2 ポイント 投稿者 GN⁺ 2025-11-10 | 1件のコメント | WhatsAppで共有
  • コンピュータサイエンスの創成期を担った人物の一人、エツヘル・W・ダイクストラの研究と著作を保存したオンラインアーカイブ
  • アルゴリズム設計プログラミング言語オペレーティングシステム分散処理形式的検証など中核分野への貢献を収録
  • 40年以上にわたって書かれた EWD 番号付き原稿を 1,000 本以上 PDF 形式で公開し、検索可能な転写版と翻訳版も提供
  • 原稿間の相互参照要約文著作権情報講演・インタビュー動画などの補足資料を体系的に整理
  • ダイクストラの思想と教育哲学を受け継ぐ記念講演シリーズや関連研究コミュニティへつながる知識基盤

ダイクストラの生涯と業績

  • エツヘル・ワイブ・ダイクストラ(Edsger Wybe Dijkstra) は、コンピュータサイエンスの基礎を築いた人物の一人であり、アルゴリズム設計、プログラミング言語、オペレーティングシステム、分散処理、形式仕様、数学的論証設計など多くの分野に根本的な貢献を残した
  • 学界と産業界にまたがる 40年以上の経歴の中で、ACM チューリング賞を含む多数の賞を受賞
  • 教育、学問としてのコンピュータサイエンス、そしてソフトウェア産業の関係にも深い関心を持っていた

EWD 原稿コレクション

  • ダイクストラは 40年以上にわたり同僚の科学者たちと活発に書簡を交わし、連番付きの技術ノート・旅行報告・論評などを「EWDs」として配布した
  • コピー機の普及と高い関心により、非公式な流通部数は数千部に達した
  • 原稿の大半は出版されなかったが、テキサス大学コンピュータサイエンス学科が1,000 本以上を PDF ビットマップ文書として恒久保存している
  • 原本の原稿、日記、書簡、写真などはテキサス大学ブリスコー・センター・フォー・アメリカン・ヒストリーに所蔵されている

索引とアクセス方法

  • 2種類の索引を提供
    • BibTeX 索引: 書誌情報を含む
    • Ad-hoc 索引: タイトルのみを表示し、すばやく検索可能
  • EWD 番号と発行年の対応表、数学センター(CWI)技術報告書、博士論文、その他文書へのリンクを提供
  • 一部の原稿は出版されており、それらの文書の著作権は出版社が保有する

転写と翻訳

  • 視覚障害者向けの検索可能な転写版が段階的に追加されている
  • 一部のオランダ語原稿は英語に、EWD1036 はスペイン語に、EWD28 はロシア語に翻訳されている
  • 60人以上のボランティアが転写作業に参加しており、誤植を見つけた場合はメールで修正提案が可能
  • 翻訳の正確性の問題により、現在は新たな翻訳ボランティアの募集を停止している

原稿間のつながりと要約

  • Diethard Michaelis が作成した EWD 間の相互参照リストを提供しており、読者の参加による補完も可能
  • ダイクストラは同じ主題を繰り返し扱いながら新たな視点を提示しており、関連文書は「see also」リンクで結ばれている
  • Günter Rote の提案により EWD 要約文の追加が始まり、とくにオランダ語原稿の英語要約への貢献が歓迎されている

著作権

  • EWD の著作権の大半はダイクストラの子どもたちが保有しており、Rutger M. Dijkstra が再出版許可の申請を担当している
  • 出版済み文書の著作権はそれぞれの出版社が保有し、一覧と表紙情報も提供されている
  • 原本はブリスコー・センター・フォー・アメリカン・ヒストリーの所有であり、同センターの出版許可ポリシーが適用される

映像・音声資料

  • ダイクストラの講演およびインタビュー録画を別ページで提供

ダイクストラとその仕事に関する資料

  • 1985年の Rogier F. van Vlissingen によるインタビューと個人的回想、2001年の Philip L. Frana によるインタビュー記録を掲載
  • 1999年の退職を記念し、2000年の誕生日に開かれたシンポジウム “In Pursuit of Simplicity” のプログラムと映像を公開
  • 2002年の死去後、複数の追悼記事と記念行事が行われた
  • 2008年の Maarten van Emden による回想文、2021年に Krzysztof R. AptTony Hoare が編集した追悼集が刊行された
  • Edgar G. Daylight が運営するブログ Dijkstra’s Cry では、ダイクストラの思想と研究を継続的に扱っている
  • EWD249 で提示された「アセンブリライン原理」を通じて、効率性とメモリ節約のあいだのバランスを説明した事例にも言及
  • Edsger W. Dijkstra Prize in Distributed Computing は、並行性の原理や自己安定化研究など、彼の基礎的業績を顕彰している

ダイクストラ記念講演シリーズ

  • 2010年10月からテキサス大学で毎年開催されている Dijkstra Memorial Lectures

サイト情報

  • 最近の変更履歴は 2021年3月30日付の更新として明記されている
  • サイト構築に貢献した人物一覧と、フィードバック用メールアドレスを掲載

関連サイト

  • Discipline in Thought: 計算的思考と数学的方法論を扱い、ダイクストラの伝統を受け継ぐウェブサイトを紹介

原文改訂日: 2020年1月12日

1件のコメント

 
GN⁺ 2025-11-10
Hacker Newsのコメント
  • 2025年の文脈で最も重要な文章は、Dijkstra による 「natural language programming の愚かさ」 についてのエッセイだと思う
    On the foolishness of "natural language programming"

