10 ポイント 投稿者 GN⁺ 2025-11-05 | 1件のコメント | WhatsAppで共有
  • TIFF画像ファイル形式の実際の考案者が長い間知られていなかった理由と、その発見の過程を記録したもの
  • AIFFとTIFFの関連性をたどっていた筆者が、Aldus社の文書と特許を通じて Stephen E. Carlsen を発見
  • 名前が 「Carlson」と誤記されていた誤り により、数十年にわたって考案者が特定されていなかった事実が明らかに
  • CarlsenはAldusで、スキャナーメーカーと開発者が共通して使える画像標準 を定義し普及
  • 彼の死後、元妻から送られてきたメールを通じて、「Mr TIFF」と呼ばれたCarlsenの謙虚な人生と業績 が再評価される

発明の真実を記録しようとする努力

  • 筆者は、ハードウェアとソフトウェアの発明家たちに 正当な功績を返すこと を目的に、長年にわたって研究を実施
    • 10,000時間以上を費やして発明の記録を検証し、関係者へのメールやインタビューを実施
    • チームによる発明の場合は複数人に取材し、事実のクロスチェック を試みた
  • 例として、Peter GabrielがAppleの研究所を訪れ、Macintosh II発売向けの音楽使用を承認した という事実を、複数のエンジニアの証言で確認

AIFFとその基盤技術

  • AIFF(Audio Interchange File Format) は、Appleのプログラマーであり音楽家でもあった Steve MilneとMark Lentczner が開発
    • ユーザーとメーカーの意見を反映し、標準オーディオファイル形式 を作ることを目指してAppleの社員食堂で協議
    • この作業は QuickTimeと拡張型ビデオフォーマット開発の基盤 となった
  • AppleのToby Farrandは、「オーディオがQuickTime開発を主導した」と述べている

TIFFの起源の探索

  • AIFFの前身として IFF(1985)TIFF(1986) が挙げられ、両フォーマットは オープンなメディア標準の基準 と評価されている
  • IFFの考案者 Jerry Morrison はElectronic Artsで開発後にAppleへ移り、AIFFチームと協力
  • 一方TIFFは、Aldus社が作った画像標準 としてのみ知られ、個人の考案者情報は存在しなかった

Aldusと「デスクトップパブリッシング」の登場

  • AldusはAppleとAdobeの協力により PageMaker を開発し、デスクトップパブリッシングの概念を確立
    • 共同創業者 Paul Brainerd が「desktop publishing」という用語を最初に使用
  • Aldusが1994年にAdobeに買収されたことで、TIFF考案者に関する手がかりが失われた

「Steve Carlson」を探して

  • 筆者はMacWeekとComputer History Museumの記録から 「Steve Carlson」 という名前を発見
    • しかし、Brainerdのインタビュー記録などでは 名前が誤記された状態 だった
  • 数か月に及ぶ探索にもかかわらず、実在の人物を見つけられなかった

隠されていた名前「Stephen Carlsen」の発見

  • AldusのTIFF仕様書をダウンロードして確認していた際、白い文字で隠された著者名 を発見
    • 文書には「Author/Editor/Arbitrator: Steve Carlsen」と明記されていた
  • 特許検索を通じて、Stephen E. Carlsen がAldusおよびAdobeで活動したエンジニアであることを確認
    • ワシントン州Issaquah地域の住所とも一致

考案者との連絡

  • メールアドレスを見つけられず、郵便で直接手紙を送付 し、4か月後にCarlsenから返信を受け取った
  • CarlsenはTIFF開発当時を振り返り、次のように説明した
    • スキャナーごとに異なる取り込みフィルターを作る必要がないよう、業界標準を定義して普及させる必要があった
  • Brainerdもまた、「Carlsenが標準を開発し、SeyboldやMacWorldの展示会で企業向けワークショップを行っていた」と証言

Aldus入社の経緯

  • CarlsenはBoeing Computer Servicesのグラフィックス職の面接中にAldusの求人広告を見て応募
    • Paul Brainerdと5人のエンジニアチーム との面接を経て採用
  • その後、Adobeによる買収後もオンラインフォーラムや Google Group「tiffcentral」 でTIFF関連の支援を提供

