新しい抗生物質がIBDを標的にし、AIがその作用機序を予測
(healthsci.mcmaster.ca)- 新しい抗生物質が**IBD(炎症性腸疾患)**の治療を対象として開発された
- AI技術が抗生物質の作用機序の予測に貢献した
- 既存治療薬と比べて新規メカニズムを活用し、耐性を克服できる可能性を示した
- 実験での成功をもとに、今後の臨床応用への期待が高まっている
- 薬剤設計および検証プロセスにおけるAI活用の重要性が増している
概要
- 最近、新しい抗生物質が**炎症性腸疾患(IBD)**の治療に向けて研究され、注目を集めている
- この抗生物質の作用原理を**人工知能(AI)**が予測したことで、従来の新薬開発プロセスに革新をもたらしている
- 既存治療薬が抱える耐性や限界を踏まえ、新規メカニズムによってそれを克服できる可能性が示された
- 研究チームは動物実験などの初期段階で有意な効果を確認しており、今後は臨床応用を目指している
- AIベースの創薬は、作用メカニズムの予測力、効率性、コスト削減などの利点により、製薬業界で重要性が高まっている流れにある
1件のコメント
Hacker News のコメント
Nature Microbiology に原著研究がある リンク。興味深い部分を共有したい。大学のプレスリリースによると、これまで AI は治療可能性のある分子を予測するためのツールとして使われてきたが、今回の研究では「作用機序(MOA)」、つまり薬がどのように疾患を攻撃するのかを明らかにするために AI が使われた。MOA 研究は創薬に不可欠だ。これは科学者が安全性を確認し、用量を最適化し、有効性を改善し、ときには新たな治療標的まで発見する助けになる。規制当局もこの研究をもとに、その新薬が人間への使用に適しているか判断できるようになる。従来、MOA 研究には通常 2 年、約 200 万ドルかかっていたが、今回は AI を活用して 6 か月、6 万ドルで完了した。新しい抗生物質を発見した後、Stokes は MIT CSAIL の同僚と協力し、最新の機械学習プラットフォームが MOA 研究を迅速に進められるかを調べた。わずか 100 秒で予測が得られ、新薬が LolCDE という細菌の生存に必須な微小タンパク質複合体を攻撃することが確認された。MIT の Regina Barzilay 教授(DiffDock の開発者)は、「今回の事例で、AI は単なる分子探索を超えて、開発プロセス全体に不可欠な機序の説明も提供できることを示した」と説明している
研究室で新しい抗生物質を発見した後、Stokes が MIT CSAIL の同僚たちと協力する流れが本当に素晴らしく感じる。大学にいると、キャンパス内でさまざまな専門家に簡単に会えて、関心のある問題を最先端分野の力を借りて解決できる、素晴らしい環境だ
DiffDock が大規模言語モデル(LLM)なのか気になる。一般の人は AI と聞くとすぐに ChatGPT のような LLM を思い浮かべるし、OpenAI も自分たちが「考える機械」を作っていると言っているし、記事の見出しにも「予測した」と書かれているので、なおさら混乱する
pre-print があるのか気になる。もう大学に所属していないので、昔のように誰かが一晩で論文を上げてくれる世界ではなくなってしまって残念だ
何かおかしいと感じる。LolCDE が E. coli の弱点だということは 2016 年以前から知られていたし、それを阻害できる globomycin のようなものも 1978 年から知られていた 参考リンク1 参考リンク2。だとすると、enterololin は globomycin の新しい変種にすぎないのではないかと疑問に思う。AI が賢いのか、それとも科学者たちがだんだん鈍くなっているのか分からない
MOA 研究に従来は 2 年、200 万ドルかかっていたのに、今回は AI で 6 か月、6 万ドルで済んだという点が本当に美しい。もはやコード補完や画像生成ではなく、AI/機械学習の本当の価値の一つがしっかり出てきたように思える。今後 10 年でこの分野がどう進化するのか本当に楽しみだ。protein folding の AlphaFold や、今回の機序予測によるコスト削減と臨床試験の迅速化を継続して見ていきたい
