16 ポイント 投稿者 GN⁺ 1 일 전 | 1件のコメント | WhatsAppで共有
  • 基盤モデルに単一機能を載せた AIラッパーの一時的優位 が消えつつあるなか、初期スタートアップはワークフロー全体とバリューチェーンを保有する垂直統合型ビジネスへ移行している
  • 1つ目の戦略は、ドメイン知識とタスクのオーケストレーション を組み合わせ、基盤モデルの生の知能だけでは得にくい業界現場の成果を生み出すこと
  • 2つ目の戦略は、既存企業にAIソフトウェアを販売するだけでなく、営業・審査・運用を 自動化中心で再構築 し、顧客体験まで改善するやり方
  • 3つ目の戦略は、断片化した業界データを統合する 記録システム を確保したうえで、業務処理や意思決定まで担う行動システムへ拡張すること
  • 大手既存企業はフロンティア研究所と直接協業できる一方で、コスト・独占的知識の共有・組織上の利害に制約があり、AIネイティブなスタートアップは 市場進出と顧客体験 に集中する垂直化で防御力を築ける

単一機能AIラッパーの台頭と衰退

  • ChatGPTの登場後、起業家たちはコピーライティング、顧客サービス、法務調査、営業のような人が担っていた個別作業にモデルを組み合わせ、サブスクリプション料金や作業対価を受け取る製品を作った
  • Jasper は2022年に企業価値15億ドルで1億2,500万ドルを調達したが、1年以内に2023年ARR見通しを少なくとも30%引き下げ、人員削減を実施し、共同創業者2人もそろって退任した
    • その後、ビジョンを「マーケティングOS」として再定義した
  • 単一タスクのツールを作った企業は、基盤モデルの機能が似た水準にとどまることを前提にしていたが、フロンティア研究所がモデルを直接プロダクト化したことでこの前提は崩れた
    • AnthropicはClaude CodeやClaude Designのように、2年前ならラッパーに分類されていたはずのツールを自ら提供している
    • 公開された数値によれば、Anthropicの年換算売上高は1月の140億ドルから5月には470億ドルを超え、企業需要が成長を牽引している
  • 特定の作業を意味する「AI for X」は、持続可能な製品戦略というより 一時的優位 に近かった
    • ネットワーク効果や垂直業界の専門性がない汎用エージェントもまた「ラッパー2.0」になり得る

生き残った企業はサービス全体を保有する

  • 成果を出す企業は、モデルの上にAIツールを載せる代わりに、AIを サービス提供のメカニズム とみなし、そのサービスに必要なワークフロー全体を保有する方向から出発している
  • EvenUp は汎用的な法務AIではなく、人身傷害という狭く専門的な分野から始めた
    • 2,000以上の法律事務所がプラットフォームを利用しており、米国の人身傷害分野トップ100法律事務所の20%が顧客である
    • ARRは前年比で2倍に増え、2025年10月には企業価値20億ドル超でSeries Eにて1億5,000万ドルを調達した
    • 企業価値は1年足らずで2倍以上に増加した
  • Further AI は保険、Blitzy はエンタープライズソフトウェア開発で同じアプローチを取っている
  • 競争力は、モデル・データ・ユーザー体験のどれか1つだけでは生まれない
    • 全体の ワークフロー、ドメイン知識、案件やコードベースごとに蓄積されるデータ、複雑な業界に参入して販売する能力が一体となって機能する必要がある
  • 以前は知能そのものが販売対象で、ラッパーは補助構造物だと見なされていたが、いまやワークフロー・データ・営業パイプラインを含む 工場全体がプロダクト になっている

アプローチ1:生の知能を超えて複雑なワークフローを保有する

  • Blitzy はFortune 500企業向けのカスタムソフトウェアを開発するAIプラットフォームで、最近、企業価値14億ドルで2億ドルを調達した
  • エンタープライズソフトウェア市場には2つの選択肢があった
    • CursorやCodexのようなツールを作り、大規模な外部委託開発人材に販売する
    • 外部委託人材そのものを不要にするよう、AIをサービスとして企業に直接販売する
  • Blitzyは後者を選んだ
    • 2024年には、OpenAIやClaudeのモデルがあらゆる問題を解決し、スタートアップが競争するのは難しいという見方があった
    • 実際の企業環境では、会社全体のコードベースに関する ナレッジグラフ、作業を小さな単位に分解する機能、各タスクに最適なモデルを呼び出すオーケストレーション層が、フロンティア研究所の製品より良い結果を生んでいる
  • コードベース周辺の文脈を把握するシステムにより、SWE-Bench Pro 66.5% を記録して首位に立った
  • 生の知能が中核的な工学・システム上のボトルネックを解消したとしても、それを業界の現場で機能するよう運用化する工程は依然として必要であり、ワークフロー全体の垂直統合がその役割を担う