「Mr TIFF」の最後の物語

  • 筆者はCarlsenの簡潔な返答をもとに、TIFFの考案者としての彼の功績 を記録
  • 2年後、Carlsenの元妻 Peggy から、彼が亡くなったというメールを受け取る
    • Peggyは「彼をMr TIFFと呼んでいた」と語り、人生の最期まで謙虚で静かな人だったと回想
  • 筆者はこの手紙をきっかけに WikipediaのTIFF項目を修正 し、
    • 従来の「Aldusが開発」という文言を「Aldusのエンジニア Stephen Carlsen が開発」へ変更

結論

  • 長年にわたる探索の末、TIFFの真の考案者 Stephen E. Carlsen の名が歴史に回復された
  • 筆者はこの発見を通じて、技術発明の記録の正確さと人間的な意味 をあらためて確認した
  • 「Mr TIFF」という愛称は、謙虚な発明家の象徴 として残る

1件のコメント

 
GN⁺ 2025-11-05
Hacker Newsのコメント
  • TIFFファイルのマジックナンバー 42の話にもう一度触れたい TIFF6の仕様書によると、2~3バイト目は42に設定されており、これは「任意だが慎重に選ばれた数字」と説明されている https://web.archive.org/web/20181226035415/…

    • TIFFの作者自身がWikipediaのトークページでその理由を確認してくれたというリンクを共有している Wikipedia: Talk:TIFF/Archive_1
  • ファイルフォーマットについての文章がこんなに感動的だとは思わなかった 読んでいるうちに涙が出そうになるほど美しい話だった

  • TIFFのトークページを見てみると、Scarlsenというユーザーのコメントがあった 答えがすでにWikipediaの中にあったという事実が興味深かった

    • Scarlsenの投稿履歴を見ると、「42」の意味についての議論コメント以外にもTIFF文書への2つの修正があった 1つはMicrosoftの非関与の明確化、もう1つは「TIFFが『The Image File Format』を意味しようとしていたが、Aldusの社長が拒否した」という文を出典不足として削除しつつも、事実ではあると認めていた部分だった
    • Scarlsenが残した唯一のコメントで、「TIFFファイルの2番目のワードである42は『銀河ヒッチハイク・ガイド』の**『生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問への答え』**から取られたものだ」と直接明かしている
    • John Buckがこの情報を知ったら興味を持ちそうだ、という意見もあった。今後の追跡調査のテーマとしても良さそうだ
  • 文章は素晴らしかったが、サイトにリンクされている書籍**『Inventing the Future』**は見つけにくかった ページには大きなグラフィックといくつかの文章があるだけで、本をどこで入手できるのか明確ではなかった 結局、ホーム → 「Close Your Rings」の記事 → 一番下までスクロール → books.byのリンクで見つけることができた

    • 著者本人が返信し、記事の中にbooks.byという新しいセルフパブリッシング・プラットフォームへのリンクが含まれていると説明している
    • 別の読者も同じ問題を経験しており、著者名をクリックすればそれなりのページに移動できるが、購入導線がもっと明確だとよいとしていた。それでも文章が良かったので結局本を買うことにしたと付け加えている
  • 名前を残さず貢献したエンジニアたちと筆者の両方に敬意を表したい こうした作業は簡単ではないが、本当に意味のあることだ ただ、業界標準を作るときにも特許のように個人の功績を明記できるべきではないか、という疑問はある

  • 驚くべき調査力に感嘆した。しかるべき人に功績が帰するのを見るのはうれしい

    • 自分もある組織の歴史書を作るのに関わったことがあるが、8年かかり、インタビューした人の中には本が完成する前に亡くなった人もいたという。その過程がとても身近に感じられた
  • 文章は美しく感動的だった。筆者とMr. TIFFに感謝したい

    • 予想外に感情的な結末が印象的だった
    • 「upvoteありがとう」という短いあいさつも残していた
  • Mr. TIFFのご冥福を祈る このような素晴らしいエンジニアたちの物語が、時の砂やLLMの濁流の中に消えてしまう前に記録されることを願う

  • John Buckに感謝したい。これほどありふれた技術がどのように生まれたのかを読むのは本当に興味深かった。RIP Mr. TIFF

  • Wikipediaの修正が無理なく反映されたことを見てうれしくなった 今もそのまま維持されている