Google I/O 2026のChromeの新機能
(youtube.com)Chrome開発者デブレルチームを率いるPaul Kinlanが発表した今回のキーノートでは、この6か月でWeb開発環境に起きた急激な変化と、Chromeが準備中の新技術が幅広く取り上げられました。要点は3つの軸に整理できます。エージェント(AIアシスタント)がユーザーの代わりにWebを探索する時代に向けてサイトを準備すること、開発ツールが最新のWeb標準に追随できるようにすること、そして今後1〜2年のプラットフォームロードマップを先に共有することです。
WebMCP、エージェントがWebと対話する新しい方法
- 概念 WebMCPは、HTMLフォームとJavaScript関数をエージェントが利用できるツールとして公開する提案仕様です。サイトがエージェントに「ここで検索できる、カートに入れられる、決済できる」といった形で機能を伝える構造です。
- 動作方式 MCP(Model Context Protocol)のツール部分だけを取り入れ、別サーバーなしで現在のブラウザータブが直接ツール一覧を共有します。
navigator.modelContext.registerToolAPIで命令的な登録も可能です。 - 差別化ポイント ブラウザーコンテキスト内で実行されるため、ログイン状態、Cookie、ローカルストレージをそのまま利用できます。外部MCPサーバー方式では得にくい利点です。
- 現状 Expediaが「祖母の家の近くのホテルを探す」のようなシナリオで実験中で、Chrome 149(2026年6月2日予定)でOrigin Trialとして提供されます。
Modern Web Guidance、AIコーディングツール向けの最新Webガイド
- 問題認識 AIモデルは1年前のWeb知識で学習されている一方、Chromeは4週間ごと(まもなく2週間ごと)に更新されます。このタイムラグがコード品質を下げる要因だという認識です。
- 解決方法
npx modern-web-guidance installの1行で導入できるスキルパックとして、パフォーマンス・セキュリティ・アイデンティティといった上位領域と、100以上の具体的なユースケースに対する推奨パターンを提供します。 - Baseline連携 クロスブラウザー互換性の基準であるBaselineに合わせ、まだ広くサポートされていない機能についてはフォールバックとプログレッシブエンハンスメントまで案内します。Google Analytics連携により、実際の訪問者データに基づくBaselineターゲット設定も可能です。
Chrome DevTools for Agents、AIに開発者ツールを持たせる
- 提供機能 コンソールログ、ネットワークトラフィック、メモリトレース、アクセシビリティツリーにAIツールが直接アクセスし、パフォーマンスプロファイリングやLighthouse監査まで実行します。
- 追加されたもの DevToolsスキル、トークン節約型CLI、CI環境向けTypeScript API、実行中のChromeインスタンスへの接続、マルチエージェントワークフロー(複数のChromeを同時制御)、Chrome拡張機能の自動インストール・デバッグ機能が新たに追加されました。
プラットフォーム新機能、Baselineに加わった52項目
- View TransitionsとNavigation API ページ間の滑らかな遷移と統合されたナビゲーション状態管理が標準として定着しました。
- LoAF(Long Animation Frames) iOSユーザーを含むすべてのブラウザーでインタラクション性能の測定が可能になりました。
- 宣言的部分更新 JavaScriptなしでHTML断片を順不同でDOMにパッチできるため、遅いデータ領域を後から埋めるような最適化が可能です(Chrome 148)。
- Streaming HTML API
streamHTML,streamHTMLUnsafeにより、JSON変換なしで動的マークアップを注入できます。 - HTML-in-Canvas 標準DOMをキャンバス内にレンダリングし、3DゲームエンジンやPlayCanvas・Three.js環境でも検索・翻訳・アクセシビリティが生きたUIを実装できます。キーノート冒頭の3D寝室デモはこの機能で作られました。
デバイス内AI(Built-in AI)
- Prompt API Chrome 148でマルチモーダルをサポートし、画像分析と構造化JSON出力が可能です。英語以外にフランス語・ドイツ語・日本語・スペイン語へと言語対応が拡大しました。
- 今後 Gemmaモデルファミリーが導入されるとネイティブ関数呼び出しが可能になり、クライアントサイドで自律的に動作するエージェントを作れるようになります。Reddit、Drupal、Temuなどがすでにプログレッシブエンハンスメント方式で適用中です。
全体として今回の発表は、Webが「人が見て行動する媒体」から「エージェントに仕事を委ねる媒体」へ移っていく転換点を、モバイル移行よりはるかに速いペースで迎えているというメッセージを含んでいます。Chromeは一方でWebMCPによってサイトがエージェントに参加する入口を開き、もう一方でModern Web GuidanceとDevTools for AgentsによってAI開発ツールの品質を高めるという両面戦略を進めています。セマンティックHTML、アクセシビリティ、Baselineといった基礎に改めて忠実になるほど、エージェント時代のWebでも有利になるという視点は、華やかな新技術発表の合間でも一貫して強調されていました。
2件のコメント
Chrome がだんだん重くなっている気がします。
Prompt API に対するFirefoxの立場もあわせてご覧になるとよいと思います。 https://x.com/FirefoxWebDevs/status/2056382433516286173