AIのダイヤルアップ時代
(wreflection.com)- 1990年代のインターネット黎明期のように、AI革命も初期段階の混乱と過剰な期待が共存する時期であり、過度な楽観論と懐疑論はどちらも部分的にしか正しくない
- AIが雇用を代替するのか創出するのかをめぐる議論は、過去のインターネット論争と同様に二極化している
- 放射線科医はAI予測とは異なり雇用が増加したが、これはジェボンズの逆説(効率性の向上が総消費の増加につながる現象)が働いた事例
- AI投資ブームはドットコムバブルに似た過熱ぶりを見せているが、ハイパースケーラーのインフラ投資は長期的に未来の基盤を築くことになる
- AIが新しい職種や産業を生み出し、「ソフトウェアエンジニア」の意味すら変わるほどの労働構造の転換が進行中
インターネット黎明期とAI時代の類似性
- 1995年のインターネット普及初期、Webサイトは2000ほどしかなく、その多くは単純なテキストベースの構造だった
- 画像の読み込みに数分かかり、オンライン決済は信用されず、「インターネットで見知らぬ人を信用するな」という助言が一般的だった
- 当時の楽観論者は電子商取引とバーチャルリアリティの急成長を予見し、悲観論者はインターネットを一時的な流行とみなした
- 25年後、人々はソーシャルメディアでニュースを消費し、アプリで恋愛し、シェアリングエコノミーのサービスを利用するなど、予想を超える変化を経験した
- この記事は「今のAI時代は1995年のインターネットに似ている」とたとえ、両極端の予測はどちらも部分的にしか正しくないと指摘する
雇用の逆説: 自動化の影響が産業ごとに異なる理由
- Geoffrey Hintonは2016年、AIが大規模失業を引き起こすと警告し、「放射線科医の訓練はやめるべきだ」と主張した
- しかし2025年の米国の放射線科レジデント枠は過去最高の1,208枠となり、4%増加し、充足されない枠の比率も過去最高を記録した
- 平均年収は52万ドルで、2015年比48%増となり、2番目に高給な医療専門分野の地位を維持している
- 研究者Deena Mousaは、予測が外れた理由としてジェボンズの逆説を挙げる
- AIが放射線科医の生産性を高めたことで診断コストが低下 → より多くの人がスキャンを受ける → 雇用増加
- 現実の複雑さ、画像認識以外の業務、規制や保険の障壁も追加要因
- Satya NadellaやAaron Levieなど技術業界は、**「AIが適用されるほぼすべての分野で需要が増加する」**という楽観論を提示している
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ジェボンズの逆説の限界
- Andrej Karpathyは、放射線科は初期の雇用代替分析には不向きだと指摘する
- 多面的で高リスク、しかも規制の多い分野
- 雇用の変化は単純反復作業で、独立していて短時間で終わり、ミスのコストが低い領域から先に起きる
- 雇用が増えるかどうかは、未充足需要の規模と生産性向上の速度の競争にかかっている
- 2つの要因のバランスによって産業ごとに結果が異なる
- Andrej Karpathyは、放射線科は初期の雇用代替分析には不向きだと指摘する
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200年間の産業別データ分析
- 経済学者James Bessenの研究は、1800〜2000年の繊維、鉄鋼、自動車産業の雇用・生産性・需要データを示している
- 繊維と鉄鋼: 自動化後およそ100年間は雇用が増え、その後急激に減少
- 自動車製造: 安定して維持され、同じような急激な減少は起きなかった
- 生産性グラフでは、すべての産業で指数関数的な生産性向上が確認される(対数スケール)
- 1900年の繊維労働者は1800年比で50倍多く生産できた
- 需要グラフでは、初期には価格下落によって大量需要が生まれた
- 1800年代初頭には、ほとんどの人はズボンやシャツを1着ずつ買うのがやっとだった
- 自動化で価格が急落 → 複数の服を買えるようになる → 雇用と生産性が同時に急増
- 経済学者James Bessenの研究は、1800〜2000年の繊維、鉄鋼、自動車産業の雇用・生産性・需要データを示している
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需要飽和と雇用減少
- 需要が飽和すると、雇用は最大需要のところで停滞するが、自動化はその後も続く
- 生産性が上がり続け、やがて雇用減少が始まる
- 無限の衣類も、無限の放射線レポートも必要ではない
- 自動車は異なる様相: 需要がまだ飽和していない
- 世界の大半の人はいまだに自動車を所有していない
- 自動化も完全には実現していない(Teslaの完全製造自動化からの後退が現在の技術限界を示している)
- 需要と自動化ポテンシャルがともに高ければ、雇用は維持または増加しうる
- 需要が飽和すると、雇用は最大需要のところで停滞するが、自動化はその後も続く
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ソフトウェア産業の特殊性
