50 ポイント 投稿者 xguru 2024-11-18 | 5件のコメント | WhatsAppで共有
  • TinyPilotというハードウェアスタートアップを売却した後、この過程で得た実践的な教訓を共有
  • 売却がどのように行われたか、何がうまくいったか、今後改善したい点、そして予想外だったことを整理

# 売却の詳細

  • 売却価格: $598,000(年間収益の2.4倍)
  • 仲介手数料: $88,900
  • 法務費用: $18,297
  • 売却による利益: $490,803
  • 支払い条件: 売却時に全額現金払い(追加収益なし、セラーファイナンスなし)
  • 売り手の義務: 30日間の無料コンサルティング(最大80時間)
  • 事業の総収益(最終売却を含む): 4年間で$920k

# うまくいった点

文書化に大きく投資

  • 最初の起業を始める前に、John WarrilowのBuilt to Sellを読んだ。この本は、創業者が日常的な管理に関与しなくても円滑に運営される会社を作ることを勧めている
  • 再現可能なプロセスが好きだったため、TinyPilotチームを作る際に文書化へ大きく投資した
  • 従業員教育を対面やビデオ通話で直接行うのではなく、Notionにプレイブックを書いて教育した。問題が発生したらプレイブックを修正してミスを減らした
  • 新しいチームメンバーも同じプレイブックでオンボーディングし、それを継続的に改善した
  • TinyPilot売却後、契約書には30日間の移行期間中に最大80時間のコンサルティングを提供する内容が含まれていた。しかし買い手が必要としたのは約25時間だけだった
  • チームはすでにTinyPilotの日常運営をよく理解しており、買い手はすべての文書にアクセスできたため、移行期間の大半は新しいオーナーをチームや主要サプライヤーに紹介することに使われた

移行チェックリストの作成

  • 会社の売却準備を進めながら、売却前に完了すべき作業一覧をチェックリストとして作り始めた
    • これには古いプレイブックの削除や、すべてのアカウント資格情報をBitwardenに保存する作業などが含まれていた
  • デューデリジェンス段階に入ると、移行期間中に必要な作業を追加してチェックリストを拡張した
  • チェックリストは、売却前、売却直後の1〜2日、売却後の最初の1週間、売却後の最初の1か月に分けて作成した
  • このチェックリストは特に売却成立の週に非常に役立った。
    • 多くのアカウントを新しいオーナーへ移管し、プロセスも調整する必要があったため、落ち着いている時期に作ったチェックリストが大きな助けになった

信頼できる仲介業者と協力

  • 当初はM&A仲介業者に対して否定的な印象を持っていた。彼らは取引を早く成立させることだけに関心があり、それ以外は気にしないと思っていた
  • 2023年のMicroconfで、Quiet Light BrokerageのアドバイザーであるChris Guthrieに会った。彼は気楽でプレッシャーがなく、創業者中心のアプローチを見せてくれた。元創業者でもある彼は、短期的な利益よりも創業者にとって最良の取引を見つけることを重視していた
  • Quiet Lightとの協力では、インセンティブがよく一致していると感じた。ブートストラップの創業者がM&A仲介業者を探すことはまれなので、Quiet Lightには良い評判を維持しなければならない自然なプレッシャーがあった
  • 売却過程で、Quiet Lightの$89kの手数料(売却額の15%)に疑問を呈する人もいたが、それでも私は妥当な手数料だと考えている。彼らは私一人では見つけられなかった買い手を見つけてくれ、取引がうまく進むよう助けてくれた

セラーファイナンスの回避

  • 現金を急いで必要としていたわけではなかったので、当初は買い手が数年にわたって分割で支払う条件にも前向きだった
  • しかし他の創業者たちと話した後、セラーファイナンスは避けるべきだと助言された。ある創業者はこう言った。

