- Oblivionのリマスター発売により、19年前のRadiant AI技術が再び話題になっている
- BethesdaはこのAIがNPCの自律的な行動と現実感のあるスケジュールを提供すると約束したが、実際の実装は限定的だった
- 事前公開、E3デモ、ファン向けインタビューなどで、誇張された宣伝と実態のあいだに乖離が生じた
- 実際に実装されたシステムは目標ベースのAIパッケージ体系であり、複雑な欲求や真の自律性よりも、スケジュール中心の行動を設計するものだった
- リマスターをきっかけに、ゲームAIの発展史と限界をめぐる議論が広がっている
序論: Oblivionリマスターとレガシー
- The Elder Scrolls IV: Oblivion Remasteredの発売により、Bethesdaの古典RPGへの関心が再び高まっている
- リマスターではUnreal Engine 5を用いてグラフィックと一部UIが全面的にアップグレードされたが、実際のゲームエンジンとコンテンツは2006年の原作構造をそのまま使っている
- Oblivionは当時の基準で最も野心的なオープンワールド、革新的なNPC AI、そして完全な音声吹き替えを備えた作品として大きな期待を集めた
- 主な関心事はBethesdaが宣伝していたRadiant AIであり、NPCが実際の世界のように行動するという約束だった
- この記事では、この技術の実際の内容、実装方式、約束と現実の差、そして現在の位置づけまでを探る
Morrowind時代: それ以前のBethesdaのAI環境
- Morrowindは手作りのワールドに重点を置いていたが、決められたスケジュールやAI行動はほとんど存在しなかった
- NPCは主にその場にとどまり、プレイヤーと相互作用するときにだけ行動を変えていた
- Ultima、Arcanum、Gothicなど当時の競合作は、すでにスケジュールベースのNPC行動を提供していた
- Bethesdaはこうした限界を、Oblivionでの革新的なAIシステムによって補おうとした
約束: 事前プロモーションとE3デモ
公式記事と宣伝での発言
- Bethesdaは2004年からメディアに対し、Oblivionには1,000人のNPCがそれぞれ独立した目標とスケジュールを持つと紹介していた
- 各NPCに「目標」が与えられ、それを自らさまざまな方法で達成する点を強調していた(例: 金がなければ食べ物を盗む、狩りをする、あるいはプレイヤーから盗む)
- NPC同士の非スクリプト会話や自由な日常生活も、約束された要素に含まれていた
E3 2005デモ
- Todd Howard自身が進行したデモでは、NPCが弓術を練習し、必要に応じてポーションを使い、さまざまな行動を自律的に行う例が示された
- NPCが必要に応じて食べ物を買う、盗む、農業で得るといった行動シナリオも披露された
- このデモは、各NPCがAIによって自動的に動機や行動方式を決めているという印象を強く与えた
ファン向けインタビューと開発者の説明
- 公式フォーラムやAMA(Ask Me Anything)で、開発チームは「目標-ルールベースの人工知能」であることを強調した
- デザイナーが目標や特性(責任感、攻撃性、自信など)を設定すると、状況に応じて行動が変化するシステムだと説明した
- 開発テストの過程では、AIがあまりに賢く動作してクエストのバランスが崩れたり、予測不能な行動(殺人、詐欺)が発生したりしたという逸話も伝えられている
未確認の引用とAI問題の事例
- ファンコミュニティでは、テスト中にNPCたちが必要アイテムの強奪、衛兵の職務放棄、店の略奪など意図しない行動を見せたというさまざまな話が広まった
- 開発側は、こうしたAI機能をトーンダウンしたり、個別NPCの設定を調整したりすることで、ゲームプレイの安定性を保とうとした
発売と反応
- Oblivionは商業的に大きな成功を収めたが、発売後にはAIの約束と現実の乖離に対する批判も続いた
- 複雑なNPC行動よりも、実際には反復的で単純なパターンや会話が目立ったという指摘が多かった
Radiant AIとは何だったのか?
- Radiant AIは、今日の生成AI、LLM、ニューラルネットワークなどとは無関係で、目標/ルールベースの伝統的な非リアルタイム人工知能システムである
- 実際には単一の技術的構造ではなく、拡張されたキャラクターシステム、AIパッケージシステム、会話システムなど複数機能の統合概念だった
- パッケージシステムこそが実際の中核であり、NPCのスケジュールと行動パターンを駆動する役割を担っていた
キャラクター特性と行動変数
- Oblivionのすべての**NPC/クリーチャー(アクター)**は、プレイヤーと似た能力値、インベントリ、スキル、所属などを持つ
- 最も重要なAI属性としては:
- Disposition(好感度): 他のキャラクターに対する親和/敵対の数値で、行動に影響する
- Aggression(攻撃性): どの程度敵対的になりうるかを決める
- Confidence(自信): 戦闘中にいつ逃げるかを決める
- Energy(活力): Wanderなどの移動行動の頻度に影響する
- Responsibility(責任感): どの程度法を守るか、犯罪行為への態度を決める
- OblivionのNPCには実際のThe Sims風の欲求(空腹/睡眠など)は存在しない。『スケジュールに従って行動はするが、それを守らなかった場合のペナルティや真の自律的欲求はない』ことが限界だった
AIパッケージシステム
- 各NPCには1つ以上のパッケージが割り当てられ、行動様式とスケジュールを持つ
- パッケージの種類はTravel(移動)、Wander(ランダム移動)、Find(対象/アイテム探索)、Eat(食事)、UseItemAt(アイテム使用)、Sleep(睡眠)など多様である
- FindやEatなど一部のパッケージは、Responsibility属性に応じて犯罪(窃盗、略奪)を引き起こすことがある
