OpenStreetMapフォーラムの議論:Gulf of MexicoをGulf of Americaに変更することについて
(community.openstreetmap.org)- 米国大統領ドナルド・トランプは就任式で、「メキシコ湾(Gulf of Mexico)」の名称を「アメリカ湾(Gulf of America)」に変えたいと述べた
- 政治的側面はさておき、それをどのように実現できるのか、OpenStreetMapはどのようにその情報源を選ぶのかという問いが出され、OSMコミュニティで関連する議論が行われている
- 一部のコントリビューターがOSM上ですでに 'Gulf of Mexico' を 'Gulf of America' に修正しようとしており、これに対する適切なタグや適用時期をめぐってさまざまな意見が出ている
- 最終的に名称が正式に反映されていない状態であるため、多くのOSMコントリビューターは依然として「メキシコ湾」を基本表記として維持すべきだという立場である
名称変更の背景
- トランプは新たな任期の開始にあたり、“Gulf of Mexico” を “Gulf of America” と呼ぶという大統領令を発表した
- この名称変更は国際的な水域全体ではなく、米国の大陸棚管轄区域にあたる海域に適用される可能性が高い
- ただし、この命令が実際に適用されるには、米国地名委員会(US Board on Geographic Names)と関連政府機関が正式に承認・更新する必要がある
国際機関と地理名標準
- UNGEGN(国連地名専門家グループ)は個別の地名決定を行う機関ではなく、標準化の過程を推奨・支援する役割を担っている
- 実際に国際法的権威を持つのは、国際水路機関(International Hydrographic Organization)などであるとされている
- IHOが発行する文書(‘Limits of Oceans and Seas’)は1953年版以降更新されておらず、現代的な状況には適用しにくい状態にある
- 一部の国同士の名称紛争のために、国際標準の更新が止まっているという指摘がある
OSMにおける主な争点
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nameタグを維持するかどうか
- OSMのルール上、
name=*は一般的に最も広く使われている、あるいは現地で通用している名称を用いる - 英語圏や国際社会では慣例的に “Gulf of Mexico” が使われているため、まだ公式な変更が行われていない段階でnameを変更するのは難しいという意見が大勢を占めている
- OSMのルール上、
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さまざまなタグ活用案
alt_name:en-US=Gulf of Americaのように、米国内の特定の英語使用を想定して代替名称としてタグ付けしようという提案がある- 実際に「公式承認」が行われれば、
official_name:en-USや他の拡張タグを使って明確に表記できるという意見が示されている - ただし、この変更は国際的な承認とは無関係に米国政府内の手続きだけで決まるため、「national name」(nat_name)を使うべきかどうかも議論中である
-
言語と国コードの表記ルール
- 英語にもさまざまな方言が存在するが、主に
name:enひとつだけを使うことが多い - 今回は
en-USのように国コードを付けて、米国政府が使う英語名を明確に区別しようという提案が出ている - BCP 47標準(例:
name:en-u-sd-usak)などを活用してさらに細分化する方法もあるが、多くのレンダラーがこれを適切にサポートしない可能性がある
- 英語にもさまざまな方言が存在するが、主に
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一部区域だけ名称が変わる可能性
- 大統領令の文言が「米国の大陸棚境界線の内側」にのみ適用される可能性があるという解釈も存在する
- 実際に区域が区分されるなら、「メキシコ湾」と “Gulf of America” を別個の地形オブジェクトとして分けて表示することもできる
- しかし、まだ政府機関による具体的な地図データやGNISの更新がないため、早まって分割タグを適用するのは難しいという空気である
他事例との比較
- 過去に ‘Mount McKinley’ を ‘Denali’ に変更した際も、米国連邦政府とアラスカ州政府の立場が異なり混乱があった
- ‘Gulf of California(Sea of Cortez)’, ‘Persian Gulf(Arabian Gulf)’ などの名称紛争事例では、OSMはたいてい既存の国際的・慣習的表記を維持しつつ、代替名称をalt_nameなどで併記する方法を取ってきた
- “Freedom Fries” などの歴史的事例のように、政治色の強い名称変更は時間が経つと使用頻度が下がる可能性もあると見られている
- Wikipedia参考: 米国でイラク侵攻に対するフランスの反対を受け、政治的理由からフライドポテト(英語: French Fries)の名称を変更したもの。この用語は2003年2月にノースカロライナ州のあるレストランで最初に作られ、1か月後、当時共和党所属で米国下院運営委員会委員長だったボブ・ネイが議会内食堂3か所のメニュー名を変更したことで広く知られるようになった。イラク戦争への支持が弱まるにつれてこの用語の人気も薄れ、2006年にボブ・ネイが運営委員長を辞任した後、議会内食堂のメニュー名は再びフレンチフライに戻った。
政治的背景と各プラットフォームの悩み
- 実際の表記が米国内で公式化されれば、AppleやGoogleのような地図サービスもそれを反映すべきか悩まざるを得ない状況である
- スペイン語圏では ‘América’ が南北アメリカ全体を意味するため、今回の名称変更は別の文化的混乱も引き起こしている
- メディアや議会図書館傘下の研究機関(CRS)などの公的機関でも、今回の大統領令が及ぼす影響を分析中である
- 一部では ‘Gulf of Florida’ のように歴史的根拠のある別名称を提案する人もいるが、現実的に採用される可能性は低いという見方が強い
- Googleマップは現在明確な立場を示しておらず、Appleマップも政府機関の公式更新までは沈黙を保っているようである
現時点でのコミュニティの中間結論
- 今回の「メキシコ湾」名称変更の試みは政治的意図が濃く、オープンソース地図コミュニティと国際標準機関の双方が対応に苦慮している
- 地名表記は国別・言語別の違いを考慮する必要があり、国際機関や地理専門機関の役割も明確でないため混乱が深まっている
- 名称変更がまだ政府の公式文書(特にUS Board on Geographic Names、GNISなど)に反映されておらず、その時期も不確かであるため、OSMでは従来の “Gulf of Mexico” を維持する方向に意見が集まっている
- もし連邦政府が手続きを完了し、GNISに “Gulf of America” が公式登録されれば、
official_name:en-USのような形で記録できる - 湾全体を一方的に改名するよりも、実際の行政手続きの結果と国際的な使用状況を見守ろうという「Wait and See」方針が主流である
- この過程を通じてOSMは、政治的紛争を直接解決するのではなく、「現地での使用」と「公式データ」の間のバランスを考えて名称をタグ付けするという原則を再確認している
- 全体としては、“Gulf of America” が実際の地図に本格適用されるよりも、大統領令への関心が薄れるか保留される可能性があるとの見方が出ている
2件のコメント
うーん……東海と日本海に似た感じの構図になるんでしょうか……?
今はどう表記して載せるんだろう……うーん……
Googleマップのようなところでは、拡大する前は日本海としか表記されない東海のように、結局は大国の意向に従うのではないかと思います