- 革新的な技術が新たな企業の富を生み出す場合もあれば、社会変化には貢献しても投資家に戻る利益は少ない場合もある
- 生成AIがどちらの類型に属するのかという疑問が提起されており、現在は既存のICT革新の延長線上で大企業中心の寡占構造へ向かう様相を見せている
- 過去のマイクロプロセッサとコンテナ輸送の事例を比較すると、AIも多くの利益が生産者よりも消費者と一部の大企業に集中する可能性がある
- AIに投資して収益を上げるアプローチとして、インフラ企業や、AI活用によってコスト削減と生産性向上を重視する業種が有望である可能性がある
- ほとんどの新規AI企業の投資家にとっては、期待ほど大きな機会はなく、最終的には消費者と効率的な既存企業が最大の恩恵を受けると見込まれる
革新的技術と富の誕生
- 鉄道、電気、内燃機関、マイクロプロセッサなどの革新的技術は、新たな産業時代を生み出し、投資家や起業家に莫大な富と影響力をもたらした
- 一方で、コンテナ輸送のように社会的には大転換を実現したものの、企業価値を高める効果は限定的だった事例もある
技術革新の投資価値と「誰が利益を得るのか」という問題
- 新技術に投資する際には、どれだけの価値創出が起こるのか、そしてその利益を誰が占有するのかが決定的である
- ICT革新は新興企業と投資家に富をもたらしたが、コンテナ輸送では価値が希薄化し、多くの投資家は利益を得られなかった
- AI、とりわけ生成AIがこのうちどのカテゴリーに属するのかという不確実性が浮き彫りになっている
マイクロプロセッサとコンテナ輸送の事例比較
- マイクロプロセッサ革命は、初期には予測が難しかったが、実験と市場参入を通じて革新の好循環構造を形成した
- 1970年代末には、PC市場の段階的な成長と参入障壁の形成が進み、投資が活発化してエコシステムの成長を牽引した
- IBM、HP、DECなど既存の巨大企業はPC導入に消極的だったが、後発企業が革新の中心に立った
- ICTバブル→バブル崩壊→安定成長という流れの中で、投資家と起業家の役割、そして転換点が説明される
AIとコンテナ輸送の比喩
- コンテナ輸送もまた巨大な社会的・経済的変化を引き起こしたが、参入障壁の欠如と競争激化によって、投資家の大半は大きな収益を得られなかった
- 革新を主導したSeaLandの創業者McLeanと一部の投資家だけが、実質的な富を得た
- 大手海運会社、インフラ投資会社、そして実際の利点を活用した企業(例: IKEA、Walmart)が最大の恩恵を受けた
- 競争激化、需要に対する過剰投資、インフラ費用の増加が、投資収益を制限する構造につながった
AIの革新サイクルと投資環境
- 経済学者Carlota Perezの理論によれば、技術革新は爆発、狂乱、シナジー、成熟の4段階で進行する
- 狂乱とシナジーの時期に、投資家の収益機会が集中する
- AIではすでに大手ICT企業による寡占化と統合が進んでいる
- 大規模モデル企業、インフラ/チップ/データ企業が、バリューチェーン上で重要な役割を占めている
- 新しいアプリケーション系スタートアップは次々に登場しているが、巨大モデル企業に吸収されるか、競争で押し負ける可能性が高い
AI産業における投資機会とリスク
- モデル企業への投資機会はすでに限定的であり、ドメイン特化型モデルも統合や買収を通じて少数企業だけが頭角を現す見通しだ
- インフラ企業(例: NVIDIAなど)への投資も、すでに高い期待が織り込まれており、追加的な収益余地は限定的である
- AI活用業種(専門サービス、ヘルスケア、教育、金融など)で、コスト削減と生産性向上を戦略的に活用する企業が、最大の受益者になる可能性が高い
- 新規企業やスタートアップは、競争激化や成長障壁などにより大規模な資金調達が難しく、経験と実行力が鍵となる
AIの経済的波及効果と最終的な受益者
- AIは今後、世界のGDPの1〜7%に相当する付加価値を生み出すと見込まれるが、その利益の大半は消費者と生産性の高い既存企業に帰属する可能性が高い
- サービス産業における生産性向上効果によって、消費者厚生の増大と、多様なサービスを利用できる機会の拡大が期待される
- 過去の製造業の自動化と同様に、AIによる社会的コスト削減が企業戦略に組み込まれてこそ、注目に値する投資機会の創出が可能になる
結論 – AI時代の投資戦略
- 革新技術初期への無分別な期待よりも、知識労働者の生産性向上がどのような市場と戦略を開くのかに注目する、差別化された投資思考が必要である
- 今後は単に技術そのものに賭けるのではなく、その技術が新たな機会と市場をどのように切り開くのかについての洞察が成功要因となる
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