- 米軍では、同一のメッセージを異なる暗号化方式(あるいは暗号化なしを含む)で二度送信しないという原則があった
- そのために "paraphrase"(言い換え) という表現が使われ、元の意味は保ちつつ、表現や文の構造を大きく変えて書き直した
- 敵軍が平文と暗号文を比較して 暗号体系の弱点を把握すること を防ぐための、セキュリティ上の手順だった
- 削除を中心とした言い換え と、単語や固有名詞の繰り返しを減らす方法が重視された
- 過去にはドイツ軍も 同一メッセージを複数の暗号化で送信するミス により、Enigma暗号が解読される結果を招いた
背景と paraphrasing の概念
- 米軍の通信教義では、まったく同じメッセージを異なる暗号化(あるいは暗号化なし)で二度送信することを禁じていた
- このとき使われた専門用語が "paraphrase"(言い換え) であり、メッセージの意味を変えずに、原文の表現をできるだけ多く変形して書き直す方式を意味した
米陸軍暗号学マニュアルの paraphrasing 指針
- 1950年刊行の米陸軍技術マニュアル "BASIC CRYPTOGRAPHY"(TM 32-220)には、paraphrasing のガイドが詳しく紹介されている
- この指針では、次のような原則が強調されている
- 同一メッセージの平文をすでに暗号文として送信した場合、暗号文で送ったメッセージを平文で再度繰り返して送ってはならない
- 平文と暗号文の組が敵に露出すると、暗号体系の安全性 に対する大きな脅威となるため、非常に危険である
- 複数の人が情報を扱う必要がある場合や対外発表が必要な場合には、敵が比較によって情報を得られないよう、平文をきわめて慎重に言い換えて配布 しなければならなかった
言い換え(Paraphrase)の方法
- メッセージの 文構造、語彙、表現方法 を変えつつ、意味は同じに保つ
- 文の順序を修正する
- 句や節の位置を変更する
- できる限り多く 同義語や新しい表現 を使う
- 単にメッセージをより詳しく書き下すような拡張的 paraphrasing は避けるべきとされた
- 拡張方式では結局、元の意味を容易に復元できてしまい、セキュリティ上脆弱だからである
- 繰り返される単語や固有名詞 は、代名詞や "former/ latter" などに置き換える
paraphrasing の例外と規定
- すでに暗号文が存在していても、規定で特別に許可されていない限り、当該平文(あるいは言い換えた平文でさえ)を再送しないのが原則である
歴史的文脈と重要性
- こうしたセキュリティ規則は、Enigma解読の過程 で実際にその重要性が確認された
- ドイツ軍が まったく同じメッセージを別の暗号方式で繰り返し送信 するミスを犯し、その結果、連合軍が平文と暗号文の組を確保して、Enigmaのような強力な暗号でさえ解読するきっかけが生まれた
- 決定的だったのは、Enigma自体の技術的欠陥というより、こうした 手続き上のミスと運用上の問題 だった
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