「買収資金を自分で出すなら、今度はあなたが買い手のために働くことになります。」

  • 最初はこの言葉の意味がわからなかった。売却資金を出すと、なぜ自分が買い手のために働くことになるのだろうか
  • その創業者は、事業が利益を生まなければ売り手はお金を受け取れず、新しいオーナーはそれを知っていると説明してくれた。新しいオーナーは、事業が失敗した場合に債権を回収できない売り手へ管理責任を押しつけることができる
  • もう一つのリスクは、小口の貸し手として、買い手が債務を返済しない場合にそれを回収するための手段や経験が不足していることだ。買い手は現金を持っていても、単に返済しないと決めることができる。$1M未満の取引では、悪意ある買い手から金を回収しようとすると、法務費用のほうが高くつく可能性がある
  • 他に選択肢がなければセラーファイナンスを検討したかもしれないが、買い手が銀行融資を確保できないなら、それは警告サインだろう。また、私のリスクは銀行より大きいのだから、はるかに高い金利を課すべきだろう

契約後の追加支払いはないものと考える

  • 他の創業者たちとの会話で、多くの人が契約後に受け取るはずだった金額について失望したという話を聞いた
    • 買い手が契約を守らなかったが、訴訟を起こすには金額が小さすぎる場合もあった
    • 別のケースでは、新しいオーナーが創造的な会計処理を使って業績連動ボーナスの支払いを回避していた
  • 一貫した助言は、契約の構造を「契約後の追加支払いが一切なくても満足できる」ように設計せよというものだった。契約後に受け取る金額は予想外のボーナスと見なすべきだ
  • 買い手と私は、契約後に漏れていた小さな費用について何度か少額のやり取りをした。この金額は取引全体のごく一部で、$5k以下だった
  • たとえ買い手が支払いを拒んだとしても、多少はがっかりしただろうが、簡単に受け流せる程度だった

売却後のビジネスに対する自分の影響力の限界を認識

  • 売却の重要な基準の一つは、製品、チーム、顧客に継続的に投資する意思のある新しいオーナーを見つけることだった
  • 他の創業者たちに「会社を短期利益のために食い物にしようとする買い手をどう避けるか」について助言を求めた。彼らの助言は、売却後の新しいオーナーの行動は自分にはコントロールできないのだから、それを心配しても仕方ないというものだった
  • 売却後に新しいオーナーの運営方法をコントロールすることはできないが、危険な買い手をふるいにかけることはできた。たとえば、Ideraのようなプライベートエクイティが接触してきたなら、彼らが買収後に従業員を解雇する事例が多いことを知っていたので、TinyPilotに対する計画もある程度予測できただろう
  • 私は、自分の会社に対するビジョンと一致する買い手を探そうとしたが、同時に自分の影響力は売却完了日に終わるという点も認識していた
  • 新しいオーナーは自分たちのやり方で会社を運営しているが、私たちが話し合っていた会社のビジョンに沿うアプローチを取っている。この結果を保証することはできなかったが、買い手を慎重に選別したことがある程度は良い結果につながったと思う

仲介手数料を自分が代金を受け取るときに支払うよう契約を修正

  • Quiet Lightの仲介契約の草案には、手数料は売却額の一定割合であり、契約締結時点で支払われると明記されていた
  • 問題は、売り手である私が契約締結時点で売却額の全額を受け取れない可能性があることだった。仲介業者と契約する時点では、どの条件で取引が成立するか分からないまま署名することになる
  • 売却契約に分割払い条件が含まれていた場合、私はQuiet Lightに先払いしたうえで、全額を受け取るまで何年も待たなければならなかっただろう。さらに悪いことに、買い手が契約後に支払いをしなければ、受け取っていない金に対する仲介手数料をすでに支払ったことになる
  • 私はQuiet Lightに「自分が代金を受け取るときだけ仲介業者も手数料を受け取る」という内容に契約を修正してほしいと依頼し、彼らはすぐに同意した
  • 契約条件が調整されて安心できた。新しい支払い条件のおかげで、私とQuiet Lightのインセンティブは一致し、彼らも分割払いに反対するだけの十分に強い動機を持つことになった