- ソフトウェア需要がいつ飽和するのかは不確かな問いだ
- これまでは手作業のソフトウェア開発が制約要因だった
- 高価なエンジニアと人件費が、企業が構築できるものを制限していた
- 自動化でエンジニアの生産性が大きく向上すれば、未充足需要が爆発する可能性がある
- 企業には、事業価値はあるが開発コストを正当化できない、あるいはリソース不足で構築できないプロジェクトが多数ある
- Amazonの事例では、エンジニアリングリソース不足のため数千件のアイデアに資金が付かなかった
- AIがはるかに低コストでソフトウェアを生産できるなら、巨大な潜在需要が解放される
- 核心的な問いは、その需要がいつ飽和するのかだ
- ソフトウェア需要がいつ飽和するのかは不確かな問いだ
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産業別の雇用結果を決める要因
- 各産業の雇用は、2つの力の競争にかかっている
- 未充足の市場需要の規模と成長
- 需要成長が自動化による生産性向上を上回るかどうか
- 産業ごとに、この2要因のバランスによって異なる結果を経験する
- 各産業の雇用は、2つの力の競争にかかっている
バブル: 非合理的な熱狂が未来を築く
- 1990年代のドットコムブームは、企業が社名に「.com」を付けるだけでバリュエーションを急騰させた時代だった
- インフラ企業は光ファイバーや海底ケーブルに数十億ドルを投資した(誇大宣伝があったからこそ可能だった高価なプロジェクト)
- 2000〜2001年のドットコム崩壊で派手に崩れ去った
- Ciscoのようなインフラ企業は一時的に世界で最も価値のある企業になったが、その後失速した
- Pets.comはIPOで8,250万ドルを調達し、スーパーボウル広告に数百万ドルを費やしたが、9カ月で破綻した
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ドットコムバブルの肯定的な遺産
- ドットコムバブルも多くの面で正しかった
- YouTube、Netflix、Facebookを可能にした物理インフラの構築
- Worldcom、NorthPoint、Global Crossingのような企業は破綻したが、未来の土台を整えた
- 崩壊は短期的には懐疑論者の正しさを証明したが、長期的には楽観論者の方向性が正しかったことを示した
- ドットコムバブルも多くの面で正しかった
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今日のAIブームに見られる同様の熱狂
- 元OpenAI幹部Mira Muratiが設立したAIスタートアップが、100億ドルの評価額で20億ドルのシードラウンドを調達した(史上最大)
- 製品もなく、何を作るのか、どう収益化するのかも公開を拒否している
- 複数のAIラッパーが、ほとんど堀もないままシード資金として数百万ドルを調達している
- 元OpenAI幹部Mira Muratiが設立したAIスタートアップが、100億ドルの評価額で20億ドルのシードラウンドを調達した(史上最大)
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ハイパースケーラーのインフラ投資
- ハイパースケーラーの年間設備投資は、ChatGPT公開後に2倍以上に増加した
- Microsoft、Google、Meta、Amazonがデータセンター、チップ、計算インフラに合計でほぼ5,000億ドルを投資
- どの企業が生き残るにせよ、今構築されているインフラがAIの未来の土台を生み出している
- 推論能力から、それを支えるために必要な発電まで
- ハイパースケーラーの年間設備投資は、ChatGPT公開後に2倍以上に増加した
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AIがバブルかどうかの判断
- Azeem Azharは、5つの指標でAIブームをベンチマークする実用的なフレームワークを提示している
- 経済的負担(GDPに対する投資比率)
- 産業負担(売上高に対する設備投資比率)
- 売上成長の軌道(倍増時間)
- バリュエーション過熱(株価収益率)
- 資金調達の質(資本の出所の強靭性)
- 分析結果では、AIはバブルではなく需要主導のブームの状態にある
- ただし、5つの指標のうち2つが赤色領域に入れば、バブル領域に入る
- Azeem Azharは、5つの指標でAIブームをベンチマークする実用的なフレームワークを提示している
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需要が実在してもバブルを防ぐわけではない
- OpenAIは史上最速で成長する企業の1つだ
- しかし、それだけでバブルを防げるわけではない
- 多くのAI企業は、1990年代のドットコム企業を苦しめた同じユニットエコノミクスの問題に直面している
- Pets.comも数百万人のユーザーを抱えていたが、「85セントで1ドルを売れば、顧客はいくらでも集められる」という格言の通り破綻した
- 需要があっても、1990年代と似たパターンになる可能性がある