    • リンクありがとう。本当に興味深い文章だった。Dijkstra が em-dash を多用しているのも面白かった
    • 現代の コーディング LLM が一種の自然言語コンパイラのように動いていることを考慮しても、既存のプログラミング言語は自然言語の使用が少なすぎると思う
      たとえば && の代わりに andif (A) B の代わりに if A then B のほうが読みやすい
      数学は簡潔さを重視してきたが、プログラミングは 可読性 を重んじたおかげで、より良いバランスを持てたのだと思う
      Dijkstra が「可読性だけを追い求めるのは割に合わない取引だ」と言っていたのなら、それは正しい指摘だ
    • このエッセイが本当に大好きだ。短いのに 社会全体 に対する洞察が詰まっている
      しかも驚くほど明確に正しい
    • 「プログラミングの容易さ」を「ミスに気づかなくさせる容易さ」と取り違える人々についての一文が本当に強く刺さる
      動的型付け を好む人たちには特に当てはまる
  • Dijkstra が1980年代の時点ですでに「教育が知的訓練から遠ざかるにつれて、言語運用能力が低下している」と書いていたのは驚きだ
    オランダでは学生の合格率でカリキュラムを評価するため、合格率が低ければ難易度を下げるような形になっているという
    これを何十年も繰り返せばどうなるかは明らかだ

    • 南アフリカ共和国がその代表例だ。教育システムが 国家規模で崩壊 しつつある
  • 私がよく共有する文章の1つが EWD831
    配列インデックスがなぜ 0 から始まるべきなのか、区間をなぜ 下限を含み上限を含まない 形で定義すべきなのかを説明している

    • ただ、その文章がいつも 0-based vs 1-based 論争で持ち出されるのは残念だ
      実際には 1-based のほうが良い場合もある。たとえば 逆順反復 では 1-based のほうが自然だ
      オフセットは 0-based、インデックスは 1-based と区別するのが合理的だという主張もできる
      関連記事: Again on 0-based vs 1-based indexing
    • Dijkstra の主張は理解できるが、なぜ Fortran が 1 から始めたのかに触れていないのは意外だった
      IBM 704 の 減算型インデックスレジスタ構造 のためで、それが 列優先配列 を効率的にしていた
      Cray、CUDA、現代の column-oriented DB も似た原理を使っている
      結局のところ Fortran はメモリオフセットの観点では Dijkstra の規則に従っていた
  • 本の章を 0 から始めるのはいまでも混乱する
    メモリアドレスが 0 から始まるのは電圧の組み合わせのためであって、順序の概念 のためではない
    この世に「0世紀」や「0マイル」がないのと同じで、本の章も同様だと思う

    • でも「第0章」は 出発点 を意味すると考えることもできる
      たとえば道案内で「3ブロック進んでください」と言うなら、出発点は 0 番目のブロックだ
    • コンピュータサイエンスでは最初の要素のアドレスが base + 0 なので、オフセット計算 のために 0 から始まる
    • 「第0章」は本文の前に必要な 基礎概念 を入れる用途として自然に使える
      たとえば 1968 年の Tensor Analysis on Manifolds には集合論を扱う第0章がある
      「熱力学第零法則 (zeroth law of thermodynamics)」のように、既存の順序より前に来る概念を表すときにも使われる
    • 国によっては建物の階数を 0階 (G階) から数えるところもある
      結局、0 から始めるのが「自然ではない」というのは 文化的バイアス にすぎない
  • Dijkstra が 最初の割り込み設計 を回想する文章を読むのが本当に好きだ
    EWD1303: The first interrupt

  • 数学的思考に興味があるなら EWD717EWD765 を勧めたい
    どちらの文章にも興味深い 問題解決の過程 が収められている

  • EWD498: How do we tell truths that might hurt? を見ると、
    自然言語プログラミングは失敗するほかない」という一節が印象的だ
    もう1つのおすすめは EWD1305 で、
    学生たちの質問への回答を集めた文章だ
    Dijkstra はインターネットの人気によって 科学的素養の弱い学生たちがコンピュータサイエンスに流れ込んだ と批判している
    そして「上手にプログラミングする方法」がほとんど教えられていない現実を指摘している

    • Dijkstra は本当に 洞察力のある人物 だった
  • 私が最も好きな文章の1つは EWD898: Threats to computer science
    そして EWD899 の冒頭で AI 論文を辛辣に批判している箇所も印象的だ
    「あの学会に出席しなくてよかった」という一文が特に強烈だった

  • 以前、名刺の裏面に Dijkstra の名言を入れていた
    Computer Science is no more about computers than astronomy is about telescopes
    いつか彼の文章をすべて eReader 用にまとめて、旅行中に読んでみたいと思っている

    • 「でも天文学を『望遠鏡学』とは呼ばないでしょう?」という冗談を思い出す
    • けれど私たちの大半は 望遠鏡の操作者 であって、天文学者ではない
      結局、私たちが扱うのはコード(望遠鏡)であり、その品質こそが私たちの成果なのだ
  • UT で授業を受けたことがあるが、Dijkstra は学生に 鉛筆ではなくペンで試験を受けさせていた
    消せない状況のほうが、むしろ ミスを減らす訓練 になると考えていた