弁護士を介さずに、まず論争になりやすい問題を話し合う

  • 買い手側の弁護士が、仲介業者のテンプレートではなく資産売買契約書のドラフトを作成した。ドラフトの大半には同意したが、いくつかの主要条件では意見の相違があった
  • それぞれの希望を弁護士に伝えて交渉してもらうこともできたが、弁護士費用は非常に高額だった(私の弁護士は1時間あたり550ドル)
  • さらに、弁護士が関与するとプロセスが遅くなる。買い手と私は通常1日以内に会えたが、弁護士全員が出席する会議を設定するには1週間かかったはずだ。すでに3か月かかっていたプロセスでは、1日1日が重要だった
  • 契約で意見が対立したときは、まず買い手と1対1で話し合った。この会話での私の目標は、契約条項そのものを超えて、その条項が必要な根本的な理由を見つけることだった
  • たとえば、ドラフトには売却に関する公開の議論を厳しく制限する条項があった。買い手とこの条項の理由を話し合った結果、実際には少数の事項だけを非公開にしたいと考えていることが分かった。そこで私たちは、「公に何も話せない」から「この2つの特定事項は公に話せない」へと条項を修正し、双方ともこの合意に満足した

専用のビジネスアカウントを使う

  • TinyPilotの所有権移転がスムーズに進んだ理由の1つは、すべてのアカウントとインフラが、他の事業や個人アカウントと完全に分離されていたことだった
    • ビジネス関連のメールは常に@tinypilotkvm.comのメールアドレスから送っていた
    • TinyPilot名義でサービスに登録するときも、常に@tinypilotkvm.comのメールアドレスを使っていた
    • TinyPilotのメールは専用のFastmailアカウントに保存していた
      • 初期には他の事業とFastmailアカウントを共有していたが、後に独立したFastmailアカウントへ移行した
    • 個人の電話番号をTinyPilotにひも付けず、専用のTwilio番号を使って自分の実際の番号へ転送していた
    • すべてのアカウント認証情報はBitwardenに保存していた
  • 売却後のコントロール移管は非常に簡単だった。新しい所有者をBitwardenの管理者に追加し、相手がアカウントを引き継いだ。2FAコードの一部がBitwardenに登録されていないという問題はあったが、これは迅速に解決した

# 今後改善したい点

現金買い手にインセンティブを提供する

  • 事業売却では、デューデリジェンスの期間が長引くほど売却準備に多くの時間を取られ、事業運営に支障が出る
  • TinyPilotの場合、買い手は米国中小企業庁(SBA)の融資を利用して買収したが、このプロセスには通常3〜5か月かかる
  • 融資プロセスでは契約書が複雑になり、法務費用も増える。TinyPilotでは法務費用だけで双方それぞれ1万ドル以上かかった
  • 現金取引は意思決定者が少なく、書類作業も簡素なため、売却手続きが速く進む。現金取引は30日以内に完了することもある
  • 次に事業を売却するときは、現金買い手を引きつけるために価格ディスカウントを提供したり、迅速な契約締結を促したりするつもりだ

契約の主要条件をもっと早く話し合う

  • 売却プロセスで最もストレスが大きかったのは契約交渉の段階だった
  • デューデリジェンス開始から5週間たってようやく契約書のドラフトを受け取り、すでに多くの情報を開示した状態で交渉力が弱まったと感じた
  • 意向表明書(LOI)の段階で契約書全体を事前に受け取れていれば、問題のある条項についてもっと早く修正を求められただろう
  • ただし買い手の立場では、法的助言のコストが大きいため、売り手にある程度の義務が生じるまでは契約書ドラフトの準備に消極的になる
  • 次回はLOIの段階で、重要な条件をいくつか事前に交渉するつもりだ
    • 短い移行期間
    • 限定的な秘密保持条項
    • 売り手責任の上限を売却金額の50%に制限すること

