- Last.fmとAudioscrobblerは、2002年にそれぞれ独立して開発された学生プロジェクトで、「協調フィルタリング(collaborative filtering)」 を用いて音楽推薦とユーザー同士のつながりを実現した初期のソーシャルウェブ系サービス
- Last.fmは、ユーザーの視聴履歴をもとに**「音楽地図(Map of Music)」** を生成し、ジャンルや楽曲間の関係を可視化し、他のユーザーとプロフィールを共有できるインターネットラジオとして運営
- Audioscrobblerは、ユーザーの音楽再生データを追跡して**「スクロブリング(scrobbling)」** と呼ばれる視聴記録を作成し、これを通じて似た嗜好のユーザーとの比較や推薦を提供
- 両サービスはともに従来の放送モデルから離れ、ユーザーデータと社会的つながりを通じて新しい音楽を発見する方法を提示
- その後両者は統合され、Web 2.0以前の時代にユーザーデータベースの推薦とソーシャルネットワーキングの可能性を示した事例として評価されている
初期ソーシャルウェブの前兆
- 2002年に登場したLast.fmは、ロンドンのRavensbourne Collegeの学生たちが作ったインターネットラジオプラットフォームで、ユーザーの視聴履歴にもとづくパーソナライズされた音楽推薦機能を提供
- ユーザーが繰り返し音楽を聴くと、システムが嗜好を学習して個人プロフィールを構築
- すべてのユーザープロフィールの総体を可視化した「Map of Music」を通じて、ジャンル間のつながりを表現
- 協調フィルタリングはAmazonが使っていた推薦技術で、似た購入履歴や評価履歴を持つアイテムを結びつけて推薦リストを生成
- Amazonの「この商品を購入した顧客はこんな商品も購入しています」機能が代表例
- Last.fmはこれを音楽データに適用し、楽曲間の関係をもとに推薦を生成
Audioscrobblerの登場
- 同年、英国サウサンプトン大学のRichard JonesはAudioscrobblerを開発し、ユーザーの音楽再生データを収集して推薦を生成
- ユーザーはソフトウェアをインストールして視聴データを自動記録
- このデータは協調フィルタリングによって他のユーザーと比較され、推薦につながる
- Jonesは「audioscrobbling」という用語を作り、視聴記録をもとにした推薦プロセスを定義
- その後、AudioscrobblerはLast.fmと統合され、1つのプラットフォームへと発展
放送モデルからの脱却
- Last.fmは、従来のラジオのような編集者が音楽を選ぶ放送構造から離れ、ユーザー自身が音楽の流れを形作る方式を提示
- ユーザーは楽曲を
love、hate、skipボタンで評価し、個人コレクションを調整
- 他のユーザーのプロフィールを探したり、自分の嗜好に合ったストリームを自動生成したりできる
- 共同創業者Martin Stikselは、「良い音楽は友人の家で聴くように社会的文脈の中で発見される」と説明
- この概念をオンライン環境へ移したことがLast.fmの核心
ユーザーデータの価値
- Last.fmとAudioscrobblerは、ユーザーデータの集合的価値を活用して新しいコンテンツを発見する方法を実装
- Amazonの商品推薦と同様に、音楽視聴データが推薦の中核資源として機能
- ただし当時は音源の著作権上の制約により、30秒サンプルしか再生できなかった
- その後、PRSとMCPSにライセンス費用を支払い、正式なオンラインラジオサービスへ転換
- この試みは、ストリーミング革命以前の段階でデータ駆動型の音楽消費モデルの可能性を示した
Web 2.0への接続
- Last.fmとAudioscrobblerの結合は、ユーザー参加とデータ共有を中心としたソーシャルウェブの基盤を築いた
- パーソナライズ推薦、ユーザー同士の接続、データ可視化など、Web 2.0の中核要素を先行実装
- 2004年以降に本格化したソーシャルウェブの流れの中で、この2つのプロジェクトは音楽を媒介とするオンラインコミュニティの原型として評価されている
1件のコメント
Hacker News のコメント
以前、last.fm のソーシャル機能が活発だった頃は、新しい音楽を見つける最高の「アルゴリズム」は他人のプロフィールを漁ることだった。
