8 ポイント 投稿者 GN⁺ 2025-10-22 | 1件のコメント | WhatsAppで共有
  • 「ソフトウェアをどう売るか?」 : Microsoftで23年間働き、Windows部門長として退任したスティーブン・シノフスキーとのインタビューをまとめた記事
  • ソフトウェア企業がエンタープライズ市場に進出するには、製品の優位性だけでは不十分で、技術的アプローチとビジョンに対する信頼性と正当性を証明しなければ顧客の購買決定を導くことはできない
  • 1960〜70年代にはSpecial Interest Group(SIG)とユーザーグループがソフトウェアの正当性の主要チャネルだった。ビル・ゲイツもこれを通じてMicrosoftの哲学を広め、信頼を築いた
  • 1980〜90年代にはPC MagazineやWalt Mossbergのようなジャーナリストがキングメーカーとして登場し、彼らの評価が製品の成否を左右する時代へ移行した
  • 企業市場へ進出する段階では、製品機能より10年後のビジョンを提示する能力が重要になり、Microsoftのような大企業の戦略発表がCIOの購買決定の中核要素となった
  • 今日ではベンチャーキャピタル、GitHubの評判、コネクションネットワークが新しい正当性のシグナルとして機能している
  • 時代が変わっても、**正当性(legitimacy)**は依然として顧客が選択を下す際の最重要基準である

1960〜70年代: Special Interest Groupと初期の正当性(legitimacy)

  • 当時はコンピュータとソフトウェアが希少な資源で、販売より共有が中心だった
    • プログラミング言語やOSごとに**SIG(Special Interest Group)**が組織され、交流が行われていた
    • SIGは一種の初期GitHubコミュニティとして、技術的信頼を得る最初の舞台だった
  • **RFC(Request For Comment)**は公式な標準提案書として使われ、認められた人物だけが提案する資格を持っていた
    • たとえばネットワーキング関連の標準はBob Metcalfが担当していた
  • その後SIGはUser Groupへ発展し、より反骨的でクラブのような形に進化して、実際のソフトウェア配布と交流の中心になった
    • ユーザーはフロッピーを使って直接プログラムを交換し、特定グループのバージョンが**「正式」**と見なされた
  • Bill Gatesの「Open Letter to Hobbyists」がこの「Home Brew Group」のニュースレターに掲載され、
    ソフトウェア有償化と
    Microsoftのアイデンティティ確立
    の大きな転換点となった

    「皆さん、すべてのソフトウェアを盗んでいます。お金を払うべきです。そうしなければ、ソフトウェア会社は存在しなくなります」

  • ビル・ゲイツは、こうしたユーザーグループの重要性と、それらが正当性の源泉としてどれほど重要かをよく理解していた
  • Microsoftの正当性獲得戦略は、技術コミュニティの前に直接出ることだった
    • Bill Gatesは「オペレーティングシステムとは何か?」という長文を書き、Paul AllenはマウスやGUIに関する記事をニュースレターに寄稿した
    • 交流の大半はQ&A形式で、そこから集まった顧客フィードバックをMicrosoftへ持ち帰り、製品開発へ反映した
    • 双方向のやり取りが重要で、Windowsアプリ開発者も自分の成果をMicrosoftに伝えて相互に正当性を構築した
    • このようにしてMicrosoftは技術者と直接対話してフィードバックを得て、コミュニティ内での信頼を獲得した
  • この正当性獲得方法は想像以上に長く続き、シノフスキーが1993年にWindows向けC++グラフィックインターフェースを発売した際にも、質問への回答力が製品の信頼性を左右した

1980〜90年代: メディアとレビューの「キングメーカー」時代

  • 1981年にPC Magazineが創刊されたことで、正当性の中心は雑誌社へと移行した
    • BasicやCといったプログラミング言語に加え、ワードプロセッサ、スプレッドシート、データベースなどPC消費者の体験全体を扱い始めた
    • すべてのソフトウェアを直接テストして比較評価する仕組みを構築した
    • 製品発売プロセスにロビー活動が必須要素として加わり、ニュースレター投稿や対面のQ&Aを超える戦略が必要になった
  • Microsoftはレビューアを訪問するためにボストンやニューハンプシャーなどへ直接向かい、ByteやPC Magazineの評価を確保するための実地ロビー活動を行った
    • Byte Magazineの評価プロセスはニューハンプシャーの巨大な建物(元々牛関連の用途だったとされる)で行われ、マイクロコンピュータとプリンターを備えたフロアで数十人がソフトウェアを徹底的にテストした
    • PC Magazine Editor's Choice受賞はアカデミー賞級の権威を持ち、ラスベガスのComdexではCaesar's Palaceでブラックタイの晩餐会とトロフィー授与式が開かれた
    • 受賞後はソフトウェアのボックス表紙に**「PC Magazine Editor's Choice」**ラベルを付けられ、Microsoftにはそのトロフィーを展示するケースもあった
  • 時間が経つにつれ、正当性獲得の中心は新聞へ移り、新聞の評価が企業の購買決定に絶対的な影響力を持つようになった
    • Walt Mossberg(Wall Street Journal)が先頭に立った。戦争と世界銀行を取材していたベテラン記者がコンピューター欄を立ち上げ、製品メーカーへ説明責任を求める役割を果たした
    • ニューハンプシャー訪問時に5〜6人の主要ジャーナリストに時間を使い、Washington DCのWaltやDavid Pogueに会うために何度も飛行した
    • iPhoneの発売は印刷媒体の影響力が最高潮に達した例であり、Wall Street Journal読者の大半がBlackberryを使っていた時代に、Waltの評価が決定的だった
    • Waltがこのデバイスを数週間テストし、疑問点を電話で問い合わせた際、Steve Jobsが直接電話に出るほど、主要ジャーナリストとの関係が製品の成否を決める
    • Outlook 97の発売時、Waltが「Byzantine(複雑で難解)」と評したため衝撃を受け、ニューヨーク・タイムズが「Leviathan(巨大で手に負えない)」と評した後、次の日には全世界のCIOに説明を求められた

