- 1995年の公開当時、『トイ・ストーリー』は完全なCG長編映画としては初だったが、上映のためにすべてのフレームが35mmフィルムに焼き付けられたハイブリッド作品でもあった
- 当時のピクサーにはデジタルデータを劇場へ直接届ける技術が不足していたため、各フレームをCRT画面上で赤・緑・青の3回露光してフィルムへ移す工程を経ていた
- このためオリジナルのフィルムには粒状感・やわらかさ・温かみのある色調があり、その後のデジタル変換版では色味と質感が大きく変化した
- 1999年の『バグズ・ライフ』からはデジタル・トゥ・デジタル転送方式が導入され、DVDやストリーミング版はより鮮明で粒状感のない映像へと変わった
- こうした変化はデジタル保存とオリジナル再現の問題を残し、現在は一部の映画保存家たちが当時の35mm版を復元・保存しようとする動きを続けている
トイ・ストーリーの制作と技術的背景
- 1995年当時、CGアニメーションは業界の中心的な話題であり、ピクサーは『ジュラシック・パーク』など大作映画向けのソフトウェアを提供して注目を集めていた
- 『トイ・ストーリー』は世界初のフルCG長編映画で、興行的成功を通じて現代アニメーション産業のデジタル転換を促した
- しかし当時はコンピュータから劇場上映用映像を直接出力できなかったため、ピクサーはすべてのシーンを35mmフィルムに焼き付ける必要があった
- エド・キャットマルは、ピクサーのピクセルは世界標準の配給媒体であるフィルムと結びつくべきだと判断しており、当時の記憶装置や圧縮技術の限界から見てもフィルム出力は必須だった
色補正とフィルムの特性
- ピクサーのチームはモニターで見える色とフィルム焼き付け後の色が異なることを認識したうえで作業していた
- たとえば緑は暗くなり、赤はほぼそのまま維持され、青は彩度をやや抑えて調整し、オレンジは画面上では悪く見えてもフィルムでは良く表現された
- 制作中は高解像度モニターを5〜6台共有スペースに置き、フィルム焼き付け時に色がどう変わるかを随時確認していた
- 最終イメージはCRT画面を通じて3種類の色光に分離露光してフィルムに記録され、30秒分の焼き付けに約9時間を要した
デジタル転換と画質の変化
- 1998年の『バグズ・ライフ』は依然として劇場上映用にフィルムで制作されたが、**ホームビデオ向けには初のデジタル・トゥ・デジタル転送(DVD)**を試みた
- ジョン・ラセターはこれを「コンピュータから直接出力された純粋なバージョン」と表現した
- その後『トイ・ストーリー』も2000年代初頭にデジタル転送版が制作され、粒状感が消え、色が鮮明で明るい映像へと変わった
- レビューでは「鮮やかで傷ひとつないデジタルイメージ」と評価された一方、もともとのやわらかく温かいフィルムの質感は失われた
ディズニー・ルネサンス作品との比較
- 『ライオン・キング』『ムーラン』『アラジン』など1990年代のディズニー作品もデジタルファイルで制作された後にフィルムへ焼き付けられた形だった
- その後のBlu-ray・ストリーミング版はデジタル原版から直接転送されたバージョンで、色味が変わり、一部のシーンはほとんど別の映画のように見える
- とりわけ色の統一感が弱まり、フィルムが与えていた一体感が失われた印象があるとの評価もある
保存と復元をめぐる議論
- 映画保存の分野では、『トイ・ストーリー』やディズニー・ルネサンス作品はデジタルとアナログが混在した時代の産物として特別な位置づけにあると評価されている
- 現在のストリーミング版の色は元のフィルムに比べて過度に明るかったり冷たかったりする傾向が見られ、Blu-ray版も完全な復元ではない
- 一部の保存家たちは当時の35mm版の色味と質感を復元しようとする試みを進めており、YouTubeには比較映像も多数公開されている
- オリジナルのフィルム上映に触れる機会があれば、当時の視覚体験を直接感じられる価値ある体験として言及されている
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1件のコメント
Hacker Newsの意見
この話題は本当に興味深い。Toy Storyの制作ワークフローは、「意図された補正」の完璧な例だった
デジタルマスターで緑をあえて強めに入れたのは、35mmフィルムへ移す際に暗くなり彩度が落ちるのを補正するためだった
ところが後になって、このデジタルマスターがフィルム工程を経ずにそのまま再利用され、本来は補正用だった色味が創造的な選択のように見えるようになった
こういうことは自分たちの仕事でもよく起きる。途中段階でしか意味を持たない 一時的な足場(scaffolding) が、後になって最終成果物だと誤解されるケースだ