似た趣味の人を見つけると、ジャンルが違っても気に入る音楽に出会える確率が高かった。
一方で Pandora は楽器構成ベースの推薦だったので結果が平板で、Spotify の推薦もそちらに近い感じがする。
好きなアルバムのレビューを見て、趣味の近い人のプロフィールをたどれば、彼らの アルバムチャート やジャンルタグの仕組みのおかげで、求めている音楽をかなり正確に見つけられる。
プロフィールページには MySpaceっぽさ があり、API を使ったサードパーティーサービスが見事な可視化チャートを作ってくれていた。
後には資金難で機能が消え、Spotify に買収されかけたように思う。
マイクを常時オンにするアプリで音楽を認識して scrobble していたが、それをセキュリティリスクだとは考えていなかった。
フォーラムやアルバムのコメントでおすすめを頼めば、いつも良い返答が返ってきたし、そのコミュニティの 連帯感 が恋しい。
他のユーザーの共有フォルダ全体を見て、チャットで音楽の趣味について話せたあの体験が印象に残っている。
相手の上位曲を自動更新されるプレイリストとして保存でき、アルゴリズムではなく人間中心の推薦 を目指している。
自分のプロフィール: https://volt.fm/soheilpro
みんな Spotify の Wrapped 年末まとめ に熱狂するが、実際にはそのデータは1年中隠されていて、少しの間だけ公開されているにすぎない。
昔はこうした機能が標準だったのに、今ではちょっとしたカスタマイズですら「特別な機能」のように扱われるのが残念だ。
自分は last.fm を音楽発見というより 視聴習慣の分析 用に使っていた。
リアルタイム更新になってから、その楽しさが少し薄れた。
自分は last.fm ファン だ。
Spotify を使っているなら https://www.spotify.com/us/account/privacy/ で視聴履歴全体を JSON で受け取れる。
このデータを可視化してくれるサイト explorify.link もおすすめだ。
自分は今でも 2008年から last.fm を使い続けている。
時間の経過とともに自分の音楽の趣味がどう変わったかを見るのは興味深い。
昔は週ごとの 9x9 アルバムコラージュを作って、コミュニティで議論したものだ。
今でも last.fm は 視聴履歴トラッカー として広く使われている。
Spotify だけがプラットフォームレベルで ネイティブ scrobbling をサポートしており、他のサービスではサードパーティーツールが必要だ。
API が15年間ほとんど変わっていないので、軽量な統合 がしやすい。
最近ではコミュニティの大半が Discord に移っており、音楽サーバーの1割ほどが last.fm の統計を表示するボットを使っている。
(自分は Discord 用の .fmbot を運営している)
参考リンク: https://support.last.fm/t/more-ways-to-scrobble/192
自分は last.fm が大好き だが、最近はオープンソースの代替である ListenBrainz のアカウントも作って、両方に同時に scrobble している。
tapmusic.net で見栄えの良い図も作れる。
VPN がないときは last.fm だけを使い、後でデータを別の場所へ 自動分配 している。
この時期のもうひとつの伝説的サイトは Oink’s Pink Palace だった。
自分は 2008年から今まで scrobbling し続けている。
昔は小さなアーティストたちが自分で音楽をアップしていて、特に スウェーデンのビートポップシーン で宝石のような曲をたくさん見つけた。
21年間 last.fm を使っていて、今の自分の音楽の趣味はほとんど last.fm の 類似アーティスト機能 のおかげで形作られた。
Apple は iTunes の上にソーシャルネットワークを作る機会を逃したと思う。
友人が聴いている音楽を見たり、趣味ベースのコミュニティを作ったり、より良い推薦を提供したりできたはずで、今の YouTube Music のような形だ。
そのおかげで iTunes Store で単曲購入にかなりお金を使ったが、Apple Music 以降はそれを維持する理由がなくなった。
関連投稿: https://news.ycombinator.com/item?id=46268285