フォトニック結晶ベースの超高輝度半導体レーザーの開発
- 日本政府は2016年に「第5の社会」の到来を打ち出しており、この社会ではオンデマンド商品、介護ロボット、タクシー、トラクターなどが活用されるが、それを可能にする中核技術の1つがまさにレーザーである。
- Society 5.0に必要なレーザーは、小型化、低コスト、製造のしやすさ、エネルギー効率、制御のしやすさなどの条件を満たす必要があるが、従来の半導体レーザーには輝度(brightness)不足という限界があった。
- 京都大学の研究チームはこの20年余りにわたりフォトニック結晶面発光レーザー(PCSEL)を開発してきた。これは活性層内部にナノサイズの穴配列からなる「スイスチーズ」層を追加し、光の進行を制御することで高出力と狭ビームを同時に実現したものである。
- PCSELは従来の半導体レーザーに比べて100倍以上の輝度を出せるため、ガスレーザーやファイバーレーザーを置き換え、製造業や自動車産業に革新をもたらすと期待されている。
- 最近では鋼を切断できる1 GW/cm2/sr級・口径3mmのPCSELを開発しており、理論上は10〜100 GW/cm2/sr級まで可能だと予測されている。
- 高出力用途に向けてエネルギー効率と熱管理技術の改善を進めており、自動運転車やロボット向けの超小型LiDARシステムにもPCSELを適用している。
- 長期的には、10kW級の出力で1000 GW/cm2/srの極限的な輝度を持つPCSELを開発し、EUVリソグラフィや核融合などの分野で活用し、宇宙船推進への応用も検討している。
フォトニック結晶の原理
- フォトニック結晶は、半導体が電子の流れを制御するように光の流れを制御する構造で、屈折率が波長スケールで周期的に変化する格子構造を持つ。
- 単純な1次元フォトニック結晶の場合、ガラスと空気が交互に配置された構造の中で、光は各境界面で屈折と反射を受けながら強め合いと打ち消し合いの干渉を起こし、特定の波長では定在波が形成されて伝搬しなくなる。
- 2次元正方格子構造を持つPCSELでは、穴が光を前後左右に屈折させて2次元の定在波を作り、それが活性層で増幅されて単一波長のレーザービームを形成する。
高次横モード抑制による高輝度化
- PCSELは発光面積が大きくなると高次横モードが発振し始めるが、これは定在波の強度分布が複数のピークを持つようになるためである。
- 初期には単一格子を用いることで200μm程度までは高次モード抑制が可能だったが、それ以上大きくすると再び発振してしまう限界があった。
- 二重格子構造を導入し、格子内の光に打ち消し合いの干渉を起こさせることで、高次モードの強度ピークを弱め、口径を1mmまで拡大できた。
- 反射鏡の位置と格子穴の形状を調整し、定在波と反射波の結合を誘起して高次モードの損失を大きくすることで、3mm級の超高輝度PCSELの実現に成功した。
GN⁺の見解
- 従来の半導体レーザーに比べて輝度を100倍以上高められる点は、製造業など産業界に大きな革新をもたらす可能性がありそうだ。ただし、まだ研究室段階であり、商用化までには時間がかかりそうだ。
- 高出力用途では、60%以上の高い電気光変換効率と、kW級出力での熱管理技術の確立が不可欠になるだろう。熱問題さえ解決できれば、既存のCO2レーザーやファイバーレーザーを十分に置き換えられそうだ。
- 超小型LiDARシステムは商用化が早そうで、機械式ビームステアリング部をなくして集積化できれば価格を大きく下げられる可能性がある。ただし、センサー性能の面では従来方式との比較検証が必要そうだ。
- EUVリソグラフィやレーザー核融合など、超高輝度レーザーが必要な分野で既存の巨大レーザーを置き換えられるなら、大きなコスト削減効果があるだろう。ただし、まだ研究の初期段階であり、実現可能性は未知数だ。
- 宇宙船推進分野は興味深いが、実現まではまだ遠そうだ。まずは数十kW級のレーザー開発が必要になるだろうが、技術的・コスト的な障壁は高いと見られる。太陽光圧を利用するソーラーセイル方式が現実的な代替案になりそうだ。
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