法的助言を早期に受け始める

  • 仲介業者との協議を始めた時点でM&A法律事務所は選定していたが、買い手から契約書ドラフトを受け取るまでは弁護士と追加で話し合わなかった
  • 意向表明書(LOI)には法的拘束力がないと考え、弁護士にレビューを依頼しなかった
  • しかし、意向表明書はその後の契約の基準になるため、この段階で弁護士を関与させていれば役に立ったはずだ
  • 弁護士が早い段階で関与していれば、既存契約のレビューやデューデリジェンス準備のための文書収集でも助けを得られただろう
  • LOIの段階で弁護士と一緒に作業することは、弁護士との協業経験を評価する良い機会でもあった。弁護士への不満は生じたが、その時点ではすでに弁護士を替えるには遅すぎた

非公式の「小さな事項の合意書」を作る

  • TinyPilotのオフィスは売り手の近くにあったが、買い手にとっては飛行機で移動が必要なほど遠く、維持する予定はなかった
  • オフィスには約1,000ドル相当の機材があったが、小さな品目が多く、清算コストが収益を上回っていた(たとえばプリンターを40ドルで売っても、販売準備にかかるコストのほうが高い)
  • こうした資産は事業資産として契約書に含めるべきだと感じ、オフィス内資産の一覧作成と処理計画に多くの時間を費やした。弁護士費用として2,000ドルを支払ったが、資産価値は1,000ドルしかなかった
  • やり直せるなら、買い手と非公式の「小さな事項の合意書」を作るだろう。これは正式な法的文書の外に置き、「ここにある内容には法的効力がありません」という文言を入れるつもりだ
  • この合意書は重要な決定のためではないが、双方が気軽に解決できる小さな事項について合意するための仕組みになるだろう

チームへの売却発表を遅らせる

  • いつチームに売却の知らせを伝えるべきか悩んでいた
  • 契約完了まで秘密にすればチームに嘘をつくことになるが、完全に透明にすると大きなリスクを負うことになる
    • チームメンバーがボーナスや昇進を求めたり、売却の知らせでモチベーションを失って業務成績が低下したりする可能性がある
  • TinyPilotチームとの関係は良好だったが、関係が終わりに近づくと、人は予想外の行動を取ることがある
  • 仲介業者との契約を結んだ時点でチームに売却の事実を公表したが、それは契約完了の6か月前だった
  • 大きな問題はなかったが、この発表はマネジメントの力学に影響を与え、パフォーマンス管理を難しくした
  • チームの立場からすると、売却は新しい所有者が自分たちを解雇したり、役割を大きく変更したりする可能性を意味する
    • チームメンバーが売却を妨害しようとすれば、買い手を怖じ気づかせたり、会社価値を5万〜10万ドル下げたりすることもあり得る
  • 次回は売却が確定した後に発表する予定で、売却は常にあり得ることだと事前に説明しておくつもりだ
  • また、チームの利害に合致するビジョンを持つ買い手を優先するつもりだ
  • この戦略が全員にとって理想的でも公平でもないことは分かっているが、いくつかの不完全な選択肢の中では最善に思える

すべての問題を災厄のように捉えない

  • デューデリジェンスのプロセスは非常にストレスが大きく意欲をそぐものだったが、そのたびに問題を誇張して、さらに困難なものにしていた
  • 交渉で小さな障害が生じるたびに、その問題が取引を完全に壊すという最悪のシナリオを想像していた
  • たとえば、TinyPilotはH.264動画エンコーディングアルゴリズムを使用しており、これは特許の対象なので、リリース前にライセンスを取得する必要があった
  • デューデリジェンスの過程で、このライセンスは資産売却時の移転が禁止されていると分かったとき、特許保有者が売却を阻止し、10万ドルを要求してくる可能性を心配した
  • こうしたネガティブな想像を続けて眠れなくなったが、翌日、買い手から特許保有者から新しいライセンスを取得する準備ができていると連絡があった
  • 問題の証拠もない状況で、一人で過度に心配していたのだと気づいた
  • 次に事業を売却するときは、いったん立ち止まって状況を見守り、過剰に心配しないようにするつもりだ

