2 ポイント 投稿者 GN⁺ 2025-08-25 | 1件のコメント | WhatsAppで共有
  • Valve は伝統的な管理構造のない フラットな組織文化 を志向している
  • 新入社員は プロジェクト選択と仕事の進め方 を自ら決める文化に適応する過程が必要になる
  • ハンドブック は実務のコツよりも、Valve の基本原則と 意思決定時に考慮すべき点 を中心に説明している
  • 採用 は会社の未来を左右する最も重要な仕事と評価されている
  • Valve は革新的で 主体性のある人材 が自由に力を発揮できる環境づくりを目指している

はじめに

Valve は 1996 年の設立以来、優れたゲーム開発 を目標に掲げ、その成果を生み出せる特別な 労働環境 をまず構築することに重点を置いてきた。社員が持つアイデア、才能、エネルギーこそが Valve の未来を照らす中核的な要素である。このハンドブックは Valve の主要な原則を要約し、新たに加わるメンバー全員への案内役となるよう構成されている。

この本の使い方

このハンドブックは 福利厚生 や業務用 PC のセットアップのような実務マニュアルではない。Valve ならではの 直感的ではない働き方 と、主体的に作り上げていく選択肢、そしてその選択過程における 考え方 を案内する。追加の実務情報は社内イントラネットで確認できる。

この本はイントラネット上で修正・改善可能なオープンな形で提供されており、新入社員は読後に適切だと思う内容を追加したり、意見を出したりできる。

Valve 入門

初出勤

Valve への参加を歓迎する。ここではこれまでの会社とはまったく異なる 革新的な働き方 を体験することになる。このハンドブックは、新しい環境にスムーズに適応できるよう、既存社員の経験をもとに作成されている。

知っておくべき Valve の特徴

  • Valve は外部資本の調達を行わず、自社資金で運営 されており、それによって会社運営と事業の進め方において大きな 自由度 を確保している
  • 知的財産権 を自ら保有している。Half-Life の発売後に自ら IP を確保したことで、製品に関する 意思決定 において独立性を得た
  • Valve はゲーム会社であると同時に、エンターテインメント、ソフトウェア、プラットフォーム へと拡張し、多様な方向で 製品および事業の多角化 を進めている
  • その中心には情熱的な人材がおり、彼らが多様な役割とイノベーションを主導している

フラットな組織(Flatland)

Valve には役職や管理職がなく、誰も誰かに 直接報告しない 構造がある。会社の 創業者であり代表 はいるが、その人ですら上司ではなく、会社全体の運営に対する主導権 は社員一人ひとりにある。すべての社員は プロジェクトを承認 したり、製品をリリースしたりする権限を持つ。

フラットな構造は 顧客価値の創出と迅速な意思決定 を可能にする一方で、すべての社員に 高い責任感 を求める。採用が重要な理由も、新たに加わる人材が会社全体の運営まで責任を担える能力を持っているかを見極めるためである。

移動できる机

社員の机に付いた 車輪 には、物理的にも象徴的にも、いつでも自分がより価値ある貢献をできる場所へ移動すべきだという意味が込められている。個人単位でもチーム単位でも机は頻繁に移動し、仕事にとって最も有益な同僚の近くで協業できる。

そのため社内で人を探しにくいこともあり、現在の机の位置を確認するインターネットシステム も用意されている。

適応の過程

最初の 1 か月

机の場所を決め、基本的なオフィス環境に慣れたら、次に自分の 仕事の選択 が中核的な課題になる。この過程では、Valve 内のプロジェクト運営の方式、協業の構造(カバル・チーム)、そして製品リリースの流れを学ぶことになる。

自分で仕事を選ぶ

Valve では仕事の 100% が 自ら選んだプロジェクト で成り立っている。各社員は、掘り下げる価値のある仕事、自分の強みが最も生かされる仕事、会社や顧客にとって意味のある仕事を自発的に選んで参加する。

他の誰かが 仕事を割り当てることはなく、社員一人ひとりが直接のステークホルダーとして主体的に業務を決める。

プロジェクト情報の把握とコミュニケーション

進行中のプロジェクト状況には公式の一覧が存在するが、最も効果的な方法は他の人との 直接の会話 である。自分が関心を持つ分野や今考えていること、経験なども自然に共有しながら、同僚に自分を知ってもらい、相互の情報共有を促進する。

社内で 会社やプロジェクトの状況をよりよく共有できる方法 があるなら、自ら提案して実行に移すこともできる。

短期 vs. 長期目標

各自が仕事の優先順位を自律的に設定していると、短期的で測定可能な成果 に集中する傾向が生まれる。しかし、短期成果のみに偏ると長期的な変化や機会を逃すおそれがあるため、長期的な目標 にも努力を振り向けるべきだと強調されている。