- 実際に多くの予想外のAI逸話(店の略奪、狩り、NPC同士の戦闘など)は、このパッケージと属性の組み合わせから生まれた
AIパッケージのスケジュール/条件
- 各パッケージは有効化可能な時間割と条件式を持ち、スケジュールやゲーム状況に応じて自動的に切り替わる
- 条件は、さまざまなアクター/ワールド/プレイヤー状態の関数値の組み合わせと比較で表現され、NPCの複合的なコンテキストベース行動を可能にするよう設計されている
- これにより、デザイナーは複雑なスクリプトなしでも一定の生活パターンを設計できるという利点があった
結論
- Radiant AIは、Bethesdaが現実感のあるゲーム世界と自律的なNPCを約束しながら打ち出した主要な技術スローガンだった
- 実際の実装は目標-ルールベースのAIパッケージシステムであり、決められたスケジュールと条件のもとでNPCがさまざまな行動を見せるよう設計されていた
- 内部テストでは驚くほどの自律性や予測不能な行動も多く見られたが、最終版ではプレイヤー体験とバランスの問題によりかなりの部分が制約または調整された
- 発売後も、このシステムの限界や実際の動作方式については、ファンやモッダーのコミュニティで議論が続いている
- Oblivion Remasterによって、Radiant AIのようなゲームAI技術の発展と限界、ゲームデザインにおけるバランスの問題が再び注目を集めている
1件のコメント
Hacker Newsの意見
Radiant AIに最も近い実装はDwarf Fortressだと思う。このような完全に目標指向で予測不能なゲームAIシステムは、ストーリー主導のゲームプレイと衝突する。ストーリー中心のゲームでは結果が決定論的である必要があり、プレイヤーが主人公であるべきだ。一方でDwarf Fortressにはあらかじめ定められたストーリーも、守るべきプレイヤーキャラクターもない。砦全体がばかげるほど予測不能な出来事で全滅すること自体が大きな面白さだ
Songs of Syx on Steam
essentialフラグを使って、プレイヤーが直接殺さない限り事故では死なないようにもできる。Radiant AIもストーリー上重要なNPCには適用しなければよい。Bethesdaのゲームは、実のところメインストーリーが最大の強みというわけではないskooma商人NPC殺害の逸話への反論に触れるなら、重要なディテールが欠けている。すべてのスクゥーマ中毒者が小屋の中にいるわけではない。ワールドマップには、街のあいだを行き来しながら小屋を探す2人のNPCが別にいる。ところがバグでこのNPCたちが誤った派閥に設定されていて扉を通過できず、プレイヤーが扉を開けてやらない限り、一生外でスクゥーマばかり飲むことになる
関連Wikiリンク
Starfieldを遊んでみて、もうBethesdaが何か特別なものを見せてくれるという期待はなくなった。Oblivionの頃からStarfieldに至るまで、独特の面白さのためにリスクを取る小規模開発会社の感じから、無難で予測可能なAAAスタジオへと変わってしまった。Radiant AIも「無限反復クエストでX * Yのコンテンツを作る」ための小技にしか使われておらず、本来の目的は世界に生命を吹き込むことだった。同じ発想を見たいならDwarf Fortressを勧める。DFの世界には、プレイヤーが入る前から数千回のRadiant AI的な相互作用でできた歴史があり、その後でプレイヤーが世界の一部になる。ここにLLMベースのキャラクターや会話が加われば、もっと生きている感じを出せると思う
BethesdaファンとしてFalloutとSkyrimで何千時間も遊んだ立場から、この投稿はとても面白く読んだ。特にさまざまな状況で実際にNPCを作ってテストするアプローチが良かった。最近になって初めてOblivion Remasterを遊んでいるが、NPCの相互作用や生き生きした感じは続編より好みだ。Todd Howardが語っていた、戦闘中に短剣を拾って相手に立ち向かう場面は、実際のゲームではスクリプトなしでは不可能だという説明にも同意する。とはいえFallout 3で似たことを見たことがある。Megatonの自宅(別cell)に隠しておいた武器がNPC絡みの出来事で影響を受け、結局家を変えるMODを入れ、G.E.C.K.を学んで修正するきっかけになった
Gothicを遊んでいたとき、野外で死にかけたところに主要NPCが偶然現れて獣を倒してくれたのを覚えている。そのNPCは毎日2つのキャンプのあいだを往復しており、たまたまその位置にいたので介入した。AIが本当に印象的で、同時に一定範囲に入ると現れて相互作用する形でもあった。Radiant AIもこういう形で作ってほしかったと思った
「全員が盗みをして投獄または死亡する」というRadiant AI初期の逸話を聞いて、次の特性は相反すると感じ始めた:
– 常に十分面白いキャラクターが存在していなければならない
– ライブシミュレーション+emergent behaviorによってキャラクターが消えうる
– 誰も新たに町へ来たり出て行ったりしない
この記事を読んで、最新AIとオープンワールドシミュレーションの組み合わせが気になってきた。単にグラフィックがきれいなだけでなく、実際に推論するNPCが出てくるようなものだ。たとえばWorld of Warcraftの宿屋NPCとエールの値段を値切るようなやり取り。ぜひ見てみたい
Radiant AIという言葉は、2005年ごろのOblivionのマーケティングで覚えている。私にとってもそれだけ印象的だった。ハイプもあったし失望もあったが、もし本当に実現していたらとてもクールな機能だっただろうという惜しさも残っている
本当に見事に調査された興味深い記事だ。著者がこれだけ膨大な調査をしてくれたことに感謝したい。Todd Howard特有の「現実歪曲フィールド」をはがし、有名だったE3 2005デモから実際の発売版までどう変わったのかが分かる