主要サプライヤー情報は早めに開示しつつ、LOIにはより強い制限を設ける

  • 経験ある起業家の助言に従い、TinyPilotの主要サプライヤー名は売却完了まで非公開にしていた
  • 情報保護のために買い手へ秘密保持の誓約を求めることはできるが、小規模な取引ではそれを強制するのが難しい。情報を共有しないことが唯一の方法だという考えだった
  • サプライヤー名を非公開にしていたが、次回はそうしないつもりだ
  • デューデリジェンスの過程で過去2年分の銀行明細を提出する必要があったが、明細にはサプライヤー名が頻繁に登場していた。そのすべてを確認し、名前を手作業で黒塗りしてPDFを修正するのに多くの時間がかかった
  • 数日後に在庫レポートを送ったところ、買い手から「FooCorpとは誰ですか?」と聞かれた(FooCorpは実名ではない)。レポートで誤って名前を伏せずに送ってしまった
  • 数週間後、買い手側の銀行からサプライヤー名の開示を強く求められ、結局すべての情報を開示しなければならなかった
  • 今後は、デューデリジェンスの過程で得た内部情報を悪用できないよう、契約書に強力な制限条項を追加するつもりだ。競合他社に売却する場合は機密をさらに慎重に保護するが、基本的には契約に依拠して不正行為を防ぐつもりだ
  • 主要サプライヤー名を隠すとデューデリジェンスの過程がより複雑になり、たった一度の見落としでも数時間分の作業が無駄になり得る

仲介手数料から在庫を除外する

  • Quiet Lightとの仲介契約で唯一惜しかった点は、仲介手数料にTinyPilotの在庫価値が含まれていたことだ
  • 在庫価値は製造サイクルによって最大4倍まで変動し得る。在庫が多いときに仲介手数料として$20kを支払い、在庫が少ないときに$5kを支払うのは不合理だ
  • さらに悪いことに、在庫は原価で買い手へ販売したため、仲介業者が高値で在庫を交渉して手数料を得る余地もなかった。$100k分の在庫を持っている場合、仲介手数料として$10kを支払えば、実際に受け取るのは$90kだけになる
  • 幸運にも、売却完了時点の在庫水準は理想的だった。新たな製造発注の直前だったため在庫が少なく、かつ買い手にとって不足しない程度には残っていた。さらに、在庫価値の計算でも仲介業者は私に有利な形で算定してくれた
  • それでも、在庫に対する仲介手数料は取引のタイミングをいっそうストレスフルにする要因だった。取引があと1か月長引いていたら、追加で$10kの手数料を支払うことになっていただろう
  • 次の売却では、仲介手数料から在庫を除外するよう求め、必要なら売却金額に対する料率を上げる形で交渉するつもりだ

最初からすべての文書は非公開ではないと想定する

  • TinyPilotの資産売却には、すべての会社メールも含まれていた。多くの知識がメールに蓄積されているため、これは合理的だと考えていた
  • 売却準備を進める中で、メールの引き渡しが複雑になり得ることに気づいた。従業員が個人的でセンシティブな内容を含むメールを送っていた場合が問題だった
  • たとえば、「父が亡くなってから不安と抑うつを抱えており、生産的でないと感じている」というメールは個人的なやり取りであり、会社資産と見なすのは難しい
  • 幸い、買い手とチームの合意により、従業員が個人的でセンシティブなメールに印を付ければ、売却前にそれを削除することになった
  • また、弁護士との売却関連のセンシティブなメールも含まれていたが、契約書ではこうしたメールを売却資産から除外した
  • 今後は次の2つの変更を検討するつもりだ:
    • 売却時にはメールや会議記録が新たな買い手に引き継がれる可能性があることを、事前にチームへ認識してもらう
    • 弁護士や仲介業者と売却関連の作業を進める際は、売却対象の事業のメールアカウントではなく、別のアカウントを使う