この記事は「AI が研究者の仕事を代替する」という見方を強めているように思えるが、実際には私が職場で AI ツールを使うときととてもよく似ている。Stokes は、予測結果は興味深いが、あくまで予測にすぎず、(従来の)実験的な MOA 研究は必ず実施しなければならないと強調している。AI が「正しいかもしれない」という点が、次の一手を考える時間を節約してくれる。そこで MIT の予測をもとに実験を始め、数か月後に AI の予測が事実だと分かった。結局、標準的な MOA 実験によって予測が正しいことを検証し、その進め方で通常より 1.5 年節約できた
AI という用語は最近理解しにくい概念になったと思う。一般の人は AI=ChatGPT だと考えて「ChatGPT が新薬を発見した」と想像する。だが実際の研究では、トランスフォーマー(LLM)だけでなく、さまざまな ML ツールが幅広く使われており、その大半は LLM や ChatGPT とはまったく関係がない
私も同感だ。あなたが LLM を直接使っているのか、それとも自分の分野に合った ML/ディープラーニングのツールを使っているのかは分からない。ここ 1 年の LLM 成功談の多くは、こうしたツールが「最前線」にいる専門家(すでにその分野の最先端論文を読み尽くしている人)に対して、はるかに大きな助けになるという点にあると感じる。「幻覚(hallucination)」への不満は、実際の流れの最前線にいる人たちではなく、他に頼る先や追加情報を探す先がない非専門家の経験から来ているのだと思う。むしろ LLM は、自分の関心分野と、まったく知らなかった隣接分野まで結びつけて、仮説や手がかりを投げてくれるところで非常に大きな効果があると感じる。結局、実験や検証は研究者自身がやらなければならないし、ときには自分が出した結論に自信が持てない場合、LLM に自分のデータを入れて同じ結論に到達するか試すこともある。幻覚はまったく心配していない。誤りの責任を負うのは結局自分だからだ。そして、知識の最前線では、突飛な助言ですら新鮮なアイデアにつながることがある。最近では、どこで情報を探せばよいか分からずに何日、何週間、何か月も行き詰まることがほとんどなくなった。以前 Palantir が、人間とコンピュータの協業では「ワークフロー」が重要だとするチェス大会の投稿で、結局アマチュア+最高のワークフローが優勝したと書いていたが、今では新しいツールが専門家により大きな力を与える社会になったのだと思う リンク
今回の研究で AI と研究チームが発見したのは、IBD(炎症性腸疾患)そのものの治療薬ではない。むしろ IBD 患者や広域抗生物質による治療を受けた人では、腸内で enterobacter 種(E. coli の一部を含む)が過剰に増殖していることが多い。これらは既存の抗生物質に耐性があり、腸の健康にとって好ましくない状態だ。研究チームは、この enterobacter 類だけを選択的に抑制し、マイクロバイオーム全体はそのまま残す新物質を発見した。これは腸内細菌の不均衡に苦しむ人々、特に IBD 患者が、より健康な腸内環境を取り戻すのに役立つ可能性がある。ただし、まだマウス実験の段階だ
IBD 患者でマイクロバイオームのバランスを完全に正せれば、病気のサイクルが断ち切られて寛解に入れるかもしれない、という仮説は長いあいだ存在している(まだ正式に証明されたわけではない)
記事によれば「この新薬は何百万人もの IBD 患者にとって非常に有望な治療薬になりうる。現時点では治癒法がないため、症状を有意に緩和し、生活の質を高める可能性がある」
IBD が E. coli のせいで起こるというのは、しっかり証明された事実なのか気になる。E. coli に敏感に反応する構造なのかもしれないと思って混乱する
まだはっきりしていない。遺伝的要因と菌(微生物)が複合的に作用しているようだ。状況はかなり複雑だ。炎症を起こした皮膚の培養組織(あるいは生検)だけを見て「ああ、これだ!」とはならないからだ。最も効果的な治療法も結局は免疫系の一部を遮断する戦略であり、実際には一部の患者にさまざまな免疫抑制剤を試し、さらに組み合わせて、どうにか管理しているのが現実だ
