- 過去2年間の1億8,000万件のグローバル求人公告を分析した結果、全体の公告数は前年比8%減少
- 最も大きな減少幅を示した職種は、コンピュータグラフィックスアーティスト(-33%)、ライター(-28%)、写真家(-28%)などのクリエイティブ実務職
- 一方で機械学習エンジニア(+40%)、ロボティクスエンジニア(+11%)、データセンターエンジニア(+9%)などのAIインフラ関連職は急成長
- メディカルスクライブ(-20%)とサステナビリティ・コンプライアンス関連職(-25%〜-37%)は急速に減少する一方、ソフトウェアエンジニアリングとカスタマーサービスは安定を維持
- 全体としてAIの影響は選択的であり、単純な実行型業務は減少し、戦略・リーダーシップ中心の役割は維持または成長傾向
求人公告全体の推移
- 2025年の求人公告総数は2024年比で8%減少し、Indeedの米国内7.3%減少という数値と類似
- この数値は市場全体のベースラインとして使われ、個別職種の増減率を比較する基準となる
- AIが全体減少の原因だと断定するのは難しいが、市場平均に比べて急激な変動を示す職種ではAIの影響がはっきり現れている
クリエイティブ職の減少とリーダーシップ職の違い
- コンピュータグラフィックスアーティスト(-33%)、写真家(-28%)、ライター(-28%)、**記者(-22%)**など、クリエイティブな実務職が大きく減少
- グラフィックアーティストは2年連続で減少(2024年 -12%、2025年 -33%)
- 一方でクリエイティブディレクター、プロデューサー、マネージャーなどの戦略・企画中心の役割は比較的安定
- ユーザーリサーチやクライアントフィードバックの解釈など、複雑な意思決定を要するデザイン職は減少幅が小さい
- 結論としては、「クリエイティブ職全般」ではなく「クリエイティブ実務職」中心の減少という現象
コンプライアンスおよびサステナビリティ職の減少
- 企業コンプライアンス専門家(-29%)、サステナビリティ専門家(-28%)、**環境技術者(-26%)**など、規制関連職が急減
- サステナビリティマネージャー(-35%)、ディレクター(-31%)、最高コンプライアンス責任者(-37%)など、組織のあらゆる階層で減少
- 一方で貿易コンプライアンス専門家は**+18%増加**し、関税関連の課題に伴う成長として言及されている
- これらの職種群はAIよりも規制環境の変化の影響を受けたと説明されている
メディカルスクライブ職の急減
- メディカルスクライブ(Medical Scribe)の求人は2025年に20%減少し、関連職種と比べても大きい
- 医療コーダー(-0.02%)、医療アシスタント(-6%)と比べると差が明確
- AI文書化ツールが患者との会話記録を自動生成することで、代替可能性が指摘されている
- ただし2023〜2024年は-2%の減少にとどまっており、長期トレンドを判断するにはまだ早いと評価されている
AIおよび技術インフラ職の成長
- 機械学習エンジニアは2025年に**+40%増加**し、2024年の+78%に続いて2年連続の急伸
- ロボティクスエンジニア(+11%)、リサーチ/応用科学者(+11%)、**データセンターエンジニア(+9%)**など、AIインフラ職全般が成長
- 企業はモデル開発(Researcher)、配備(ML Engineer)、物理的応用(Robotics)、インフラ(Data Center)の人材をいずれも拡充中
リーダーシップ需要の強化
- シニアリーダーシップ(-1.7%)、マネージャー(-5.7%)、**個人貢献職(-9%)**となっており、職位が高いほど減少幅が小さい
- 上位10の成長職種のうち半数がディレクター級以上
- 例:データエンジニアリングディレクター(+23%)、副社長(Engineering VP, +12%)
- AIツールの活用により、リーダー自身が直接プロトタイプを作成したり、意思決定の効率を高めたりする事例も登場
マーケティング職の変化
- マーケティング職全体は市場平均並みだが、インフルエンサーマーケティング専門家は**+18.3%増加**
- 2024年にも+10%増加しており、2年連続で成長
- ブランドへの信頼低下とAI生成コンテンツの拡散の中で、人間中心の信頼ベースのマーケティングが強い
- 専門家の引用によれば、インフルエンサーは「信頼できるオンライン上の友人」と認識され、ブランド接点の中核チャネルとして浮上している
ソフトウェアエンジニアリングの安定
- 2025年のソフトウェアエンジニアリング職は前年比で大きな変化なし