クロージング時点の資金の流れを定義する

  • クロージング日に至って、売却契約書に事業資金の流れに関する明確な規定がないことに気づいた
    • クロージング前後にまたがるサービス料金(例: 毎月請求されるサービス料金)はどう按分するのか?
    • PayPalやShopifyのアカウントに残っていて、まだ銀行へ移されていない金額はどう扱うのか?
    • クロージング前に購入された商品に後から返金依頼が来た場合、誰が返金責任を負うのか?
    • クロージング当日の売上収益は誰が受け取るのか?
    • クロージング当日に勤務した従業員の給与は誰が支払うのか?
    • エスクロー手数料など、クロージング関連費用は誰が負担するのか?
  • その後、買い手と協議してすべての問題を円満に解決できたが、こうした問いについて契約書でもっと明確に定義しておけばよかった

移行契約では勤務時間よりもカレンダーを基準に価値を評価する

  • ほとんどの買収契約には、売却後に売り手がどの程度買い手を支援するかという条件が含まれる
  • 当初の提案では、売却後2週間は週最大40時間まで無料コンサルティングを提供し、その後は時給$180で週最大10時間まで追加コンサルティングを提供することにしていた
  • 買い手は、30日間で最大80時間の無料コンサルティングを提案した。つまり、同じ総時間をより長い期間に分散させた形だ
  • より長い移行期間が買い手に有利だとは分かっていたが、それによるコストがどれほど大きいかは予想していなかった
  • 毎週40時間対応可能だったが、買い手はそれを使い切ることができなかった。チームを引き継ぎ、運営を学ぶ過程では、時間を十分に効率よく使うのが難しかった
  • 結局、実際に働いたのは週あたり約10時間だったが、毎日対応可能な状態で30日を過ごすコストは大きかった。メールに迅速に返信しなければならないという条件はなかったものの、毎時間TinyPilotのメールを確認しており、1日に2時間働くだけでもそれが何度かに分かれるため、他の作業をうまく進められなかった

売却前に譲渡できないアカウントを事業用メールから切り離す

  • $1M未満の売却は通常、資産売却の形で進められる。つまり、買い手は事業資産のみを引き継ぎ、会社そのものは引き継がないということだ
  • そのため、私は依然としてTinyPilotという法人を保有しているが、すべての有形資産と知的資産は新しい所有者へ移転した
  • 私の手元に残った資産のいくつかはTinyPilotの銀行口座と給与口座だったが、これはそれらがLLCに帰属しているためだ
  • 問題は、これらのアカウントのメールアドレスを変更しないまま、TinyPilotのメールの管理権を新しい所有者へ渡してしまったことだった。そのため、依然として@tinypilotkvm.comのメールが紐づいていた
  • 新しい所有者と協力してメールアドレスを修正したが、メールを引き渡す前に自分で対処しておけばもっとよかった

Google依存をさらに減らす

  • TinyPilotのすべてのアカウント認証情報はBitwardenに保存されていたため、所有権の移転はスムーズに進んだ。新しい所有者をBitwardenの管理者に追加することで、すべてのアカウントを引き渡せた
  • ただし、移転できなかったアカウントが1つあり、それがGoogleアカウントだった。TinyPilotの一部サービスでGoogle Cloud Platform(GCP)を使っており、専用のGCPプロジェクトがあったが、それは個人のGoogleアカウントに属していた
  • GCPの設定ページに「Migrate」ボタンがあったので、これをクリックすれば新しい所有者のGCPアカウントへプロジェクトが移ると単純に考えていた
  • 売却完了後にそのボタンを押したが、すぐにエラーメッセージが表示された
  • GCPのプロジェクト移転に関するドキュメントは分かりにくく不正確で、結局のところ新しい所有者と私がそれぞれ有料のGoogle Workspaceアカウントを作成し、複雑な手順を踏まなければならないという内容だった。Google Driveに保存された古い文書でも似た問題が発生した
  • 新しい所有者は、正式な移転手続きがあまりに煩雑だと判断し、可能な資料だけをエクスポートして残りは削除することにした
  • 個人的にも業務的にもGoogle依存を減らそうとしてきたが、こうした問題を経験して、Google依存をさらに減らす必要性を強く感じた

