- LinkedInの本人確認手続きは、ユーザーがパスポートと顔写真を提出すれば完了するように見えるが、実際のデータはLinkedInではなく米国企業 Personaに渡される
- Personaはパスポート写真、顔認識用の生体情報、NFCチップのデータ、デバイス情報および位置情報など、膨大な個人データを収集する
- このデータはAI学習用に活用され、法的根拠は「正当な利益(legitimate interest)」とされており、明示的な同意なしに処理される
- Personaの**17のサブプロセッサー(subprocessor)**のうち16社が米国企業で、OpenAI・AnthropicなどのAI企業がパスポートや顔データを分析する
- 米国のCLOUD Actにより、欧州サーバーに保存されたデータであっても米国政府がアクセスできるため、欧州ユーザーの個人情報保護は実質的に保証されていない
LinkedIn認証プロセスの実際の構造
- LinkedInの「Verify」ボタンを押すと、ユーザーはPersona Identities, Inc.(サンフランシスコ所在)へリダイレクトされる
- LinkedInは顧客企業であり、ユーザーはPersonaのデータ処理対象となる
- 多くの利用者はPersonaの存在を認識しないまま、パスポートと顔写真を提出する
Personaが収集するデータ
- 本人確認の過程でPersonaは次の情報を収集する
- 氏名、パスポート全体の画像、リアルタイムのセルフィー、顔の幾何学情報(生体情報)
- NFCチップのデータ、国家ID番号、性別、生年月日、メールアドレス、電話番号、住所
- IPアドレス、デバイス・ブラウザ情報、言語、位置情報
- さらに**「ためらい検知」、「コピー&ペースト検知」などの行動ベースの生体情報(behavioral biometrics)**も追跡する
第三者データとの照合
- Personaは、ユーザーが提供した情報以外にも政府データベース、信用機関、通信事業者、公共料金会社などと照合を行う
- 単なる本人確認ではなく、身元調査レベルのデータ照会が行われる
AI学習データとしての活用
- プライバシーポリシーによると、アップロードされたパスポート画像とセルフィーはAIモデルの学習に使用される
- 目的は国別のパスポート認識精度の向上とサービス改善
- 法的根拠は**「正当な利益」であり、ユーザーの明示的な同意なしに処理可能**
- GDPR上、基本権の侵害に当たるかどうかは不明確
データ共有先とアクセス主体
- LinkedInが受け取る情報は、氏名、出生年、身分証の種類、発行機関、認証結果、ぼかし処理された身分証のコピー
- Personaは次の相手ともデータを共有する
- サービス提供事業者およびデータパートナー、関連会社、潜在的買収者、法執行機関
- **17のサブプロセッサー(subprocessor)**の一覧には次が含まれる
- Anthropic, OpenAI, Groqcloud(データ抽出・分析)
- AWS, Google Cloud, Snowflake, MongoDBなどのインフラおよびデータベースサービス
- Stripe, Twilioなどの決済・通信API提供企業
- 17社のうち16社が米国、1社がカナダ所在で、EU域内企業は存在しない
CLOUD Actとデータ主権の問題
- Personaは米国およびドイツのデータセンターを運営しているが、米国法人であるためCLOUD Actの適用対象となる
- 米国の裁判所は、海外サーバーに保存されたデータであっても法的命令によってアクセス可能
- Personaのポリシーには、「法執行・国家安全保障目的の要請時にデータを提供する」と明記されている
- **秘密保持命令(gag order)**が含まれる場合があり、ユーザーに通知されない可能性がある
EU-US Data Privacy Frameworkの限界
- Personaは**EU-US Data Privacy Framework(DPF)**認証を保有している
- しかしこれはPrivacy Shieldの代替制度であり、**法的効力は大統領令(Executive Order)**に基づく
- 今後、政権交代があれば撤回される可能性がある
- noybなどのプライバシー団体はすでに法的異議申し立てを行っている
生体情報のリスクと保存例外
- Personaは顔の幾何学データを認証完了後または6か月以内に削除すると明記している