- **AIコーディングツール(Copilot, Codex, Claude Code など)**の普及にもかかわらず、生産性向上効果が代替を相殺
- ただしフロントエンドエンジニアリングは相対的に減少しており、簡単なWeb・アプリ作成ツールの普及の影響の可能性が言及されている
- 全体としてソフトウェアエンジニアは依然として安定した職種と評価されている
カスタマーサービス職の維持
- カスタマーサービス担当者は**-4%減少**で、市場平均(-8%)より良好
- AIチャットボット導入事例(Klarna など)があるにもかかわらず、共感や判断が必要な業務では人間の対応が引き続き必要
- 誤ったAI応答による企業イメージ毀損の事例も言及されており、完全代替は進んでいない
営業職の混在した傾向
- 全体として営業職は市場平均より良好で、一部は成長傾向
- アカウントマネージャー(+1.6%)、営業ディレクター(+2.5%)、レベニューディレクター(+10.2%)
- レベニューディレクター(Director of Revenue)は最も成長が速い営業職で、データ駆動型の収益最適化を担う役割として浮上
- **営業オペレーション専門家(-8%)**は減少しており、AIツールがデータ中心業務の一部を代替する可能性が言及されている
- GTMエンジニアはサンプル不足のため除外されたが、年間205%成長で急速に拡大している
結論
- AIは大規模失業を引き起こしてはいないが、特定の職種群には選択的な影響を与えている
- クリエイティブ実務職、メディカルスクライブ、規制関連職は減少する一方、戦略・リーダーシップ・技術インフラ職は成長
- クリエイティブ職は戦略と実行へ分化し、マーケティングはインフルエンサー中心に再編され、組織はリーダーシップ強化・中間管理縮小の傾向
- フロントエンドの単純業務の商品化と、バックエンド・AIインフラの価値上昇が並行して進行
- 今後2026年にもこうした職種の二極化傾向が続くかどうかが主要な観察ポイントとして示されている
研究方法論
- Revealeraのグローバル求人データを基に650の標準化職種群へ分類
- Amazon Mechanical Turkを活用して数百万件の求人をラベリングした後、機械学習モデルで全1億8,000万件を分類
- データは企業の公式Webサイトから直接収集され、重複を最小化し、業界・規模・地域の多様性を確保
- Sentence Transformer(all-mpnet-base-v2) ベースの埋め込みとランダムフォレスト分類器を組み合わせた教師あり学習パイプラインを構築
- 2023〜2025年(1〜10月)期間の職種別増減率を比較し、AI影響の可能性分析を実施
4件のコメント
求人件数も重要ですが、同じ職級における給与の増減も重要だと思います。いずれにせよ、グラフィックアーティストが有意に減っているのを見る限り、動向はおおむね合っているように見えますね。
ジュニアは目に見えて減ったと実感しますが、関連する統計もあるといいですね。本文でも上位職級ほど増えたと言及されていますし。
Hacker Newsの意見
レポートでは 職種ごとの件数変化 が完全に抜け落ちている
たとえば ML エンジニアの求人が 200件から280件へ 40% 増え、ライターの求人が2万件から1万件へ 50% 減ったのだとしたら、影響ははるかに明確になるはずだ
こうしたデータなしに「1億8000万件の仕事」への影響を定量化したとは言いがたい
AI 統合が増えるならセキュリティ需要も増えるはずで、むしろ減ったというのは不自然だ
2024年と2025年の米国の求人票を比較するのは 標本があまりに選択的 だ
急激な減少なのか、正常化なのか、それとも長期的なトレンドなのか分からない
パンデミック期とその後遺症が混ざっているので、たった2年だけ見て結論を出すと全体像を見失う
写真関連職が確実に影響を受けているのは事実だ。BLSの写真家の職業見通し(2023年) と 現在のページ を比較すれば、成長率が変わっているのが分かる
ただし年間の欠員は数千件規模で市場が小さく、芸術写真は 消費支出の減少 によって AI とは無関係に打撃を受けている
完璧なデータセットではないが、現時点では十分に参考になる
「AIがソフトウェアエンジニアを代替する」という話は多いが、実際には 最も安定した職種の1つ に見える
より安く、より速く作れるようになるほど、より複雑なソフトウェアが求められ、効率向上分が相殺される
一方で会計は非弾力的なので、効率が上がれば人員だけが減る
クリエイティブ職はその中間あたりで、ディレクター級の需要は増えたが下位職は減っている