# 意外だった点

デューデリジェンスのプロセスは終わりがなく、高いストレスを引き起こす

  • デューデリジェンスのプロセスがこれほど労働集約的だとは、あまり予想していなかった
  • 当初は、デューデリジェンスは多少退屈でも簡単なものだと考えていた。買い手はすでに2年分の損益計算書を確認したうえで、意向表明書(LOI)に署名していた。いくつかの銀行明細を確認し、私の綿密な会計帳簿をチェックする程度だと思っていた
  • しかし、デューデリジェンスの過程では過去2年分のすべての銀行明細を提出しなければならず、しかもそれは最初の依頼にすぎなかった
  • デューデリジェンスが進むにつれて、顧客の再購入頻度や売上のプラットフォーム別構成比など、ビジネスのさまざまな側面を示すためのカスタムレポートをいくつも作成しなければならなかった
  • 顧客データを開示したくなかったためレポートを個別対応したが、カスタマイズするほど記録に誤りが生じるリスクは高まった。誤りが発生すれば、買い手は虚偽データに基づいて会社を売却したとして訴訟を起こす可能性がある。簡単なレポートであっても完璧に作成しなければならないというプレッシャーを感じた
  • 現金一括ではない買い手には、デューデリジェンスの要求への対応がさらに難しかった。買い手は自分たちの要求だけでなく銀行の要求も合わせて伝えてきたが、銀行は取引成立そのものには関心がないため交渉が難しかった。買い手との交渉のほうが容易だったが、「この要求は買い手からのものか、それとも銀行からのものか?」と尋ねることはできなかった。銀行の要求なら受け入れ、買い手の要求なら断りたいと思っていた

売却準備中はあらゆるコストが4倍高くなる

  • 小規模事業を売却する際、売却価格は通常、年間利益または売上の数倍で決まる
  • たとえば、年間利益が $100k で、類似の事業が利益の3倍の倍率で売却されるなら、その事業の売却価値はおよそ $300k になる
  • もし従業員に $10k のボーナスを支給すると、利益は $90k に減り、事業価値は $270k に下がる。つまり、$10k のボーナス支給は実際には $40k のコストを生むことになる($10k のボーナス + $30k の価値下落)
  • これはボーナスに限らない — 売却準備中はあらゆる支出が4倍高くつく。たとえば $1k のノートPCを購入する必要があるなら、実際には $4k のコストがかかると考えられる

売却に必ずしも仲介業者が必要なわけではない

  • Quiet Light の仲介業者を通じて TinyPilot を売却したことには満足しているが、必ずしも仲介業者が必要だったわけではないと気づいた
  • この規模の取引では、住宅売買を参考にするしかなかった。住宅取引では仲介業者が MLS への登録や規制対応などを担う
  • Quiet Light の主な貢献は買い手を見つけたことだった。これは私一人では難しい部分だった。しかし、買い手を見つけた後は核心的なプロセスから外れていた。契約締結のための主要な作業は、M&A 弁護士が法的文書を準備し、交渉することだった
  • 仲介業者は取引が円滑に進むよう助言を提供すべきであり、Quiet Light はそれをうまく果たしていた。買い手の融資元が撤回した際には新たな融資元も見つけてくれた。しかし、LOI の後に仲介業者がいなくなっていたとしても、私たちは取引を完了できただろう。一方で、弁護士なしでは取引を完了できなかった
  • 今後事業を売却する際、自力で買い手を見つけられるなら仲介業者を省くこともあり得ると思う。最初の売却では、15% の手数料を支払ってでも全過程を一緒に進めてくれる助言者がいる価値はあった。今は経験を積んだので自分でプロセスを進める自信はあるが、仲介業者という選択肢は常に残しておくつもりだ

競業避止条項が厳しすぎると問題になる

  • 大手テック企業が私を開発者として雇い、契約書の500ページ目に「他社でソフトウェア関連の仕事をしてはならない」という競業避止条項があったとすれば、裁判官はそれを不当と判断して無効にする可能性が高い
  • しかし、私が会社を売却し、買収契約書に「二度とソフトウェア関連の仕事をしない」という条項が含まれていれば、裁判官はそれを有効な約束とみなす可能性がある。弁護士は、売却契約では裁判官の判断がより厳格になると警告した。これは、私に合理的な交渉能力と契約認識があると見なされるためだ。自分に不利な契約に署名したなら、その責任は自分にある
  • TinyPilot の売却契約を確認する際、弁護士は競業避止条項を慎重に検討し、私がソフトウェアやテクノロジー全般ではなく、KVM over IP デバイス分野でのみ働かないことに同意していることを確認した