影響力のある「初期ユーザー」—PCからChatGPTまで

  • 今日のAI導入パターンは1980年代のPC導入とほぼ同じ
    • 大企業内で好奇心が強く業務改善に関心を持つ少数が、誰からも止められずChatGPTの使用を始めた
    • その周囲に人が集まり、「見て、この人、今何をしたの?」という形で自然に拡散するメカニズムで技術が広がった
  • 大学時代、コンピュータで論文を書いているとプリンター音に気づいた人々が「何をしているの?」と近づいてきた
    • 学部長に会ってワードプロセッサの説明をしなければならず、当時の自分は「影響力のあるエンドユーザー」として機能していた
  • 1982年のOrlandoの防衛系契約会社でのインターンシップでは、誰も止めない環境でPCをカートに乗せてオフィスへ持ち込んだ
    • 狭いオフィスに人が集まり、Lotus 1-2-3とWord Perfectの使い方を学んだ。引退した将軍がPCを要望したため、彼のオフィスへ直接PCを設置した
    • これらの先行ユーザーに共通するのは、自分の仕事へ創造的にアプローチしたいという意志を持つ少数であり、ChatGPTの初期ユーザーも同じ特性を持っていた
  • Windows 95発売後、一般の人々が自宅でPCを購入し始めたことで、IT部門は従業員の個人クレジットカードによるPC購入費の請求をもう許可できなくなった
    • IT部門はバックオフィスからフロントオフィスへ移行し、影響力のあるパワーユーザーだけでなく、マーケティングと営業スタッフ向けのハードウェア・ソフトウェア管理も担う役割へ拡大した

正当性を確保できれば、ストーリーを売ることができる

  • この時点から、IT部門向けの販売手法は完全に変わった
    • 製品の正当性だけでなく、未来のストーリーを伝える段階に入った
  • MicrosoftはExecutive Briefing CenterでCIOを一日中招き、製品チームが戦略とマスタープランを説得するプレゼンテーションを実施した
    • 最初の面談ではOffice 97のデモを用意していたが、CIOは製品機能ではなく**「10年計画」**だけを聞きたがり、結果として低評価を受けた
    • エンタープライズ営業チームを率いていたSteve Ballmerが「こうしたことは二度とあってはならない」と警告し、これは製品発売者にとっての厳しい教訓となった
    • 製品開発に捧げた膨大な労力やデモ、機能実装の瞬間を思い描いていても、顧客が気にしていたのは**「10年後、ワードプロセッシングはどうなるか?」**だけだった
  • ビジネス界で正当性が活きるのは、未来予測の信頼性から来る
    • 一度影響力と正当性を得れば、顧客は「Microsoftのビジョンなら、このビジョンを買ってしまっても解雇されることはないはずだ」と考えるだろう
  • しかし、スタートアップでは違う
    • スタートアップのビジョン失敗はその企業の購入者が二度とそのスタートアップへ投資しなくなることに直結する
    • Microsoftが約束を守らなければ、あなたのCEOがSun ValleyのようなイベントでSatyaに不満を言う程度に終わる
      • これは他に正当な選択肢がないからであり、大企業の正当性が与える安全網の本質を示している

ベンチャーキャピタル: 正当性バンク

  • 今日のAI関連スタートアップなら誰かがあなたに話しかけてくる可能性が高い
    • しかし、それが進出しようとする分野で正当性を確保したことを意味しない
    • 医療や法務のように従来のルールが今なお適用される分野では、AI技術だけでは医師や病院管理者が時間を割いてソフトウェア議論に応じない
    • 彼らは正当性を探す努力をしているにすぎず、新しい技術だからという理由だけで取り組むわけではない
  • 開発者とエンジニアにとってGitHubのアクティビティ履歴は強力なツールで、コンシューマ市場にはProduct Huntのようなシグナルがある
    • ただし企業向け販売を行う会社にとっては、Andreessen Horowitzのような組織が提供するExecutive Briefing Centerを通じた重要な紹介が大きな助けになる
      • これは資格を認定されたことを意味する
  • 技術界隈でどれだけ上からの認証を得ているかは重要ではない
    • GitHubスター数にかかわらず、企業側では依然として「小規模会社=リスク」という認識が残る
  • トレンドは来ては去り、Waltのようなキングメーカーも来ては去るが、正当性シグナルは購買決定を左右する中核要因であり続ける
    • 選択肢が増えるほど人々はより多くの正当性シグナルを見つけて選択するようになり、これは過去から現在まで一貫したパターンである

1件のコメント

 
ashbyash 2025-10-23

この記事の全文を翻訳してみました。
https://blogbyash.com/translation/…