ソフトウェアは死ぬのではなく、進化している
(signalfire.com)- AIによってコード生成が安価になり、「先に機能を作った」という堀が崩れ、機能だけを積み上げてきたソフトウェアはリアルタイムで**価値の再評価(repriced)**を受けている
- これからの防御力は機能開発の速さではなく、高精度ワークフロー、独自データ、深い記録システムから生まれ、「本物の企業」と認められる基準も高まっている
- 「週末にClaudeでCRMをバイブコーディングした」といった主張は、コード生成とミッションクリティカルなサービス運用の違いを見落としており、企業が買っているのはコードではなく**信頼(trust)**である
- エージェントはアプリを置き換えるのではなく、垂直アプリケーションの内部に重ねて組み込まれるものであり、データモデル・権限・監査証跡を持つアプリケーションが販売・更新の主体であり続ける
- 最近、レガシーソフトウェアの時価総額から2,850億ドルが消え、SaaS終末論が浮上したが、AI需要は依然として供給を上回る実売上ベースの市場である
バブル論争は間違った問い
- AI全体で見ればバブルではない。需要は引き続き供給を上回っており、一部のポートフォリオ企業は計算資源不足のため顧客を受け切れないほどである
- この需要には単なるユーザー数ではなく、数百億ドル規模の実売上が結びついており、バブルはこのような形では現れない
- ただし、バブルが疑われる領域は別にあり、それは後期ステージのバリュエーションに資本が集中しているヒューマノイドロボティクス分野である
- バックフリップやダンス動作は見せられても、経済的価値のある作業をこなすロボットはまだ存在しない
- LLMはオープンインターネットという学習コーパスのおかげで機能したが、ロボティクスには同等のデータコーパスがなく、
学習データの出所が不明瞭な研究課題として残っている(研究のタイムラインはベンチャーのタイムラインと合わない)
- つまり「AIバブルか」という問いへの答えは分野ごとに異なり、ソフトウェア(SaaS)についても「死んだ」と即断するのではなく、主張ごとに吟味すべきである
ソフトウェアの死についての4つの主張(最悪から最良の順)
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#4: 誰もが自分用ソフトウェアをバイブコーディングするようになる
- 「なぜSalesforceに金を払うのか、週末にClaudeで自分でCRMをバイブコーディングすればいい」という主張
- コードベースの生成とミッションクリティカルなサービス運用はまったく別物である
- バイブコーディングした担当者が去れば、コードベースの保守問題が発生する
- コード生成ではSOC2コンプライアンス、ハルシネーション制御の問題は解決できない
- 1998年に書かれたSQLデータベース統合や、午前4時にダッシュボードが落ちたときの稼働時間責任の問題も解決できない
- 企業が買うのはコードではなく信頼であり、AIによってコードの同等性は容易になったが、信頼の同等性は依然として難しい
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#3: ClaudeやChatGPTのようなエージェントがエンタープライズアプリを飲み込む
- バイブコーディング論よりはましな主張だが、誤りコストの大きいワークフローでは機能するか懐疑的である
- LLMシステムは**非決定的(non-deterministic)**であり、ハルシネーションに弱い
- 一般的なソフトウェアバグは再現できるが、エージェントの失敗は98%通過しても肝心な場面で落ちる不安定なテストに近い
- メール草案、文書要約、マーケティングコピーのような低リスク業務には適している
- しかし、エージェントが必須項目を落としたり契約金額を誤記して6桁の取引を失えば、ルールを強制するシステムが必要になる
- 純粋なエージェントワークフローのチームは、結局検証レイヤー・承認段階・ロールバック・監査ログを再構築することになる
- これらをすべて足せば、結局はエージェントの周囲にSaaSアプリを作り直したのと同じになる
- 結果として、アプリを置き換えるのではなく垂直アプリケーションの内部にエージェントを重ねる形になる
- データモデル・権限・監査証跡・顧客関係はアプリケーションが所有し、販売・サポート・更新されるのもそのenvelope全体である
- モデルの信頼性が向上すればさらに面白くなるが、まだその段階ではない
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#2: シート課金の消滅がSaaSモデルを崩壊させる
- 従来のSaaSはデータ・ビジネスロジック・UIの3層で構成され、そこに第4の**エージェント層(agentic layer)**が積み重なりつつある
- 人間向けに50シート売っていたものを、2つのエージェントがUIなしで処理するなら価格決定力の問題が生じる
- エージェントがより多くの仕事をこなし、顧客がより大きな価値を得るなら、それは実存的問題ではなく価格とパッケージングの問題である
- トークン・成果・ハイブリッド利用モデルで**価値ベース価格(price to value)**を設計するベンダーは生き残る
- 1シートあたりの価格に固執するベンダーは、顧客がシートを自動化することで崩れる
- 純粋な成果報酬型価格はすべてのカテゴリにきれいには適用しにくく、今後数年は**ハイブリッドモデル(利用量+成果)**が主流になる見通し(原文明記)
- 従来のSaaSはデータ・ビジネスロジック・UIの3層で構成され、そこに第4の**エージェント層(agentic layer)**が積み重なりつつある
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#1: コードが安くなり機能の堀が崩れる
- これが最も真剣に受け止めるべき主張である
- SAP・ServiceNow・Salesforceの堀は、数十年にわたって蓄積されたエンジニアリング人員だった