こうした混同を防ぐための名前やフレームワークがあるのか気になる。「補正のための決定」と「最終目標」を区別できる簡潔な概念が必要だ
すべての情報がパイプラインツールに記録されていたので、過去作品を復元しても同じ結果を再レンダリングできた
最終レンダリングは Flame や Inferno のようなツールでカラーコレクションを行い、その工程もすべて再現可能な形で保存していた
おそらく Pixar も似たようなシステムだろう。DVD版は正式なツールチェーンを通さず、仮レンダリングを使った可能性が高い
そのため、いま高音質リマスターを聴いても Hendrix の録音は Beatles の後期アルバムほど豊かには聴こえない
OxideのRFDシステム のように、決定の理由を文書化する文化が必要だ
たとえば「緑をX%過飽和にした理由は、フィルム変換時に彩度が落ちるため」と記録しておけば、後の誤解を減らせる
関連リンク: Oxide RFDs
したがって、補正工程を元の作業から分離し、自動適用されるワークフローを作るのが望ましい
デジタルマスターは「正常な色」を保ち、フィルム変換の段階で補正が行われるべきだった
ディズニーはデジタルリリースの時点で色を再調整すべきだったと思う
私は映画フィルムのスキャンシステムの近くで働いていた
フィルムをスキャンする際には、ほこりや傷を取り除く dust busting 作業が必須だ
高級スキャナーの Northlight はカラーと赤外線を同時に取得して自動ダスト除去を助けるが、
低価格の telecine 機材(例)は高速な一方で歪みが大きく、位置合わせも不正確だ
色の変化はこうした機材のせいではなく、カラリストの意図的なグレーディング の結果だ
詳しい工程は この記事 によくまとまっている
レトロゲーム にも似た現象がある
昔の機器の画面は彩度が低かったため、ゲームのRGBデータは意図的に過飽和にされていた
そのため現代のモニターでエミュレーターを動かすと、色が強すぎて見える
今では本来の色味を復元するフィルターが追加されている
関連資料: Redditの投稿 / YouTube動画
エミュレーターで彩度を調整すれば、当時のモデルごとの画面を再現できる
この画像 を見て衝撃を受けた
NES PPUパレット文書
関連動画
この議論は レトロゲーミングコミュニティ でもよく出る
「アーティストはCRTで見えるように設計した」という主張と、「より鮮明な画面のほうが良い」という記憶が共存している
結局「正解」はなく、それぞれの経験や好みによる
私はこれを ワインの好み にたとえる — 自分が楽しめるやり方こそ正しいのだ
解像度や音質は劣るが、あの独特の温かみがある
子どもと一緒に Toy Story VHS を見返したが、Blu-rayよりも親しみのある感じがした
NESは特に composite 信号で見てこそ「本来の味」だ
古い 35mmプリント を「定本」だと勘違いすることが多い
しかし当時の劇場のプロジェクターの明るさやフィルム現像の方式など、変数が多かったため、いまスキャンした結果は当時そのままではない
スキャナー設定、JPEG変換、ディスプレイ環境まですべて結果に影響する
実際に画像をダウンロードしてフィルターを調整すれば、ほとんどどんな色味でも作れてしまう
子どもたちと一緒に Pixar映画 を見返していて、色味が昔より平板に感じられた
単なる思い出補正だと思っていたが、実際には 歴史的な色味が失われていた のだと知って驚いた
デジタル版にフィルターをかけて35mmっぽさを再現できないのか気になった
もともとアニメーターたちはフィルム変化を考慮して色を調整していたのだから、その意図は尊重されるべきだ
単にフィルターをかけるのではなく、媒体の特性を理解したうえでの後処理が必要になる
しかしフィルムの複雑な特性のため完全には一致せず、デジタルリリースが本来の意図を反映すべきかどうかには議論がある
露出、プロジェクター、フレームごとに差が生じる
色の違いが単にフィルムの化学的特性によるものなら、デジタルフィルターで補正 するのは簡単そうに思える
なぜそうしないのか疑問だ。オリジナルの色版と現代版の両方を提供するとよいと思う
The Matrix の場合はさらに混乱している。DVD版の緑色は本来の意図よりはるかに強かった
関連動画: Noodleの分析動画
最近のBlu-rayの一部だけが、元の劇場版に近い色を復元している
George Lucas のビジョンはいまなお驚異的だ
Pixar、ILM、Skywalker Sound、LucasFilm Games、THX、Kerner Optical など、
数多くの革新的スタジオを作った人物だ。彼が Star Wars 以外にもこうした基盤を築いたのは偉大な功績だ