4 ポイント 投稿者 GN⁺ 2025-11-23 | 1件のコメント | WhatsAppで共有
  • 発振回路設計の中核原理と実際の実装の難しさを段階的に説明
  • 単一の MOSFET回路 が安定点のために発振しない理由を分析し、これを解決するための Schmittトリガ構造 を提示
  • Schmittトリガをベースにした リラクゼーション発振器 を構成し、約 3 kHz の安定した周波数を実現
  • 続いて 演算増幅器(op-amp) を用いた簡単な発振回路を紹介し、理論計算と実測値の差を比較
  • 最後に 位相移動(phase-shift)発振器 を通じて、RCフィルタの位相変化による 正弦波生成の原理 を説明し、アナログ回路設計の精密さと実験的検証の重要性を強調

発振器の基本概念と難しさ

  • 発振器の核心条件は 信号利得(gain) の存在であり、利得がなければ振動は減衰する
  • 増幅回路が偶然発振する場合もあるが、安定したアナログ発振器 を自力で設計するのは難しいと説明
  • インターネットでよく見かける発振回路は 不安定だったり特殊な部品(センタータップ付きインダクタ、白熱電球など)を必要とする
  • 目標は 理解しやすく周波数が予測可能な発振器 を外部の参考なしに自分で構成すること

単一MOSFETによる発振の試みの限界

  • nチャネル MOSFET をスイッチのように使って発振を試みるが、実際には 安定平衡点 が存在して振動が止まる
  • 例として BS170 トランジスタの Vgs–Id 曲線 を示し、約 2 V 付近で 300 µA の電流が流れる安定状態が形成される
  • この状態は「スイッチが半分入った」状態と同じで、発振は持続しない

Schmittトリガを用いた安定したスイッチング

  • 中間安定点のない電子スイッチ として Schmittトリガ回路を提示
  • 入力が 0 V のとき右側のトランジスタが導通し、入力が約 2.6 V を超えると左側のトランジスタがオンになり、右側はオフになる
  • この過程で 正帰還 が発生し、回路が中間状態に留まらない
  • 入力電圧が 2.6 V でオンになり 2.2 V でオフになる 400 mV のヒステリシス が形成される

Schmittトリガベースのリラクゼーション発振器

  • Schmittトリガの出力信号を入力へフィードバックし、抵抗–コンデンサ(RC) の遅延を加えて発振周波数を制御
  • 5 V 電源で約 3 kHz の発振周波数を観測
  • コンデンサ電圧が 2.2 V〜2.6 V の間で振動し、充電・放電時間はそれぞれ 154 µs、167 µs と計算
  • 回路は単純化できるが、より少ない部品で済ませるには 演算増幅器(op-amp) の使用が効率的

演算増幅器リラクゼーション発振器

  • R1 = R2 = R3 の構成では、非反転入力は 電源・接地・出力の平均電圧(⅓〜⅔ Vsupply)を維持
  • 初期状態ではコンデンサが 0 V なので出力が上昇し、その後コンデンサが充電されて ⅔ Vsupply に達すると出力が反転
  • コンデンサが ⅔ → ⅓ Vsupply に放電しながら周期的な発振が発生
  • 5 V 回路、Rcap = 10 kΩ、C = 1 µF のとき理論上 75 Hz、実測は 70 Hz
  • 誤差の原因は 非定数電流近似 の限界であり、R3 を 47 kΩ に調整するとより正確な結果が得られる

周波数計算と一般式

  • R1 = R2 のとき 2つの抵抗を統合して 分圧式 に単純化できる
  • コンデンサ電圧が ½ Vsupply を中心に振動するため、平均電流を用いて t = Δv · C / I の形で周期を計算
  • 例の値(R1 = R2 = 10 kΩ、R3 = 47 kΩ)で実際の周波数を導出

位相移動(Phase-Shift)発振器

  • 演算増幅器の電圧フォロワ の負帰還を変形し、特定の周波数で 位相反転 を誘導
  • RC ローパスフィルタを連続接続し、各段で -60° ずつ、合計 -180° の位相移動を達成
  • 各 RC 段の アークタンジェント(Arctan) 関係式を用いて該当周波数を計算
  • 3段すべてが同一の結果を持ち、位相反転周波数 で発振が発生

波形特性とシミュレーション

  • 増幅器の利得が制限されていないため出力は 方形波 形状だが、RC フィルタを通した波形は 正弦波に近い
  • シミュレーション結果では、方形波(青)と正弦波(灰色)の挙動がほぼ一致
  • 出力波形を純粋な正弦波にするには、利得を調整するか 非反転入力信号を増幅 する方法を使う

回路設計上の考慮点

  • 各 RC 段のインピーダンスを 10倍ずつ増やして 相互負荷効果 を最小化
  • 同一インピーダンスの場合、全6部品の 伝達関数計算が複雑 になる
  • 文献ではハイパス(high-pass)フィルタと単一トランジスタを使う方式もあるが、実装は難しい
  • 本文の回路は Electronic Design の記事で論じられた 低歪み正弦波・方形波発生器 の構造に基づく

1件のコメント

 
GN⁺ 2025-11-23
Hacker News のコメント
  • 昔からある電子工学のジョークに「発振器を作りたければ増幅器を作れ」というものがある
    80年代に読んだ Television Magazine の記事で、Philips ラジオのサービスノートを扱っていた話を思い出した
    そこには「Fix VIUPS」という修理指示があり、抵抗をいくつかとコンデンサをいくつか交換する程度のものだった
    筆者はそれが何なのか気になって Philips 本社にまで問い合わせたが、最終的にエンジニアから「VIUPS は故障時に出る音の名前だ」と答えられたという — 「VIUPS VIUPS VIUPS」

