- 米最高裁が、大統領の行政命令に対して全国規模の連邦地裁による差し止め命令を出す権限を制限
- 今回の判決により、今後の下級審の差し止め命令は訴訟を提起した原告にのみ適用される
- 出生地主義市民権をめぐるトランプ氏の行政命令の行方は依然として未定であり、最高裁はこの件の違憲性について結論を下していない
- 移民団体と市民団体は、全国的な保護を得るために集団訴訟など新たな戦略を模索している
- リベラル派の判事や市民団体は、今回の判決が法の支配を弱め、違憲の行政政策が施行される危険性を高めると指摘
米最高裁の判決と主要な争点
- 米最高裁は、トランプ政権の出生地主義市民権を禁止する行政命令の執行を阻止してきた下級連邦裁判所の差し止め命令権限を制限する判決を下した
- 今回の決定は、米連邦裁判所が大統領権限を制限できる方法が根本的に変わることを意味する
- これまでは1,000人以上の連邦地裁判事が全国的な範囲の差し止め命令を出し、全米で政府政策を停止させることができた
- 今後は、裁判所の命令は当該訴訟の原告(州、非営利団体など)にのみ適用される
- 出生地主義市民権の剥奪が違憲かどうかについての判断は今回は行われず、トランプ氏の行政命令の将来も不透明なままである
移民関連団体の対応戦略
- 判決の影響を最小限に抑えるため、移民支援団体は迅速に法的戦略を立て直している
- Casa、Asylum Seeker Advocacy Project(ASAP)などは、メリーランド連邦地裁に緊急差し止め命令を求めた
- また、出生地主義市民権政策に異議を唱えるより広範な集団訴訟を再提起し、全米のすべての妊婦と在留資格のない移民家庭の新生児を守ろうとする動きも進んでいる
- Casaの関係者は「厳しい時期だが、私たちは無力ではなく、闘えば勝ってきた」と強調した
最高裁判決の詳細と各陣営の立場
- 9人の判事のうち、6対3でトランプ政権側を支持した
- 保守派多数意見は、「全国規模の差し止め命令は、議会が連邦裁判所に付与した権限を超える可能性が高い」とし、「必要以上の範囲で原告を保護する差し止め命令のみを部分的に停止する」との立場を示した
- 判決文を執筆したAmy Coney Barrett判事は、トランプ氏の行政命令が直ちに効力を持つわけではなく、政策の合憲性についても判断していないことを明確に記した
- 行政命令は、金曜日の判決から30日が経過して初めて発効しうる
- トランプ氏は今回の判決について、行政権への制約が減り、より多くの政策を実行できるようになったとして歓迎の意向を示した
リベラル派判事と市民団体の反応
- Ketanji Brown Jackson判事は多数意見を批判し、「裁判所の全国的な救済権限の制限により、違憲の政策が原告として名乗り出ていない人々にも適用されうる」として法の支配の危機を訴えた
- Sonia Sotomayor判事も「法の支配に対する悲劇」だと非難した
- ACLUなどの市民団体は、「今回の判決により、政権が大多数の新生児に対する出生地主義市民権の自動付与を部分的に制限して施行する道が開かれた」として懸念を示した
歴史的・社会的背景と今後の見通し
- 出生地主義市民権は、1868年の南北戦争後、合衆国憲法修正第14条によって確立され、黒人の市民権を保障した法原則である
- 1898年のWong Kim Ark事件以降、法的原則として定着した
- 今回の判決により、移民家庭や妊婦などの不安と不確実性はいっそう深まっている
- 一部の原告は全国的な差し止め命令で保護を受けたものの、行政命令の効力をめぐる懸念は依然として残る
- 民主党系の司法長官らは、「出生地主義市民権は依然として米国の基本法だ」と強調し、今後の保護策を模索する姿勢を示した
トランプ氏の行政命令の争点と訴訟の核心
- 2024年1月のトランプ氏の行政命令は、在留資格のない移民の親のもとに生まれた子どもへの市民権付与を禁止することを狙い、憲法修正第14条の「米国生まれの者=市民」という原則と衝突している
- Trump v Casa Inc事件は主に、司法府の全国的差し止め命令権限をめぐる争いであり、ホワイトハウス側は差し止め命令の適用範囲を原告に限定すべきだと主張した
- 3人の判事が、トランプ氏が行政命令に署名した当日に全国的な差し止め命令を出していた
- 今回の政策は、在留資格のない移民だけでなく、合法的なビザ保有者の子どもにも影響が及ぶとの批判が出ている
1件のコメント
Hacker Newsの意見
多くの人は、政府が敗訴すれば必ず控訴するはずだと安易に考えがち
戦略的には、政府は100万人に影響する政策を実施して訴えられ、敗訴しても原告にだけ救済措置を与え、控訴しないという選択が可能
上級裁判所では重要な判例が残らず、下級裁判所は原告以外に救済を広げられず、結局ほとんどの人には違法な政策がそのまま適用されることになる
