- MITの調査研究では企業のAIプロジェクトの95%が失敗するとされているが、実際には大企業がAIを自前で構築できないという構造的問題を示している
- 大企業は社内ITチームやコンサルティング会社を通じてAIシステムを構築しようとするが、製品開発力の不足と政治的障壁によって大半が失敗する
- 外部スタートアップベンダーを選んだプロジェクトの成功率は内製よりはるかに高く、企業は今やスタートアップのソリューションに依存せざるを得ない状況にある
- 大企業のエンジニアリングチーム内部にはAI懐疑派が多数いるため、実際に動く製品を作れず、これがスタートアップに前例のない機会をもたらしている
- AIネイティブなシステム構築と乗り換えコストによる高い参入障壁が形成され、きちんと動くソリューションを作れるスタートアップに有利な環境が生まれている
MIT研究報告の実際の内容
- AIインフルエンサーが広めた歪んだ解釈: XやYouTubeで「95%のAIプロジェクト失敗率」が**「AIは詐欺だ」**という証拠として提示された
- 実際の研究内容は企業のAI導入方法と成功要因の分析であり、AIエージェントの実際の動作方法と効果的なアプローチを確認している
- 大学生でさえツイート版だけを読んで「YCが言うAIスタートアップは機能しない」と誤って結論づけていた
企業のAI導入が構造的に失敗する原因
- 社内ITシステムの慢性的問題: ほとんどの企業の社内ITシステムは品質が低く、Ernst & YoungやDeloitteのようなコンサルティング会社を雇っても問題は倍増する
- Appleでさえソフトウェア開発に失敗する: 無限の資本と人材アクセスを持つAppleでさえ、カレンダーアプリに毎日バグが発生する
- 一般企業やIT部門が良いソフトウェアを作るのが難しい現実を示す事例
- 組織内の政治的対立: 大企業で高度なソフトウェアを配備しようとすると複数チームが関わり、政治的な争いや縄張り争いが発生する
- コンサルタントはデータサイエンスチーム、カスタマーサポートチーム、ITチームなどを調整しながら要件文書を作成する
- しかしコンサルタントには実際のソフトウェア構築に関する技術的専門性が不足している
- レガシーシステムの限界: 企業内システムがあまりに古くサイロ化しているため、外部コンサルの専門性とソフトウェア構築能力の両方が同時に必要になる
- 最終成果物は委員会が設計したラクダのような形となり、実用性のない妥協の産物になる
成功したスタートアップ事例
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Tactile(ビジネス意思決定エンジン)
- 銀行のKYC/AMLをリアルタイム処理: ローン申請者の信用確認やビジネスルール検証を1日数百万件規模で処理
- CitibankとJP Morganは内製を試みたが、3〜5年と数千万ドルを要した
- TactileはREST APIでリアルタイム意思決定を提供し、最新のAIモデルをプラグイン可能で、予算の一部とはるかに短い期間で構築した
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Greenlight(銀行向けAIシステム)
- ある銀行が既存ベンダーのErnst & YoungにAIシステム構築を依頼
- Ernst & Youngは1年間開発したが完全に失敗
- 銀行は再びGreenlightに連絡し、現在は完全に展開され稼働中
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研究結果: 外部ベンダー vs 内製開発
- 調査対象プロジェクトの3分の2が内製またはコンサル会社との協業だった
- 3分の1のみがGreenlightやTactileのような外部ベンダー製品を購入していた
- 外部ベンダーを選んだ場合の成功率は内製よりはるかに高い
スタートアップが成功する理由
- ポリマス(polymath)不足の問題: 製品とエンジニアリングの両方に長けた人材はきわめて稀
- 優れたエンジニアはコーディングにばかり集中し、銀行員のようなドメインユーザーとコミュニケーションできない
- ドメイン専門家はコーディングや技術、デザイン、製品リリースの能力が不足している
- Windsurfの事例: エンジニアリング学位のない営業リーダーがWindsurfで独自ツールを作成
- IQ150級の組織ではすでに起きているが、ほとんどの組織ではまだ不可能
- スタートアップ的な空白: あらゆるビジネスプロセスとシステムに、スタートアップが埋めるべき空白が存在する
- 希少な能力の組み合わせが必要: 最新AIへの理解、プロダクト感覚、人間的プロセスへの理解をすべて備えた人材
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Castle AIの事例(モーゲージサーバー)
- レガシーベンダーのAI追加の試み: 何十年も前のシステムの上にAIを継ぎ足して競争に対応しようとしている