多様な意見に耳を傾ける

経験の長い同僚から特定のプロジェクトに関わるよう 助言を受けたとしても、自分の主導権を失わず、多様な意見に耳を傾け、より多くの人との議論へ広げることで 意思決定の幅を広げる 必要がある。最終結果の責任者は自分であり、究極的には 顧客の利益 が最優先である。

1件のコメント

 
GN⁺ 2025-08-25
Hacker Newsの意見
  • Chet Faliszekが明かしたところによると、Valveのハンドブックは実際には従業員に配布されたものではなく、会社のPRと採用を目的に作られたものだった
    • ハンドブックで語られている原則が、少なくとも一時的にでも守られていなかったとは信じがたい。ウェブサイトにも公開されているのだから、その主張の出典を見たい。非階層的な構造はしばしば内部の権力闘争や操作に弱いため、実際にそのシステムが持続したのか疑わしい。参考までに『Structurelessnessの専制』(https://www.jofreeman.com/joreen/tyranny.htm) もそうした事例だ
    • Chet Faliszekがそう言ったという信頼できる出典を見つけられない。Google検索結果でもそのような直接的な発言は見当たらなかった
    • ハンドブックが最初に出たときは、ステルスマーケティングに慣れておらず見抜けなかった。賢い人でも広告の影響はあまり受けないと言われるが、実際にはターゲットグループごとに反応は異なり、このハンドブックはRedditの嗜好に絶妙に合わせられたキャンペーンだ
    • たとえこれが従業員に公式配布されていなかったとしても、入社前の応募者向けに公開されていたのなら、本質的に大きな違いがあるのか気になる。もし会社がハンドブックとまったく異なる形で運営されていたなら大問題だが、実際には書かれている内容はかなり正確なのではないかと思う
    • 実際に従業員へ配布はされたが、本来の目的はリクルーティングツールだった。内部でわざとリークされるように進め、その後ホームページにも公式掲載した
  • Valveは1st partyゲームコンテンツの生産を減らしているとよく批判されるが、Steamはゲーマーコミュニティ全体で見れば大きなプラスの効果をもたらしたと思う。オープンさゆえに混乱や問題も生じたが、全体としては肯定的だ。Steamが取る30%の手数料も、開発者と市場に提供する価値に照らせば正当だと思う。パートナー企業から尊重され、協力関係を築けるのが大きなメリットだ。Netflixのように、すべてを一か所で管理できる体験を提供しており、EAのような大手デベロッパーも再びSteamにコンテンツを戻している。HL3と一貫したゲーミングエコシステムのどちらか一方を選べと言われたら、後者を選ぶだろう
    • 今後が心配だ。Gabeがいなくなったあと、PCゲーミングがSteam中心の独占的構造に完全に縛られたまま残るのではないかと懸念している。もしSteamが月10ドルの料金を取ると言い出しても、すでに買ったゲームのために多くのユーザーが嫌々従わざるを得ないだろう。なぜSteamだけがデジタル所有権の危険性に関する議論で常に例外扱いされるのか不思議だ
    • Steamは競争を抑圧しないプラットフォームだ。デベロッパーは自分でゲームを販売できるし、他のプラットフォームにも出せる。それでもゲーマーたちはSteamの利便性とユーティリティを踏まえて使い続けている。独占的な市場支配で締め付けているのではなく、ユーザー自身の選択の結果だ
    • 消費者の立場からは同意するが、開発者の立場では30%のコミッションは非常に重いコストだ。たとえば10万本を10ドルで売れば売上総額は100万ドルになる。VATと返金(16%)を除くと84万ドル、Valveが30%取ると58.8万ドル、パブリッシャーが投資回収後に38.8万ドル、そのうち半分の19.4万ドルしか受け取れない。税金を払えば純利益は約15.5万ドルしか残らない。パブリッシャーがマーケティング費用なども追加で回収すればさらに減る。Valveは決済と配信だけで25万ドル以上を持っていき、Steam自体は独自にマーケティングもしてくれない。こうした構造は小規模開発会社にとって非常に非効率だ
    • Steamの30%手数料が正当だという意見は十分に論争の余地がある。Steamは多くの面で、開発者たちが自ら市場を作り、Steamをマーケティングしてくれたおかげで成長したとも言える。Steamは特別な露出を提供せず、すでに外部で十分に人気を集めた場合にだけ、Discovery Queueのような発見機能で扱ってくれる。なお、リテール時代のほうがむしろスタジオの収益率が高かったというTim Sweeneyの発言もある (リンク)。Steamはすべてのゲームから無料でマーケティング効果を得ながら、実質的なマーケティングや初期ユーザー流入を直接支援しない。一方で手数料は30%だ。Amazonのように推薦リンクを用意するわけでもない。この点にはかなり失望している