企業の立場から見れば、エンジニアは 売上を伸ばしてくれる存在 なので、少なくとも10〜15年は安定しているだろう
最近の AI コーディングツールから大きな価値を得ている
仕事が減るどころか、むしろ AIの面倒を見る仕事 が増えている
私と AI が一緒に働けば、以前よりはるかに多くの仕事をこなせる
採用時にもこうした協業能力が重視されるようになるだろう
ただし AIをマイクロマネジメントするのは依然としてつらい
2025年の求人票が2024年比で 8% 減ったというのは、むしろ 市場そのものが異常 だというシグナルかもしれない
こういう状況で細かな分析をすることに意味があるのか疑問だ
ChatGPT の登場が原因だという主張もあるが、確信は持てない
因果関係の分析がまったくない
AI のせいというより 関税や政策要因 の可能性もある
一部の州や政権による 政策的な反発 で減ったのであって、AI の影響ではない
筆者が『ゴースト求人(ghost jobs)』の問題を軽視したのは大きな誤りだ
実際には 解雇・離職率 を考慮していない分析なので、信頼しがたい
たとえば看護師の求人が 11% 減ったからといって、AI に代替されたわけではない
むしろパンデミック後に 離職率が下がった結果 かもしれない
こうした分析が示しているのは「AI がどの職業を代替したか」ではなく、単に 求人件数の変化 だけだ
分析手法のリンク を見ても、個人ポートフォリオ程度の品質に見える
フロントエンドエンジニア採用の減少は自分の実感とも一致する
小さな会社なら vibe coding だけでも十分で、大きな会社は既存人員で生産性を倍増させる
フロントエンドのコードは反復的で修正の影響範囲が小さいため、AIを適用しやすい
最近新しい職場で Claude が作ったアプリをリファクタリングしたが、バックエンドはめちゃくちゃ だった一方で、フロントエンドはかなり良かった
しっかりしたバックエンドさえあれば、LLM は 少ない修正でも使える UI を作ってくれる
モバイルエンジニア採用が 5% 減ったのは興味深い
React Native、Flutter、Tauri、Electron などによって クロスプラットフォーム化 が進んでいるのか、
あるいはアプリ自体の優先度が下がっているのかもしれない
このレポートが米国内データだけを扱っているなら、その影響かもしれない
私は ブルーカラー職中心の自動化影響分析 を別途行った
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この記事は、Bloomberryというデータサイトのブログに掲載されたものです。著者のHenley Wing Chiuは、Bloomberryを保有する会社であるRevealeraのCTOです。Revealeraはデータ分析・販売会社のようです。つまり、本格的な研究というよりは、参考になる意見として見るのがよさそうです。
私は、この記事の大前提に疑問があります。著者は「雇用の変動の大きな原因はAIだ」という大前提を事実として仮定したままデータ分析を進めていますが、そもそもそれが事実なのかから疑問です。
もちろん著者は、AIの影響は選択的に現れるとして、ある職種はAIの影響を大きく受け、ある職種はそうではないとも述べています。しかしそれは、AIの影響を前提にしたうえでそうではない一部だけを切り分けようとしているのであって、大前提そのものの検討ではありません。
他の研究を見ると、AIによる雇用への影響については、まだ慎重な見方がされています。たとえばイェール大学予算研究所の最近の分析を見ると、雇用構成の変化はChatGPTがヒットした2022年11月以前から進行していました。雇用変化の原因をAIだと断定できなくする話です。
この記事が語るAIの影響の有無は、やや恣意的に見えます。AIが一部の創造的な業務に大きな打撃を与えたとしていますが、その求人広告の急減がAIのせいなのか、不況のせいなのかは分析していません。たとえばHacker Newsのあるコメントは、芸術写真はAIとは無関係に、消費の減少によって打撃を受けたと指摘しています。
結論として、この記事全体をそのまま受け入れるのは難しそうです。もちろん、まったく無意味ではないとも思います。AIが雇用を減らすという懸念にもかかわらず、むしろ求人広告が増えた職種もあるという点は、部分的な根拠として活用できそうです。(もちろん、それですらAIによる減少にもかかわらず他の要因で求人広告が増えたのか、AIによる減少効果がそもそもまったくないのかは、この記事だけでは分かりません。)