- ただし、法的要求時の保存例外を設けており、米国の裁判所命令があれば無期限保管の可能性がある
- 生体情報は変更不可能な固有識別子であり、漏えいした場合は回復不能
法的責任とユーザーの権利
- Personaの損害賠償上限は50ドルに制限されている
- 紛争は米国の仲裁機関(AAA)による個別の強制仲裁でのみ解決可能
- EUユーザーにはアイルランド法の適用が明記されているが、CLOUD Actが優先適用されるため実質的な保護は弱い
ユーザーに提示された対応策
- すでに認証を完了したユーザーは次の対応ができる
- データ開示請求: idv-privacy@withpersona.com
- 削除請求: 認証完了後に不要なデータの削除を要求
- DPOへの連絡: dpo@withpersona.com にAI学習利用への異議を申し立て可能
- 認証の再考: 単なるバッジよりも生体情報保護の重要性を考慮する必要がある
結論
- LinkedInの本人確認はわずか3分で終わるが、実際のデータフローを理解するには34ページの法的文書を読まなければならない
- ユーザーはパスポート、顔、生体情報、信用記録を米国企業に提供し、
AI学習・政府アクセス・法的例外による保存の可能性にさらされる
- 欧州ユーザーのデータは事実上、米国の法体系の下に置かれている
- 単なる青いバッジを得るために、個人の身元情報全体を差し出す構造になっている
2件のコメント
米国内の防諜活動にも意外とかなり活用されているようだ
Hacker Newsの意見
PersonaのCEOがLinkedInで直接釈明していた
個人データはAI学習には使われず、本人確認後に生体情報は即時削除され、残りのデータも30日以内に自動削除されるとのこと。
実際には法務チームが関与すると文書が過度に包括的に書かれることが多い。現実よりはるかに暗く見えることがあるため、こうした説明には透明性を確保する意味がある
以前、LinkedIn専用のメールアドレスを作って登録したが、アカウントを削除した途端、そのアドレスにスパムメールが殺到した
実験してみたい気もするが、もう信頼を失っている。LinkedInがデータを売ったと信じている
新しいアカウントを作るときに本人確認を強制された。パスポートで認証する必要があり、その後に個人情報の内訳を確認したが、ほとんど何の情報も提供されなかった
広告設定はデフォルトでオンになっており、全体の過程は非常に不快だった。
会社用アカウントだったので仕方なく進めたが、分散型の代替サービスが切実に必要だと感じた
Personaによる本人確認は、結局のところ政府データの補強(enrichment)に寄与することになると思う
Coursera、Wealthsimple、Limeなど主要サービスがすでに依存していて避けにくいが、データ活用に対する法的保証が必要だ
カナダや欧州のようにデジタル主権を議論している地域は、地域の代替を育成すべきだ
Personaは大規模な個人情報を扱ううえで信頼できる能力が不足しているように見える
関連ブログ記事: https://vmfunc.re/blog/persona
LinkedIn、Google、Facebookのようなプラットフォームの中核構造は、ユーザーを商品として売ることだ
誰かがあなたをターゲットにするために金を払うなら、その金は結局あなたから回収される
こうした構造が長期的に経済的不平等を深刻化させたと思う
LinkedInはTikTok化した見栄のSNSに変わってしまった。「業界知識を蓄える」という名目で時間の浪費を正当化する構造だ
本当の専門家ではなく、セルフブランディングで食べている人たちであふれている
記事で「欧州のパスポートをスキャンしたのに、データがすべて北米企業へ渡った」という部分が印象的だった
LinkedInを欧州ベースのネットワークと見るのは難しいと思う
こうしたプライバシー行動主義が必要だ。私もLinkedIn認証をしたが、筆者が提示した実行可能な対応リストが印象的だった
最近「メールが受信されていない」というエラーメッセージが出続ける。だが実際には正常に受信されている
ボタンを押すと「問題が発生しました」と出るだけで、有料ユーザーなのに解決しない
サポートは同じアドレスにメールを送ると言ってきて呆れた。こういう構造は分散化の必要性を改めて感じさせる
電話システムもAI音声認識のせいでむしろ不便だ。何十年も積み上がった怪物のような構造的複雑性になっている感じがする