    • 私が聞いた版では「増幅器は発振し、発振器は発振しない」だった
    • これは no-input テクニック で簡単に実演できる。オーディオミキサーの出力を入力に戻してつなぐとフィードバックが生じ、そこからさまざまな音を作れる
      ただし注意してやるべきだ — 実演動画
    • わかる、本当に 共鳴(resonates) する話だ
    • AM ラジオで近所迷惑をする最も簡単な方法は、再生式 AM 受信機 のゲインを上げすぎることだ
      すると発振して同じ周波数でノイズを放射する。ここにカーボンマイクを追加してゲインを最大にすれば、簡単な AM 送信機になる
  • LC 発振器 はかなり簡単に作れる
    私はランダムな回路トポロジーを生成し、SPICE シミュレーション で発振するかどうかを探すプログラムを作った
    その結果、最も単純な形はインダクタ 1 個、コンデンサ 2 個、抵抗 1 個、トランジスタ 1 個で構成されることを見つけた
    この回路群を「LCCRT 発振器」と呼び、可能な組み合わせをすべて生成してみたところ、12 個の固有トポロジーがあった
    実際に試してみると安定していて、金属探知機にも使った — プロジェクトリンク

    • 「新しい」発振器とはいえ、実際にはすべて コルピッツ(Collpitts) 発振器の変形だ。100 年も前に研究済みの構造なので、謙虚さは必要だ
    • CS 専攻としては電子工学の入門レベルだが、なぜ文章が LC 発振器ではなくトランジスタ中心なのか気になった
    • すごい! Q ファクタ 基準で分類するとさらに面白そうだ
    • アプローチが印象的だった。リポジトリを眺めながらかなり刺激を受けた
    • Hacker News に投稿するといつもこうなる — 誰かが 知識で圧倒 してくる
  • 子どものころ電子工学を始めたとき、発振器を作るには増幅器を作る必要があり、増幅器を作るには発振器を作る必要があった
    7歳児の 野心は技術より大きかった。何度も試した末に、ようやく増幅器を発振しないように作れた
    抵抗のカラーコードの読み方も知らなかったのに、知っているつもりでいた

    • 「7歳の野心」という言い方がとても好きだ。絶対に失いたくない姿勢だ
    • ときどき私たちを止めるのは、「これは不可能だ」という 大人の理解 なのだと思う
    • 3歳児の「なぜ?」と 7歳児の野心を組み合わせれば、世界で最も生産的な天才が生まれるかもしれない
  • 記事に出てきた 電球(lightbulb) の話を少し説明したい
    発振器でクリーンな正弦波を得るのが難しい理由は ゲイン安定化 にある
    ゲインが低すぎると振動は消え、高すぎると飽和して高調波が生じる
    電球は短時間では線形抵抗のように、長時間では非線形抵抗のように振る舞う
    フィラメントが加熱されると抵抗が増えるので、これを使って 自己安定化発振器 を作れる
    電球を増幅器のゲイン調整抵抗として使えば、ほぼ完全な正弦波を得られる

  • 発振器とは単に 位相遅れ(>90度) の周囲にゲインをかけることだ
    問題は、それをどれだけ 予測可能で安定的 に作れるかだ
    外部要因(温度、電圧、時間など)への感度を下げるのが重要で、そのためには Allan Variance のような概念を参考にするとよい

    • 「残りのフクロウを描け」ミームのように、発振器作りは言うほど簡単ではない
      真空管の発明後も、安定した発振器を作るには長い時間がかかった
      最終的に成功した会社があり、それが Hewlett-Packard だった
  • 発振器の発明は実は 偶然の事故 だったと読んだことがある
    誰かが増幅器を作っていて入力と出力を誤って接続し、「ピーッ」という音を出してしまい、それが発振器の始まりだった
    当時は高周波を作るために AC 発電機を使っていたが、15kHz 程度が限界だった
    このミスから 正帰還 という概念が生まれ、その後に古典的な発振器回路が登場した

  • 言及されていない回路が 2 つある
    1 つは「Two Transistor Metronome」で、父と一緒に 7〜8歳のときに作った
    2 個のトランジスタが一種の SCR のように動作する リラクゼーション発振器 だ — 回路リンク
    Roland TB303 や Korg MS シリーズの発振器もこれに似た構造を使っている

    • 私が思い浮かべていたのは Astable Multivibrator だった。たぶん同じ回路だと思う
      一般には NPN トランジスタ 2 個を使うバージョンが多い — 参考リンク
  • ギターエフェクターをデバッグするために 信号インジェクタ を作ってみた
    Astable Multivibrator が高調波を出しすぎて、入力段でも聞こえるほどだった
    まるで Juggernaut のように信号を押し込む感じ だった
    フィルタを学ぶよいきっかけになり、最終的にはクリーンな正弦波を作れるようになった

  • 発振器が難しいのは、私たちが求める 精度(spec) が高すぎるからだ
    たとえば時計用発振器はたった 5 個の部品で構成されるが、1 日あたり 1 秒以内の誤差(100ppm)を要求される
    電力、起動、温度安定性など、すべての条件を満たすのは難しい
    単に振動だけ欲しいなら ノイズジェネレータ を作ればよい
    初心者にとって最も簡単な発振器は 555 タイマー だ。誤差は ±10% 程度あるが、大半の用途には十分だ
    555 はコンパレータ 2 個、分圧器、コンデンサで構成された単純な構造だ
    ただし現代の回路はより高速で高精度である必要があるので、初心者向けの記事なら 555 を中心に説明するのがよい

  • 音楽寄りの電子工学に興味があるなら、Moritz KleinYouTube チャンネル を勧める

    • リンクを見た瞬間に Moritz Klein だとすぐわかった