月の有毒な一面(2018)
(esa.int)- アポロ宇宙飛行士たちは月面から帰還した後、火薬のようなにおいがする粉塵によりくしゃみや鼻づまりのような症状を経験した
- この月の粉塵は、ケイ酸塩を含む鋭く静電気を帯びた粒子で、肺の奥深くまで侵入して炎症や細胞損傷を引き起こす可能性がある
- ESAは、この月の粉塵の毒性の程度を解明し、人体への影響を評価するための国際共同研究を進めている
- 同時に、月の土壌をレンガ製造や酸素抽出などの資源として活用するための技術実験も並行して実施している
- こうした研究は、持続可能な月探査と人類の長期滞在準備のための中核的な基盤である
月の有毒な一面
- アポロ宇宙飛行士たちが月から帰還した際、宇宙服に付着した粉塵が喉を痛め、目を刺激した
- 粉塵は火薬のにおいに似たにおいを放ち、12人の月面着陸者全員がくしゃみや鼻づまりのような症状を経験した
- 一部では症状が数日間続き、NASAのハリソン・シュミットはこれを「月の花粉症」と呼んだ
- ESAは、月の粉塵の毒性が人体に与える影響を明らかにするための国際研究プログラムを進めている
- 米カリフォルニア大学の肺生理学者Kim Priskら12人の科学者が参加している
- 彼は「この粉塵がどれほど有害なのかはまだ分からない」とし、危険度を見積もることが重要課題だと述べた
月の粉塵の特性と危険性
- 月の粉塵は**ケイ酸塩(silicate)**を含み、これは地球の火山活動地域でもよく見られる物質である
- 地球の鉱山労働者は、ケイ酸塩の吸入によって肺の炎症や線維化を起こす
- 月では粉塵が非常に粗く、宇宙服ブーツの層を摩耗させ、アポロのサンプル容器の真空シールを損傷させた
- 月の重力は地球の6分の1しかないため、微粒子が空中に長く浮遊し、肺の奥深くまで侵入する可能性がある
- 人間の髪の毛より50倍小さい粒子が肺の中に数か月間残留することがある
- 滞留時間が長いほど、毒性作用の可能性は高まる
- 研究の結果、月の土壌模擬体(lunar soil simulant)が長期曝露時に肺と脳の細胞を破壊しうることが確認された
粒子レベルでの分析
- 地球の微粒子は風や水による浸食で時間とともに表面が滑らかになるが、月の粉塵は鋭く尖った形状を保っている
- 月には大気がなく、太陽放射に継続的にさらされているため、土壌が静電気を帯びる
- 電荷が強くなると、粉塵は**月面上に浮遊(levitate)**し、機器内部や人体の呼吸器へ侵入する可能性が高まる
ESAの実験と資源活用
- ESAは、ドイツの火山地域で採掘した月模擬粉塵を用いて機器テストや粉塵挙動の実験を行っている
- この模擬体はガラス質成分が希少で扱いが難しく、原料を粉砕すると鋭い縁が失われるという問題が生じる
- 生物学者Erin Tranfieldは、こうした特性のため実験用粉塵の作製が難しいと述べている
- 月の土壌は同時に有用な資源とも評価されている
- 加熱するとレンガを作り、居住地建設に活用できる
- 酸素を抽出して、人類の月滞在ミッションを支援できる
- ESAの科学顧問Aidan Cowleyは、こうした活用可能性を強調した
持続可能な月探査に向けた準備
- ESAはオランダの欧州宇宙研究技術センター(ESTEC)で月資源活用ワークショップを開催した
- 同時に、ESA宇宙飛行士Alexander Gerstは宇宙でAirway Monitoring実験を実施している
- この実験は、微小重力環境での肺の健康モニタリングを通じて、持続可能な月探査への再帰に備えることを目的としている
要点まとめ
- 月の粉塵は鋭く静電気を帯びたケイ酸塩粒子で構成されており、人体に深刻な呼吸器リスクをもたらす可能性がある
- ESAは月の粉塵の毒性評価と資源活用技術の開発を並行して進め、今後の人類の長期月面滞在に備えている