- あらゆる機能・統合・レポートが、スタートアップには追いつけないコードベースに吸収されていたが、AIがそのタイムラインを劇的に短縮している
- 純粋なワークフロー層の製品で、防御論理が「先に作った」だけだったなら危機的状況である
- ビジネスインテリジェンス、創造的コンテンツ生成は現在もっとも浅い堀しか持たない領域であり、LLMはまさにその作業を非常に得意としている
では、堀はどこに存在するのか
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3つの防御要素
- エラー予算がゼロに近い高精度ワークフロー: 金融インフラ、ヘルスケア、規制コンプライアンスなど
- バイブコーディングではHIPAA監査や精算不一致に耐えられず、エラーコストそのものが堀になる
- 独自データのフィードバックループ: 顧客利用に応じて意味のある改善が起こり、競合は同じ基盤モデルでは複製できない
- 資産はモデルではなくデータである
- 深い記録システム(systems of record): レガシー業務に組み込まれて真実の源泉を握り、高いスイッチングコストを生む
- これらの企業はAIを避けるのではなく積極的に受け入れるべきであり、エージェント層はデータ価値をさらに高める
- エラー予算がゼロに近い高精度ワークフロー: 金融インフラ、ヘルスケア、規制コンプライアンスなど
AIスタックの現状: 投資先と非投資先
- 「AIに投資する」という言葉は、2012年の「ソフトウェアに投資する」と同じくらい差別化要因ではなくなっている
- 4つの層が存在し、同じ資本配分の対象ではない
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1. ハードウェア
- 計算資源はこのサイクルの**制約要因(binding constraint)**であり続けている
- Neolabsのような企業は、数カ月前に処理されるべきだった発注書(PO)を待っている
- 需要は実在するが供給が詰まっており、勝者の大半は上場企業か、すでに規模を持つ企業である — シード投資で結果は変わらない
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2. モデル
- フロンティアモデルはベンチャービジネスではなく、資本集約型(capex)ビジネスである
- まともに学習させるコストは小国のGDPに匹敵し、OpenAI・Anthropic・Googleがすでにそのゲームを進めている
- 正面突破型のモデルスタートアップは、間違った戦いを選んでいる
- Sciforiumのように新しいアーキテクチャ・学習/推論方式・問題設定で別の形を目指す少数の企業にのみ投資する
- 既存強者が自らの中核を食い潰さない限り追随できない**側面突破(outflanking)**型アプローチなら関心がある
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3. インフラ
- AIが既存SaaSの前提を興味深く壊している領域である
- 従来のSaaSは**読み取り中心(read-heavy)**で、1行を保存して何百万回も参照する構造だった
- AIワークロードはこれを反転させ、学習パイプライン・エージェントメモリ・ベクトルストア・評価ハーネスが**書き込み・更新中心(write-heavy)**となり、レガシーが想定していないデータ形態で動作する
- 両方に積極投資している
- データ層そのもの: PlanetScale, Greybeam — このワークロード形態に合わせてOLTP・OLAPデータベースプリミティブを再構築
- データ生成層: Preference Model, Moody Pines, Terac — 計算資源の問題が解けた後の本当のボトルネックである、精製・構造化・ラベル付けされたデータ供給
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4. アプリケーション
- 現在もっとも資本が投入されている領域であり、価値が実際の買い手に届く層である
- 医療コーディング、貨物最適化、法務レビュー、セールスモーション、臨床オペレーションなど、以前は手が届かなかったワークフローにAIが適用可能になり、表面積(surface area)が非常に大きい
- 競争は激しく価格圧力もあるが、それは需要の大きい層の特徴である
- 勝者はAIネイティブなワークフローを、高精度環境・独自データループ・深い記録システムのいずれかと結びつけた企業になるだろう
この市場で起業する人へ
- ハードウェアとモデルは、構造的優位がなければ新規参入者にはほぼ閉ざされている
- インフラは「AIワークロードはチャットボットを付けただけのSaaSワークロードではない」と内在化していれば大きく開かれている
- アプリケーションは案件数がもっとも多く、基準線の上昇ももっとも速い領域である
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シード・シリーズA段階への提言
- 「素早く出せる」が堀だという主張はやめるべきだ — それはもう基本要件である
- 他の誰にも得られない、自分たちだけが蓄積したデータを示してほしい
- 顧客が自由に引き剥がせない、自分たちだけが吸収し切ったワークフローを強調してほしい
- エラーが大きな損失につながる環境で、自社システムが提供する精度をピッチしてほしい
- 2つの大手アプリケーションの間に挟まれた機能なら、**デッドゾーン(dead zone)**にいると認識すべきである
- ソフトウェアは死なないが、肥大化したユーティリティ型ソフトウェアはリアルタイムで**再評価(repriced)**されており、
それを置き換えるのはモデルAPIで作った週末プロジェクトよりはるかに難しい仕事である — 本物の企業の基準線は上がっている
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