- 中学生の頃の筆者の落書きから始まった フラクタル図形("wallflower") は、一般的な方法とは異なるやり方で生成された独特な構造である
- このフラクタルの生成過程において、L-システム と 行列ベースの位置エンコーディング を通じて、その特徴を数学的に説明できることを探究している
- 行列式が ±5 の特定の行列を用いると、図形の スケール変化と回転、そして空間内での反復配置を効果的に説明できる
- 2次元だけでなく 3次元・4次元への一般化 の可能性も試みており、高次元では対称性とパッキング効率を考慮した行列設計が重要となる
- フラクタル、線形代数、数体系などが相互につながっていることを見いだし、こうした探究の過程そのものが 創造的な問題解決の価値 を示している
はじめに: 壁に掛かったフラクタルの秘密
- 筆者は中学生の頃、方眼紙の上で四角を複製し、回転させながら埋めていく落書き(後に "wallflower" と命名)を見つけ、長年にわたって関心を寄せてきた
- 構造が独特で、数学的に深い意味があると考えていたが、当時は分析できなかった
- その後、数学の知識が増えた現在になって、過去の自分が残した問題の探究を本格的に始めた
フラクタルの描き方
- 正方形1つから始める
- 現在の図形を左、右、上、下にそれぞれ1回ずつ複製して配置する
- その後、既存の状態をおよそ27度だけ時計回りに少し回転させ、4方向にさらに複製して配置する
- 2、3の手順を繰り返して紙をいっぱいに埋める
- このようにすると 花のように広がるフラクタル ができあがる
- この過程そのものも Gosper Curve と同様に、無限に繰り返せば平面全体を覆うことができる
L-システムによるフラクタル境界線の生成
- L-システム(文字列置換規則)の方式も適用可能で、R(右)または L(左)への90度回転だけを使う
- 初期規則は RRRR から始まり、置換は R→RLR、L→RLL として進む
- L-システムで実装した境界と、中学生時代の方式による境界は、第4項から主な差が生じる
- Drag and drop 方式では各コピーの配置が異なる
- L-システム方式では対角線方向への複製が特徴となる
画像なしの wallflower の特徴
- Drag and drop 方式で生成される wallflower は、インターネット上のどこでも一般的には見られない
- 置換規則 L→RLR、R→LLR によって、向きが反復的に反転する性質がある
- コピーの配置角度(「27度」)と行列構造、L-システムの置換規則には関連がある
数を振る方法(フラクタルの位置エンコーディング)
- Cantor のペアリング関数 のように、フラクタル内部の各マスに数字を振ることで、空間を効率よく把握できる
- 各反復は 5 の倍数や 5 の冪と密接に関係しており、効率的なエンコーディングのために 5進法 を適用する
- 左右の複製パターンを見ると、「200を足す」のように 幾何学的な移動と加算のつながり を見いだせる
行列とフラクタルの空間的意味
- 位置ベクトルを 行列積で表現 し、各桁(位取り)ごとに matrix power が適用される
- 例として行列 M=[−2 1; 1 2] では、行列式 det(M)=-5 の場合に向きが反復的に反転する
- M′=[2 1; -1 2]、det(M′)=5 の行列で生成すると、一般的な Gosper 系フラクタルに似た構造が生まれる
- 行列式の絶対値は、フラクタルのスケール成長率と空間充填効率に正確に一致する
- 行列式が大きいと空間に隙間ができ、小さいと衝突が起きる
- 各行列の列ベクトルは、全体の座標格子に正確に合わせるため必ず整数でなければならない
- ベクトル |1,2| の角度計算 arctan(2/1) ≈ 63.43度 → 軸から「27度」ずれている理由はまさにここにある
フラクタルを通じた加算構造の探究
- 単純なベクトル合成だけで全ての位置を予測することはできない(例: →2+→2≠→4)
- 1〜4 を各方向(上、右、下、左)として解釈し、2次元的な「桁上がり」が現れる
- generalized balanced ternary などとのつながりから、2D/高次元の数体系と不動点のない構造を導ける
高次元(3D、4D)への一般化の可能性
3次元への拡張の試み
- 3x3 行列では、各列ベクトルが整数、Hamming 距離 3、行列式 ±7 を満たす必要がある
- 実際に可視化すると特定領域が空白になり、完全な配列は不可能である
- 追加のコピー(新しい位置への「プラス形」)で部分的な補完は可能だが、完全な対称性は難しい
4次元への拡張
- 4x4 行列では、各列ベクトルが整数で、3桁が ±1・1桁が 0 という条件を満たす
- 4次元では "orthotopeflower" という新しいフラクタル構造が可能になる
- 7x7 グリッドの 7x7 グリッドとして、全体構造を平面上に効果的に可視化できる
高次元一般化の限界
- 行列、スケール成長条件、整数間ベクトルなどの制約を総合すると、この構造が妥当なのは 1、2、4 次元に限られる
- それ以上の次元では、全ての条件を満たす整数行列を構成できない
その他の数体系とのつながり
- Quater-imaginary base(虚数 2i を底とする数体系)のように、行列ベースの数体系から複素数・四元数へと概念を拡張できる
- 4D 行列による quaternion エンコーディング(基底: i+j+k)のアイデアも探究したが、完全に厳密な検証は未来の自分に委ねている
結び
- ひとりの人間による長年にわたるフラクタル、数体系、線形代数の探究が、美しい数学的発見へとつながっている
- 創造的なささいな落書きと好奇心が、実際に深い原理を明らかにするきっかけとなる
- 探究過程の偶然性、試行錯誤、粘り強さを通じて、新しい数学・コンピュータのアイデアを提示した事例である
- 完璧ではない可視化や規則の誤りもまた、探究の一部として受け入れる姿勢を強調している
1件のコメント
Hacker Newsの意見
素晴らしい作品で、楽しく読めた
とても洞察に富み、慎重に書かれた文章だと感じた。特に 3D 可視化が気に入った。数年前に、どんな画像からでもフラクタルに似た効果を作れるよう、recursive decimation を使って作ったプロジェクトを思い出した。https://jsfiddle.net/nicobrenner/a1t869qf/ のリンクで実際に試せる。Blursort 2x2 を数回押してから Animate をクリックするとアニメーションを生成できる。画像のコピー&ペーストにも対応しており、別途バックエンドなしでブラウザだけで動く。モバイルではおすすめしないとのこと
軽く読めるものを期待していたが、かなり長い記事だったので、仕事の合間にざっと目を通した。あとで戻ってきていろいろ試してみるつもり。本当によくできた文章だと思う
とても上手に書かれた記事だという意見。「middle out」番号付けシステムをどう考案したのか共有してほしいという прось求。数学の問題を一人で解いていると、こういうひらめきに満ちたアイデアはなかなか浮かばないという悩み
興味深く読み進めるうちに、「wallflower」フラクタルを描く L-system を思いついた。https://onlinetools.com/math/l-system-generator?draw=AB&skip... のリンクから確認できる。改めて考えると、たぶん別のフラクタルを生成しているのかもしれないという告白
素敵な記事だという称賛。壁にフラクタルを実際に設置した写真があればよかったのに、という期待。Knuth の動画リンクもとてもよかったが、今まで知らなかったことに驚いた
似た方法が、ディテールを調整できるディザリングパターン作成にも応用できるのではないかという疑問
良い記事だったという感想とともに、Jurassic Park で有名な Heighway dragon もかなりかっこいいというおすすめ。https://en.m.wikipedia.org/wiki/Dragon_curve リンク付き
少しプロペラのようにも見えるという印象
面白い体験だったという感想