私たちは皆 E. coli を持っているので、それが直接の原因ではない。記事の内容はやや混乱を招くが、今回見つかったものは従来よりも狭いスペクトラム(標的細菌)なので、人体の自然な細菌叢をあまり損なわない。一方で、耐性のある enterobacter(主な種は e coli だが、それだけではない)がより容易に過剰増殖しうる。IBD と e coli が過剰増殖したマイクロバイオームとのあいだには相関がある。関連する e coli の亜型も見つかっている 参考リンク
正確には、IBD を E. coli が引き起こすわけではないが、E. coli や他の Enterobacteriaceae が実際に炎症を足がかりに増殖することはある。炎症によって硝酸塩が分泌され、Enterobacteriaceae はそれを最終電子受容体として利用して増殖する。また、保護粘液層が薄くなったり穴が多くなったりすると(しばしばマイクロバイオームの破綻によって起きる現象だ)、これらがより侵入・増殖しやすくなる。こうした菌の増殖が、かえって炎症を引き起こし、寛解(remission)を難しくする。最近では、E. coli が粘膜に付着するときに使う因子を阻害して炎症を減らす臨床結果もいくつか出ている
研究者に GPU クレジットを直接支給しない理由がよく分からない。面倒な法的手続きなどではなく、メールアドレスで runpod/prime-intelect あるいは x-gpu の提供業者にアカウントを作って、5,000 ドル分を入金してあげればいいだけだ。本当に受け取るに値する人が誰かは、Github や Huggingface の履歴を見れば十分にふるい分けられる
「AI モデルが常に正しいとは限らない」という点について、なぜ私たちがそんな前提を持つ必要があるのか疑問だ。そして「正しいかもしれない」という可能性のおかげで、次の段階での試行錯誤を減らせたように見える。だが、これは単なる confirmation bias(確証バイアス)ではないのかとも思う。たとえば 100 件のケースのうち、AI に「これはどう動くのか?」と尋ねて、99 回は支離滅裂だったりもっともらしいが間違った解答だったりして、1 回当たったものだけを記事で見ている可能性がある。それが実験室で当たったからといって、AI が時間短縮に役立ったと言えるのか疑問だ。壊れた時計だって 1 日に 2 回は合う。「壊れた時計だが当たったときはすごい!」とは言えないのと同じように、私たちは「生産的な AI」ではなく、単に運のよい事例だけを見ているのではないかと思う。本当にこの分野が進歩したと言うなら、失敗事例もデータとして公開するか認めるべきで、そうでなければ hype(誇大宣伝)を膨らませるだけだ
実際のところ、研究チームは依然として科学的方法論を使っている。AI がしているのは、検証する価値のある仮説を提示することだ。だから AI は「説得力のある仮説のブレインストーミング」には非常に強い
人間の専門家も最先端研究の現場ではしばしば間違う。ほとんどの仮説や実験は失敗に終わる。だが、私たちが研究者のブレークスルーを称賛するのは、彼らが 100% 成功するからではなく、他の人よりも速く、ランダムより高い確率で正解にたどり着くからだ。AI によって 100 件のケースで 1/99 の成功が 2/99 あるいは 3/99 に上がるなら、効率は 2 倍から 3 倍になったことになる。そして、もし AI が 100 秒以内にこうした直感をすべて試せるなら、人間よりはるかに速い進捗が可能になる
私の理解では、この研究は IBD の治療薬ではなく、IBD 患者にとってより安全な抗生物質のように見える
McMaster University は冗談みたいな名前に聞こえるかもしれないが、実際には 1887 年に設立された大学だ [ウィキ参照]
カナダでも最上位クラスの大学の一つだ。私の考えでは、医学研究に関してはカナダで最高だと思う 参考リンク
ロンドンには Goodenough College というところも 1930 年から運営されていて、名前の意味とは裏腹に、本当にしっかり運営されている
機械学習が科学研究に使われ始めてからもう 10 年以上になる。では今回何が違うのか気になる。一般メディアが用語を雑に使うのはそういうものだとしても、NATURE がなぜ「人工知能」という言葉を使うのか分からない