- 銀行が信頼する既存ベンダーとのベイクオフ(bake-off)競争が必須
- 多くの場合ベンダーのソリューションは**「AIをただ載せただけ」**の水準で非常に貧弱
- Castle AIは最初からネイティブに構築されたプロダクト感覚で大手銀行との契約を獲得
- 配備後1年で成果を達成
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Reductoの事例(文書処理)
- YC Launchを通じてFAANG企業が直接発見: バッチ後154日でFAANG企業との契約を獲得
- その企業は何年にもわたり自社ソリューション構築を試みていた
- オープンソース、AWS Tesseractなど多様なOCRソリューションを試したが失敗
- **製品の卓越性(product excellence)**によって契約を獲得
- 社内チームと競合しながら組織政治を繊細に乗り越える必要があった
- 現在は1〜2年以上にわたり本番環境で稼働中
成功戦略
- チャンピオンを育てる: 賢い若者に機会を与えたいと思う社内人物を確保する
- 理想的な社内チャンピオンのタイプ
- スタートアップの夢はあるがリスク回避的な社員: 実際には起業しない人たち
- 面白いスタートアップを通じて代理満足を得たい傾向
- 自分がスタートアップの旅路に参加していると感じ、創業者の成功を望む
- 内なるスタートアップの夢を育てたい人たちを見つける
- 創業者が取るべき姿勢
- スーツを着たりMicrosoftのホームページを模倣したりするような形式主義に従わないこと
- 誠実に、スタートアップらしく振る舞うことが重要
- 賢く有能に見えることは重要だが、過剰な形式は不要
企業のAI導入意欲とスタートアップの機会
- MIT報告の前向きな核心メッセージ: 企業には圧倒的なAI導入需要がある
- 以前のTripleByte運営時代よりも、FAANG企業にAIエージェントを売ることのほうがはるかに容易
- 企業は既存ソフトウェア会社やレイターステージのスタートアップからソリューションを購入したがる
- 根本的に製品を作れない構造的問題:
- 大企業のエンジニアリングチームがAIを信じない人々で構成されている
- コード生成ツールを使わない
- MIT研究は過大評価だという投稿をリツイートして喜ぶ
- 自分たちが信じたいナラティブに執着する
- エンジニアが信じなければ動く製品を構築することは不可能
- スタートアップにとって前例のない機会: 動く製品を作れば企業は話をせざるを得ない
AI懐疑派へのメッセージ
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まず自分で試してみること
- エンジニアなら実際のプロジェクトに投資して使ってみるべき
- 一度試して変数名のエラーが出た程度で諦めてはいけない
- 本業ではない面白いサイドプロジェクトでもよい
- 「Vibe Coding Dad's Night」の事例: 技術畑でない家主が入居者の家賃確認システムを作成
- 10倍エンジニアを100倍に、1倍エンジニアを10倍にするツール
- 自分の内面の感情を乗り越える必要がある
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Andrej Karpathyインタビュー歪曲の事例
- ツイート: 「Karpathyがエージェントは過大評価だと言った」
- 実際の発言: エージェントにプロンプトだけを与えて完璧な結果を期待することはできず、適切なデータ、コンテキスト、評価、ツール作業が必要
- 実際の意味: スタートアップやソフトウェア開発者にとって巨大な機会
- AIは道具であり、よりよく動くよう支援すべきものであって、魔法のように動くことを期待してはいけない
AIネイティブなシステム再構築は機会
- すべてのシステムをAIネイティブとして完全に書き直す必要がある
- ソフトウェアはAIとともに動作するよう、完全に新しく書かれなければならない
- 創業者に無限の機会を提供する
- 「いったんシステムの訓練に時間を投じれば、乗り換えコストは耐えられないほど高くなる」
- **これこそが堀(moat)**であり、ChatGPTラッパーには堀がないと心配する人々への明確な答え
結論: スタートアップの機会
- AI悲観論者の誤った解釈: 95%の失敗率をAI不可能論の証拠へと歪めた
- 本当のメッセージ: AI実装は非常に難しく、成功するのは5%だけ
- しかしYCの合格率は1%未満: その1%の創業者たちが、成功する上位1%の実装事例を生み出す
- 成功要因: 卓越した技術力 + ポリマス的能力 + 他者への理解
- 50億ドル規模のフィンテックCIOが本当に望んでいることを理解する
- 5%に入れるという自信: 本当に優れているなら十分可能であり、YCにはその事例が数多く存在する
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