アプローチ2:既存事業を自動化中心に再設計する

  • Tomo は住宅ローン事業者にAIソフトウェアを販売するのではなく、融資審査と住宅ローン取得プロセスそのものをAI中心で再構成している
  • 営業・審査・運用全般に 自動化 を適用し、融資担当者1人あたりの生産性を競合より高め、それを消費者にとってより良い金利へと結びつけている
    • 現在、住宅購入者の77%が従来の提供事業者よりもTomoでより良い金利を得ている
    • より良い金利を得た購入者の比率: {p:77}
  • 既存のワークフローにソフトウェアを差し込むより、業界を最初から再設計したほうが、より良い顧客体験につながる場合がある
  • 小幅なソフトウェア改善は、そもそもその技術向けに設計されていないシステムの中では影響が限定されることがある
    • 既存組織にワークフロー変更を説得する代わりに、事業そのものを直接再構築し、そのリソースを顧客体験の改善に使える
  • 既存企業は既存の事業モデルと組織を自ら破壊しなければならないため、この方式を選ぶ可能性はきわめて低い
  • SaaS時代には既存ワークフローの中へソフトウェアを導入する戦略が有効だったが、AIは伝統産業を自動化中心に再構築し、社内導入より顧客体験 に集中できるようにする

アプローチ3:記録システムから行動システムへ拡張する

  • Seso は、米国農業分野における人事の 記録システム を構築した
  • 米国の農業労働力の相当部分を支えるH-2Aビザ手続きは、法律事務所、Microsoft Office製品、紙の書類に分散していた
    • Sesoはこれを1つの中央データベースに統合し、農場が季節労働者を一般企業の従業員のように管理できるよう支援した
  • AI導入後、単なる「デジタル書類棚」から 行動システム へ転換した
    • 従業員のロジスティクスを管理し、事業インサイトを生成し、労働関連の意思決定まで行えるようプラットフォームを再整備した
  • 記録システムを確保した企業は、蓄積した情報をもとに実際の作業を遂行するシステムへと拡張できる
  • 同じアプローチの事例として、レクリエーション分野の Rec と長期医療分野の Veras がある

既存企業とAIネイティブサービスの競争

  • 大手法律事務所のような既存企業は、AIネイティブ競合に内部の専門知識を渡さず、フロンティア研究所と直接協業して自動化を内製化できる
    • Freshfieldsはカスタムツール開発のため Anthropicと提携 した
  • この戦略はBig Lawや主要金融機関のような大規模企業に主に開かれているが、それらにとってもフロンティア研究所との協業コストは過大になり得る
    • UberやMicrosoftの事例のようにLLMのトークンコストは増大しており、高額なAIエンジニアのコストも加わる
  • 協業が成り立つには、業界の既存企業が長期価値の限られる可能性がある独占的知識を隠そうとする姿勢を和らげ、フロンティア研究所が 価格決定力 を過度に行使しないことが必要である
  • 合意しても、自動化は既存企業が担う多くの機能の1つにすぎず、中核事業の焦点ではない
  • AIネイティブサービスは、フロンティア研究所への依存を相対的に減らし、市場進出(GTM)と顧客体験の改善に集中できる
  • Tomoは、従来の住宅ローン事業者がフロンティア研究所と協業したとしても、より安価で簡素な顧客向け選択肢であり続ける
    • この選択肢は既存企業の利害と直接衝突するため、競争をなくせはしなくても、その範囲を制限し得る

AGI時代を見据えた垂直化

  • 次世代スタートアップは、「バリューチェーンのあらゆる部分をどう保有するか」を中心に事業を設計すべきである
  • 垂直的思考 は、AGI移行期にも維持できる防御力の1つである
    • 生の知能が新たなイノベーションを可能にしても、それを実運用に適用し、顧客へ届ける工程は依然として必要である
  • 初期から業界全体とワークフローを保有した創業者は、AIハイパースケーラー時代にも持続可能なポジションを築ける
  • バイオやディープテックのように実行そのものが高度に専門化された分野では、専門的な実行力が別個の 参入障壁 として残る

1件のコメント

 

垂直化が防衛線だという大きな見取り図には共感します。ただ、「ラッパーかどうか」を分ける軸は機能の厚みというより、その下にモデルが持てない何かが積み上がるかどうかのように思います。記事の3つの戦略(ワークフローを所有する、あるいは自動化中心に再設計する、あるいは記録システムを行動システムへ広げる)は、結局どれもモデルの外に蓄積される状態とデータを作る話として読めました。

私も見た目には薄いラッパーに近いものを作ってみたことがありますが、生き残るのは機能ではなく、ユーザー固有の状態とデータを所有する部分、そしてモデルが会話ごとにぶれないよう決定論的に計算し記憶する層でした。フロンティアモデルが良くなるほど、むしろこの2つの価値は大きくなると思います。

1つ付け加えるなら、記事は主にエンタープライズの垂直領域(B2B)を例にしていますが、個人向けにも同じ論理が通じるように思います。生のLLMは公開情報しか見られず、私の状態を記憶できないので、個人の記録システムを握ること自体が堀になります。ただ、3つ目の戦略で記録システムを行動(意思決定の代行)へ渡す区間は、その意思決定が再現または検証できるかどうかも伴わないと、信頼は維持できない気がします。