わざわざ説明するまでもなく明らかだ。
    以前なら想像もできなかったものを作っている人が、今は本当にたくさんいる。

  3. 正直に言えば、私は「矢印をつなぐこと」が自分の専門能力だと思ったことはない。

  4. もう少し一般的に言えば、画面の中の知能に比べてロボティクスの進歩は相対的に遅いため、
    しばらくのあいだは、人間の「身体を持つ存在であること」が機械に対する主要な優位として残るだろう。
    文字どおりの配管工は(皮肉なことに、彼らの仕事は前述の「デジタル配管」よりも、むしろバグ修正に近いように思えるが)、
    まだしばらくは大丈夫だろうし、ほかの技能職も同様だ。
    そして、ある仕事が「接着剤の役割」になったとしても、私が描いたように必ずしも無意味に感じられるとは限らない。
    たとえば、弁護士は判決文の主たる著者ではなく、それを陪審員に伝える役割へと変わるかもしれないし、
    医師は診断能力よりも、患者への接し方や共感能力のほうが重要になるかもしれない。
    (創作活動についてはここで長々とは語らないが、おそらく最大の恩恵と最大の苦痛を同時に受ける分野だと思う。)

7件のコメント

 
treestae 2025-04-21

おそらく今のAIは、完成度が10%程度だと思います。
通常、特異点を超えると一気に70%以上を満たすケースを多く見てきましたが、そうなれば多くの職業がなくなる可能性はあるものの、処理コストを見たときに人間のほうが安ければ、残る職業も多いように思います。

 
yinn27 2025-04-21

本当に難しいですね..

 
kandk 2025-04-21

パンチカードを使おうと主張する方がいるかも..

 
reagea0 2025-04-21

そういう話ではない気がしますね(笑)

 
plumpmath 2025-04-21

ははははは

 
GN⁺ 2025-04-21
Hacker Newsのコメント
  • この記事は本当に面白く読んだ

    • 存在論的リスクは脇に置くとしても、多くの職業が消えない未来は見えない
    • 個人的には、LLMの停滞効果に賭けている
    • 2種類の停滞が来ると思う。LLM自体の停滞と、人間の停滞だ
    • LLMはすでに、新しいモデルのほうが悪くなる現象を見せている(例: Sonnet 3.5のほうが3.7よりコーディングに優れている)
    • 人間はAIに依存するにつれてスキルが衰え、新しいプログラミングの形を生み出したり、それを記録したりする動機も薄れていく
    • 短期的にはそうではないだろうが、長期的には恐ろしいことになる
    • AIによって意図せず壊れたシステムを直したり置き換えたりすることが、未来の仕事になるだろう
    • 「AIトラブルシューター」になるか、「手作りソフトウェア」を作る起業家になることになる
    • どちらもかなり収益性が高いと予想している
  • どうしてこういう記事はいつも「LLMを使って仕事をより早く終えた」と言いながら、その一方でLLMがより多くの時間と費用をかけてより悪い結果を出すと説明するのか分からない

    • LLMがなくても、基準を下げる力なら自前で十分にあった
  • 「接着剤」というコメントは、主にソフトウェアの仕事をしている人の視点を反映している

    • こういうことは、機械化された生産ラインが最初に作られたときからそうだった
    • 人間の仕事は直接の労働ではなく、機械を監視し、再起動し、修理することだ
    • パワールームはおそらくこの種の装置の最初の例だろう
    • 生産ラインには多くのステーションがあり、ドリルビットが折れたり、レンズにほこりが入ったり、消耗品が尽きたりすると停止する
    • 例外を自動化するのは難しく、工場設計は例外を最小化し、詰まったセルを迂回することに重点を置く
    • ソフトウェア開発がどう変化しているかを見るうえで、工場の動き方を理解するのは役に立つ
    • 「vibe coding」という表現は2か月前に生まれた
    • 2年後にはどれほど広まっているのか気になる
  • AIがソフトウェアエンジニアの仕事を奪う可能性は低い

    • ソフトウェアは、自動車や食べ物や住宅と違って、人々が消費できる量に自然な上限がない
    • ソフトウェアエンジニアは、究極的には「作りたいという意志」を持つ人たちだ
    • コードやツールは単なる手段にすぎない
  • 「複雑なバグを直すのが好きだ」

    • 私は違う
    • より速く解決策を見つけられるツールはいつでも歓迎だ
    • AIは退屈な部分をうまく処理してくれる
  • 自分は違う体験をしている

    • Claudeにバグを直せと何度も頼むのはうんざりする
    • だから「一度にひとかけらずつ理解しながら」自分でバグを直し続けている
    • 実際、LLMを使って小さなライブラリを作り、実行アプリ内でのLLMの必要性を避けている
    • StackOverflowの強化版のように感じる
    • 自分は接着剤なのではなく、必要な情報を素早く得るための優れたツールを持っているだけだ
  • それでも、このすべてについてかなり悲観的だ

    • 今日、LLMコーディングアシスタントが助けてくれる明確な勝利を期待していた
    • とても長い構造体を別のとても長い構造体に変換するgo関数を書いていた
    • 変換は、ほぼ完全に最初の構造体のフィールドをラッパーに包む形だった
    • LLMにはそれができなかった
    • フィールドを先に埋めて、それらを埋めるよう頼んだのだが、新しいフィールドを想像しようとしたうえ、一つ二つやったあとで、自分が追加したフィールドを消して「残りをやれ」というコメントを加えた
    • いろいろ違うプロンプトを試した
    • 一部のvibe codersが有用なものを作れる道筋は見えるが、大半の試みは挫折の連続だった
  • Stanislaw Lemの話がある

    • 「別の場所でティヒーは、完全な調和を望んで自らを機械に委ね、その機械が彼らをきらめくディスクに変え、惑星全体に心地よいパターンとして配置する異星種族に出会う」
    • (接着剤ではないが、かなり近い)
  • 複雑なバグを楽しみで直すことを妨げるものは何もない

    • 趣味のコンピューティングは、今やかつてないほど身近になっている
    • 他人のために何かを作るなら、AIがタイピングとデバッグの大半を取り除いてくれる
    • そのぶん、何を作っているのか、どうすれば最も有用にできるのかをより深く考えられる
    • たいていはより早く終わるので、ユーザーにより早く届けられ、反復回数も増える
    • みんなにとって利益だ
  • よく書かれた文章だ

    • 基本的なアイデアの前提には同意する
    • 変化はもっとずっと劇的になると思う
    • 多くの人は停滞していて、周囲のほかのものは自動化されるだろうが、自分はそうではないと思っている
    • 「自分は特別だ」と思っているが、多くの人は自分がそれほど特別ではないと知ることになる
 
mhj5730 2025-04-22

生産ラインには多くの工程があり、ドリルビットが折れたり、レンズにほこりが付いたり、消耗品が切れたりすると停止する
例外の自動化は難しく、工場設計は例外を最小化し、詰まったセルを迂回することに重点を置いている
ソフトウェア開発がどのように変化しているかを見るとき、工場の動き方を理解することは役に立つ
"vibe coding" という表現は2か月前に生まれた
2年後にはどれほど広く普及しているのか気になる

<- この部分の比喩、本当に見事ですね。感嘆しました。