    • HL3とエコシステムが二者択一のように語られるのは興味深い。HL3開発チームが独立スタジオのように、Valveの資金支援を受けつつSteamプラットフォームを活用する形も可能だろう。十分な収益が出るなら何が問題なのかわからない
  • Valveハンドブックの翻訳版は こちら で見られる。HNでも以前に何度も議論されており、(2012年4月、2014年12月、2015年3月、2016年7月、2018年9月、2022年10月など) その議論リンクも残しておく
  • 「最も賢く、革新的で、才能ある人たちを採用して、ただ言われた仕事だけを座ってやらせるのは、彼らの価値の99%を破壊するようなものだ」という一文は、自分には現実味をもって響く。なのに、なぜ他の成功した会社は逆のやり方に固執するのか不思議だ
    • 賢くて才能があるからといって、自律的に協力する能力が自動的に備わるわけではないからだ。よい構造は、それぞれの強みを最大限に発揮できるよう助ける役割を持つ。自律的な人々であっても、必ずしも同じ目標に向かって動くとは限らないので、構造は必要だと思う
    • 大企業も実際にはそうした見解に同意していない。競争相手になり得るスタートアップを買収したり、チームごとacquihireしてリスクを先回りで潰すことが多い
  • Valveハンドブックは理想的な経営事例としてよく語られるが、実際にはValveが最近生み出しているものはそれほど多くないように見える
    • 自分は今、どんなPCゲームでも自由に楽しめていて、Windowsは使っていない。ValveのおかげでLinuxゲーミングが現実になった
    • ValveのProtonのおかげでLinuxでゲーム環境が整った
    • 毎日のようにProtonを使っているが、新作MOBAのDeadlockにも触れておきたい。オリジナルのDOTA以来、これほど新鮮で面白いと感じたMOBAは初めてだ
    • 重要なのは、独占的地位を持って市場を左右できる構造を作り上げたことだ。ValveはSteamでそれを成し遂げた。内部的にどれほど非効率なビジネス慣行があっても、金が入り続けるなら何の問題もない。多くの人がValveのフラット構造をまねすれば成功できると勘違いしているが、実際の成功要因はそこではない
  • 良いハンドブックや従業員向けガイド文書の事例を探していたが、Valveのものは哲学的な内容が多く、実際にはリクルーティングツールとして言及されることが多いというのは理解できる。もしおすすめの事例があれば共有してほしい
  • 続編(2012年以降)があるなら、Valveのプロセスがどう進化したのか分かって面白そうだ
    • これは結局PR用だった
    • これが一度きりの単発プロジェクトだったという話をどこかで聞いた気がするが、確かな出典は覚えていない。さっき別のコメントで触れられていたChet Faliszekが、その情報源だったのかもしれない
  • ゲーム開発業界でワークライフバランスや子ども・家族に関する議論がここまで多く出てくるのは意外だ。Valveがもともとそういう企業なのか、それとも相対的にそう見えるのか気になる
    • ゲーム業界は本当に給与も低く、労働環境も厳しい業種だ。FAANGの1/5水準、一般的なソフトウェアエンジニアの半分水準だ。Epic Gamesなど一部を除けば、競争力のある給与を出すのはごく少数しかない。しかもクランチや雇用不安などストレスも大きい。プロジェクトが終われば解雇されることも珍しくない。Valveは500人未満の小規模企業なので、業界の人材にとっては一種の夢の職場だ。大手と比べても従業員数が非常に少ない。(インディーゲーム会社勤務)
    • Valveは普通の会社ではない。莫大な利益を上げ、外部投資なしでその利益をすべてR&Dに再投資し、小規模で運営している。完全にフラットな経営構造まで備えている。よく稼ぐ小さな会社が福利厚生をすべて手厚く整えている典型例だ
    • 2012年ごろには、Valveはすでにゲーム開発からサービス企業へと重心を移しつつあった。その時点で主要なヒット作はすでにほぼ出そろっており、その後に新たに出たのはHalf-Life: Alyx(2020)、Counter-Strike 2(2023)、Deadlock(TBA)くらいだ
  • Valveは「フラット構造(Flat)」として公式には管理体制がないと言うが、実際にはプロジェクトリードが自然に生まれ、全体情報を集約し、全員がそのリソースを共有する構造になっている。リードはマネージャーではないが、事実上は中核的な技術管理の役割を果たしている。創造的な土台を作りたいのは理解できるが、結局これは一般的なマネージャーの中核的役割そのものだ
    • フラット組織に対する代表的な批判は、どうせ管理体制は自発的に生まれ、最終的には誤った形で固定化されるということだ。古典的なエッセイ『Structurelessnessの専制』がこの点をうまく説明している (リンク)
  • 「私たちは、Gabe Newellのために金を生み出す神聖なSteamという機械を守る神官だ。これを理解できない人は雇うな」と一文に要約することもできただろう。シリコンバレー企業もValveから学ぶべき点は多い