- 過去のアポロ計画の経験は、月探査の生命維持システム設計に重要な教訓を与えている
1件のコメント
Hacker Newsの意見
かなり前に読んだ記事で、宇宙飛行士たちは月の匂いを火薬の匂い、宇宙の匂いをオゾンの匂いのようだと表現していたのを覚えている
実際には、月面から戻った後にエアロック内部の匂いを嗅いだものだった
月には大気がなく、何十億年ものあいだ酸素と接触していない塵が積もっており、この塵が空気に初めて触れたとき急速に酸化して、火薬の匂いのように感じられた
宇宙空間の匂いについても同様に、エアロックが真空に最初にさらされたときの表面反応でオゾン臭が生じたのだという説明がある
そのため、酸素を吹き込む実験で自然発火の危険がないか確認したという
宇宙飛行士たちは帰還のたびに化学実験を自ら実施していたようなものだった
月全体が空気と反応するのを待つ巨大な実験室のようだ
オゾン臭に言及する人もいたが、私には金属が燃える匂いのほうが印象に残っている
雷が多いときの匂いに似ている
彼らが言っていたのが黒色火薬なのかニトロセルロースなのか気になる
射撃場で黒色火薬の匂いを嗅いだことがあるが、それもオゾン臭とは違う
火星の土壌には過塩素酸塩(perchlorate) が有毒レベルで存在する
人間が土壌やそれに接触した物質に触れないようにしなければならない
そのため、宇宙服を車両の外側にドッキングする方式が必須になる
関連Wiki記事
だから火星植民地という発想には魅力を感じない
むしろ金星の浮遊基地のほうがましかもしれない — あちらは気圧は合っているが酸性環境だ
過塩素酸塩より酸性大気のほうが、かえって扱いやすいかもしれない
それでも挑戦してみようという人は多そうだ
ブログには「エベレスト山頂ですら人間は生きられない」とあったが、クマムシなら可能かもしれない
想像の中で彼らがチームに加わると、「土壌に触れるな」という警告は「触れたら止まって転がれ」に変わった
クマムシは火星で生存できるか?
皮膚接触よりも吸入や摂取のほうが危険だ
過塩素酸塩は甲状腺ホルモンの生成を妨げるが、これは薬で調整できるレベルだ
Scientific Americanの記事
最新の月面探査車設計の利点の1つは、宇宙服が車両の外側に取り付けられる点だ
Space Exploration Vehicleの説明
また、レーザーや太陽熱でレゴリス(月の土壌)を焼結する研究も活発だ
関連論文
Eugene Cernan(Apollo 17)の報告によれば、月の塵はあらゆる材質に付着し、摩耗を引き起こす問題だった
探査後半には装備のロック機構がまともに動かなくなるほどで、内部に入り込んでも完全には除去できなかった
Apollo 17技術報告書
レゴリスの顕微鏡画像では砕けたガラスのように鋭い粒子が見える
関連するNASAメモや研究論文もある
私は宇宙オタクだが、正直なところ宇宙や他の惑星は人間にとってかなり過酷な環境だ
地球がどれほど住みやすい場所かを改めて実感する
月の塵は「粉のように細かいのにガラスのように鋭い」と表現される
恐ろしいが、それでも探検する価値はある
誰かが「宇宙アスベストのせいでがんになった宇宙飛行士はいるのか」と尋ねていた
月に行った人は12人しかおらず、曝露時間も短いので、「月のがん」が報告されていないのは自然なことだ
ただし短時間の曝露でも、数十年後に病気が現れる可能性はある
米国国立がん研究所の資料
月の塵も小さいが分解されないため、肺に蓄積する可能性がある
反復曝露では危険が増すだろう
たとえがんがあったとしても、寿命には大きな影響はなさそうだ
月の塵はKiki、地球の塵はBoubaみたいだ
NASAがElectrodynamic Dust Shieldシステムを開発しているのも、まさにこの問題が理由だ
関連画像と説明