- 過剰構築や派手な失敗が予想される
- それでもインフラは誇大宣伝サイクルを超えて、今は想像できないものを可能にするだろう
- OpenAIは史上最速で成長する企業の1つだ
予測できるほどに予測不能な未来
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AI革命の初期段階
- AI革命の初期段階にある(インターネット時代で言えば、ギーギー鳴るモデムの段階)
- インフラ企業が光ファイバーに数十億ドルを注ぎ込んだように、ハイパースケーラーは計算資源に数十億ドルを投資している
- スタートアップがかつて「.com」を社名に加えたように、今は「.ai」を名前に加えてより高い評価額を狙っている
- 誇大宣伝は熱狂と絶望のあいだを循環するだろう
- 一部の予測は滑稽なほど間違っていたように見えるだろう
- 狂っているように見えた一部は、実は保守的だったと判明するだろう
- AI革命の初期段階にある(インターネット時代で言えば、ギーギー鳴るモデムの段階)
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産業ごとに分かれる結果
- ジェボンズ的な楽観論者の主張とは逆に、多くのものへの需要は人間の必要が満たされると停滞する
- すべての産業の雇用結果は、未充足市場需要の規模と成長、そしてその需要成長が自動化による生産性向上を上回るかにかかっている
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コスト低下が市場セグメントを開く
- Aswath Damodaranは、Uberが既存のタクシー市場の一部を獲得するだけだと仮定してUberを過小評価した
- 彼は、乗車料金が劇的に安くなれば市場そのものが拡大することを見落としていた
- 人々は、タクシー料金では決して行かなかった目的地へUberで行くようになった
- AIも同様に、現在の人間の知能で構築するには高すぎる製品やサービスを可能にするだろう
- 飲食店のオーナーがAIを使って、自店専用のカスタムなサプライチェーンソフトウェアを作る(人間の開発者なら10万ドルかけても決して作られなかったもの)
- 非営利団体が、以前は負担できなかった法的闘争のためにAIを配備する
- Aswath Damodaranは、Uberが既存のタクシー市場の一部を獲得するだけだと仮定してUberを過小評価した
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変化は予測できても細部は不可能
- 1995年に、インターネットで見知らぬ人とデートし、その人の車(Uber)に乗り、その人の家(Airbnb)に泊まると予測した人はいなかった
- インフルエンサーという職業が若者に最も人気の職業になると予測した人もいなかった
- 人間の創造性は、現在のメンタルモデルでは予測できない結果を生み出す
- 新しい領域や産業が登場すると予想される
- AIはすでに、この50年よりもこの5年のほうが多く動物とのコミュニケーション解読を助けている
- 動物との完全な会話を可能にする技術が、どんな仕事を生み出すか予測できるだろうか?
- 2050年に最も人気のある職業は、今日まだ存在しない職業である可能性が高い
- まだ発明されていないので名前も付けられない
- 1995年に、インターネットで見知らぬ人とデートし、その人の車(Uber)に乗り、その人の家(Airbnb)に泊まると予測した人はいなかった
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職業カテゴリの変形
- インターネットは一部の仕事を不要にしたが、別の仕事を変形させ、新たなカテゴリを生み出した
- AIでも同じパターンが予想される
- Karpathyの問い: 「6カ月前、5年後にソフトウェアエンジニアが今より多いか少ないか投票してくれと頼まれた」
- これは読者への練習問題として残されている
- インターネットは一部の仕事を不要にしたが、別の仕事を変形させ、新たなカテゴリを生み出した
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ジャーナリストの事例から得られる教訓
- 1995年に戻ってジャーナリストについて同じ問いをしたなら:
- インターネットが世界中に届くことで需要が増えるはずだから、より多くのジャーナリストを予想しただろう
- 初期の10年ほどは正しかったはずだ(2000年代初頭までジャーナリズム雇用は増加)
- 30年後: 新聞の数もジャーナリストの数も減少
- それでも、これまで以上に多くの「ジャーナリズム」が行われている
- ただし、それを担っているのは私たちがジャーナリストと呼ぶ人だけではない
- ブロガー、インフルエンサー、YouTuber、ニュースレター筆者が、従来のジャーナリストがしていた仕事を行っている
- 1995年に戻ってジャーナリストについて同じ問いをしたなら:
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ソフトウェアエンジニアの未来
- ソフトウェアエンジニアにも同じパターンが展開するだろう