責任上限がなければ大きなリスクにさらされる可能性がある

  • 米国で法人や LLC 形態で事業を運営する場合、失いうる最大額は事業価値に限定される
  • たとえば、事業価値が $100k のとき、誰かが $5M の訴訟を起こしても、最悪の場合でも事業資産が差し押さえられるだけで済む。個人資産である家や車、家族は保護される。これが LLC の「有限責任」の意味だ
  • しかし、事業を売却するとこの有限責任の保護を失う可能性がある。弁護士は、売却契約に責任上限が明記されていなければ、買い手が後に訴訟を通じて売却代金を超える責任を求めることができると警告した
  • 買い手側の弁護士は当初、私の責任上限を設定しようとしなかった。私の弁護士は、売却代金を超える責任を負う契約には署名すべきではないと強く主張し、最終的に買い手側の弁護士もそれを受け入れた

買い手には売り手を良い気分に保つインセンティブがある

  • 売却プロセスで私が最も心配していたのは、TinyPilot のアカウントとドメインをすべて引き渡した後、買い手が協力する動機を失うことだった
  • たとえば、買い手がアカウントの支払い情報を更新し忘れて私のクレジットカードに $2k の請求が発生した場合、それを返済してもらうための私の権限は十分でないかもしれない
  • 私は買い手を信頼していたが、力関係が変わるときに人がどう行動するかを予測するのは難しい
  • 結果として、たとえ買い手がごまかそうとしても、売り手は依然として重要な知識(ノウハウ)を持っているため、買い手が売り手の協力を必要とする場面がある。買い手が $2k の問題で売り手をだましても、1か月後に重要なアカウントへのアクセスについて助けを求めなければならない状況があり得る
  • このように、適切な力のバランスが双方を最善の行動へと導いてくれる

# 売却準備に役立った資料

  • 買収プロセスで最も難しかったのは、その大半が完全に初めての経験だったことだ。買収は練習しにくく、経験豊富な起業家でさえ一生のうちに数回しか経験しない
  • 準備過程で最も有益だったのは、小規模ビジネスの買収に関する資料を読み、他の起業家たちに売却経験を尋ねることだった

John Warrilow の本とポッドキャスト

  • Built to Sell: 事業を買収可能な形に設計する方法を理解するのに役立った
  • The Art Of Selling Your Business: 売却プロセスにおける実務的な検討事項を扱っている
  • Built to Sell Radio: 主にテック中心ではない大規模ビジネスの事例が扱われる。似た状況にある起業家たちのエピソードを聴き、Natalie Nagele と Laura Roeder のエピソードが特に気に入った
  • 売却後に私が出演したエピソードもある

他の起業家たちとの非公式な会話

  • 買収経験のある人を多く知っていたわけではないが、周囲の人を通じてつながった人たちとの会話は非常に有益だった
  • 友人たちが買収経験のある知人を紹介してくれ、彼らとの会話から多くの情報を得た

Microconf(インディー起業家カンファレンス)

  • Microconf で Quiet Light に出会い、複数の仲介業者と直接会いながら最も適した仲介業者を選ぶことができた
  • 買収経験のある起業家が多く参加しており、彼らの経験を尋ねることが役立った

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5件のコメント

 
benjamin 2024-11-25

貴重なお話をありがとうございます!

 
elddytbt 2024-11-25

論理的ですね。有益な文章です。

 
devpain 2024-11-19

筆者 ドキュメント化については本当に認めざるを得ませんね。
読んでいると、自分の会社を売るときのことのように感じるほど、詳細かつ具体的によく整理されています。

 
kandk 2024-11-18

すごいですね