この懸念は反対意見でも言及されている
私は法律の専門家ではないが、下級裁判所の判決も一種の先例として残るのではないかと思う
現状ではエルサルバドルへ人を送る事例もあるので、ICEのバウンティハンターがマサチューセッツで人を捕まえ、カロライナのHome Depotの駐車場にそのまま置き去りにしてもおかしくないような現実
私は弁護士ではないが、集団訴訟の形でこの問題を解決できる可能性があるのか気になっている
この判決は必然的な変化だと思う
従来の仕組みでは、700人もの地裁判事が主観的に大統領の権限行使を暫定的に止められた
国家安全保障の案件まで含まれており、それが行政府の正常な機能を損なう原因になっていた
今回の判決は三権分立の正常な均衡を取り戻す契機だと感じる
実際には、700人の地裁判事は、大統領が憲法上の権限を「逸脱」している場合、自らが解釈した法的基準に基づいてそれを暫定的に止めることができたということ
実際の国家安全保障問題が一時的に止まることよりも、大統領の権威主義的な動き(誰が大統領であれ)のほうが懸念される
今回の件では、大統領には米国生まれの市民の市民権を無効化する憲法上の権限がない
この論理は、行政命令がデフォルトになる現実を前提としており、米国政府の本来の設計と食い違う
大統領と連邦政府が法の上に立つことを常態化しようとしているのではないかと疑う
今回の判決は1933年の授権法(Enabling Act of 1933)と機能的に似ていると思う
関連リンク
どう似ているのか、具体的な論理を聞きたい
こうした変化が立法手続きなしに訪れたことにぞっとする
多くの制度は、皆がほどほどにルールを守るふりをすることで維持されている
実際にはこうしたシステムは非常に脆弱で、強い意志を持つ少数者が数十年かけて築かれた慣行や制度を完全に壊せてしまう
最近は右派側からこうした破壊が始まっており、いずれ左派でも同じことが起きる可能性がある
この話を聞くと、こんな引用を思い出す
実際には、その強硬な少数派はすでに100年前、あるいはそれ以前から存在していた可能性もある
あらゆる状況に備えるルールシステムには、常に効率低下という代償が伴う
Supreme Courtの判決文リンク
ソトマイヨール判事の反対意見からの抜粋: 「政府は、この市民権命令(その適法性を自ら弁護することすらできない)の適用停止を訴訟原告に対してのみ行い、それ以外のすべての人には適用し続けると主張している」
もしこれが可能なら、全員(あるいは米国生まれの全員)が原告になる集団訴訟でこの問題を正せないのか気になる
集団訴訟ならクラス全体に対して救済できるが、裁判所がそうした手続きを難しくしてきたのも事実
何十年にもわたる保守的な議会と最高裁の判断、そして
Class Action Fairness Actなどによって、事実上、集団訴訟そのものがほとんど不可能になっている状況この場合、集団訴訟そのものは必須ではないという見方もある
メリーランド州のCASA Inc.が実際に集団訴訟として提訴し直し、より広い差止命令を求めている
集団訴訟とは、結局のところ投票行動そのものと変わらないという解釈
トランプ対判事というフレームを受け入れると、結局それはトランプ対法ではないという見方になる
このフレームをそのまま受け入れると、その派生効果も無批判に受け入れてしまい、そうしたやり方こそが「同意の製造」の仕組み
今回の判決は、連邦判事がトランプを止めるのではないという都合のよい論理を示しているが、その論理を受け入れること自体が、法は境界線ではなく「武器」だという認識につながる
法そのものが測定可能な真理ではなく、判事の個人的解釈に左右される恣意的な存在になる危険
「判事がトランプを止めている」という見方は法の支配を損ない、恣意的な政府はやがて権威主義につながる
「裁判所の決定によって、行政府がまだ訴えていない人々に対して憲法違反を行うことが許される状況は、法の支配に対する実存的脅威である」というJackson判事の意見を引用
この感じはCitizens United判決で少数意見が徐々に現実化していくのに似ており、「法が売買されていると人々が信じるようになれば、民主主義はまともに機能しない」という言葉がますます現実味を帯びている
ある程度までは、法の執行と解釈には主観性が伴うという指摘
これからは各州ごとに訴訟を始めなければならない状況だと思う
実際には州ごとではなく、各「連邦司法地区」ごとに訴訟が必要
必要なのは2つ: 1) すべての連邦控訴巡回区で提訴すること、2) より妥当な差止命令を申し立てること
『They Thought They Were Free』からの一節を共有
最高裁が、政府の明白な違法行為の実体には判断を下さず、手続き的な仕組みにだけ集中している点を指摘