- より多くの人がソフトウェアエンジニアリングの仕事をするようになる
- 10年ほど後には「ソフトウェアエンジニア」の意味が変わっているだろう
- 先に述べた飲食店オーナーは、AIを使って自分専用のカスタム在庫ソフトウェアを作る
- 彼らは自分をソフトウェアエンジニアとは呼ばないだろう
- ソフトウェアエンジニアにも同じパターンが展開するだろう
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予測不能なAIの未来
- 1995年のように、もしAI楽観論者が今、「25年以内に、人々はソーシャルメディアのインフルエンサーよりAIからのニュースを好み、人間の俳優ではなくAI生成キャラクターを見て、デーティングアプリではなくAI仲人を通じて恋愛相手を見つけ(あるいはAIそのものを恋愛相手として使い)、『AIを信用するな』を完全にひっくり返して生死の決定をAIに委ね、子どもを育てることまでAIに任せるようになる」と言ったら
- ほとんどの人は信じがたいと感じるだろう
- あらゆる知能(自然でも人工でも)をもってしても、AIの未来がどんな姿になるかを確実に予測できる人はいない
- テック企業のCEOも、AI研究者も、インターネットで延々と語る無作為な人も同じだ
- 細部を当てようが外そうが、AIの未来は読み込み中だ
- 1995年のように、もしAI楽観論者が今、「25年以内に、人々はソーシャルメディアのインフルエンサーよりAIからのニュースを好み、人間の俳優ではなくAI生成キャラクターを見て、デーティングアプリではなくAI仲人を通じて恋愛相手を見つけ(あるいはAIそのものを恋愛相手として使い)、『AIを信用するな』を完全にひっくり返して生死の決定をAIに委ね、子どもを育てることまでAIに任せるようになる」と言ったら
1件のコメント
Hacker Newsの意見
ドットコムバブルとの 類似性 には限界がある
当時と今では社会・政治・経済的な文脈がまったく異なるためだ
未来を予測するときに過去のパターンを参考にすることはあるが、文脈の変化まで考慮できていない場合が多い
単に需要や自動化だけでは十分に説明できず、政治・社会・経済システムの相互作用 をあわせて見る必要がある
今は AIのメインフレーム時代 だと思う
巨大な中央集権型モデルは少数の大企業しか運用できず、私たちは彼らのコンピューティング資源を借りて使っているようなものだ
いつか パーソナルコンピューティング時代 が来て、小さなモデルがあちこちに分散されることを期待している
今ではほとんどの人が、クラウドベースの中央サービスに接続する 「愚かな端末」 としてコンピューターを使っている
メール、地図、Git さえ中央サーバーへの依存度が高く、メインフレーム時代への回帰 のように感じる
LM Studio のようなツールで直接試してみれば、ローカルでモデルが完全に動くことを体験できる
そんな時代に戻りたくはない
AIについてあまりに 確信に満ちた態度 を見せる人もいると感じた
私にはそこまで断言する自信はない
彼らの考え方は Dunning-Kruger効果 の典型のようだ
「AIが雇用をより多く生み出す」という主張自体、聞いたことがない
肉体労働であれ知識労働であれ、結局は 自動化される運命 にあるのに、どんな仕事が生まれるというのか疑問だ
筆者は自分の立場を 両極の中間地点 に見せようとして、人為的に二つの陣営を作ったように思える
ドットコム時代の 光ファイバーインフラ と今のデータセンターを比較するのは無理がある
光ファイバーは10年後でも使えたが、データセンターは技術が数年も経てば 生鮮食品のようにすぐ古くなる
10年後には今の設備に誰も関心を持たないだろう
最近は AI疲れ を感じる
短いメールの修正にはよいが、深い内容にはあまり向かない
お金を払って使う価値は感じない
ChatGPT Plus と GitHub Copilot を有料で使っているが、自分では見つけられなかった解決策を示してくれる
「高額なエンジニア人件費が開発を制約していた」という主張は間違っている
大企業には十分な資本があり、問題は ソフトウェアの複雑さと人間の理解力の限界 にある
こうした点を指摘していれば、もっと説得力があっただろう
文章全体が 大言壮語 に満ちているように見える
良い分析だが、見落としているのは AIが5〜10年以内にスマートフォンやデスクトップ上で直接動く可能性 だ
そうなれば、現在のデータセンター投資や Nvidia 中心の構造は無意味になるかもしれない
1990年代の人々は技術楽観主義が強かった
テレビでもスマートフォンのような機器をまもなく使うようになると信じられていて、むしろ現実のほうが 追いつくのがあまりに遅い と感じられた
関連動画 を参照
文章はよく調査されていて興味深いが、現在のLLMの現実とはかけ離れている
今のソフトウェア構造ではSFレベルのAIに到達するのは難しく、お金を大量に使っても解決しない
AI投資ブームは技術というより 富の再分配の手段 に近く、過去のドットコム・不動産・暗号資産バブルと変わらない
AGIは今回のラウンドでは来ない し、ハルシネーションの問題すら解決できていない
本当に必要なのは 人々が互いの視点に耳を傾ける力 なのに、AIはむしろそれぞれのバブルを強化している